「自分の死を考える」ための具体的な行動【15ヵ条】

「自分の死を考える」ための具体的な行動【15ヵ条】

死を視野に入れて、今の生き方を見直してみるとき、頭の中で漠然と考えるだけではあまり現実味がありません。そこで、私が提案しているのが、「自分の死を考えるための具体的な行動十五ヵ条」です。【解説】中村仁一(社会福祉法人老人ホーム「同和園」附属診療所所長)


棺桶に入ってみるのが、いちばんお勧め

 死を視野に入れて、今の生き方を見直してみるとき、頭の中で漠然と考えるだけではあまり現実味がありません。
 そこで、私が提案しているのが、「自分の死を考えるための具体的な行動十五ヵ条」です。この中からどれか、具体的に行動してみることで、今の生き方が見えてくるのではないでしょうか。

 十五ヵ条の内容については、下図を参照してください。この中で、特に補足しておきたいのが、次の3項目です。
 まず、4の「『余命6ヵ月』を想定し、したいことの優先順位を書き出す」についてです。
 やっておきたいことを書き出し、優先順位をつけるだけでなく、元気なうちに実行していきましょう。そうすれば、死に際に後悔することも少なくて済むと思います。

 次に、7の「棺桶を手に入れる(入ってみる)」についてです。
 十五ヵ条の中でも、私がいちばんお勧めしたいのが、この項目です。
 なぜなら、畳半畳分ほどの空間に押し込められると、地位、名誉、権力、財産など何一つ持って行けないことが実感できるからです。すると、執着心が薄れて、ものの整理が進み、人生観にも変化が出ます。
 棺桶に入ったら、これまでの人生を振り返り、今後どう生きるかを考えてみてください。そして、それを踏まえて毎日を精いっぱい生きましょう。これをくり返していけば、とても充実した一生になるはずです。

 13の「人生の節目に”生前葬パーティー“を行う」については、自分史のビジュアル版と考えてください。一般的な「生前葬」のように、お世話になった人たちを招いて、感謝とお別れをする告別式の前倒しではありません。転機となった出来事を取り上げ、それを中心に「自分の人生」を寸劇や映像で表現するのです。
 これをやると、「自分の人生もまんざらではなかった」と肯定でき、大切にしなければならないこと、やり残していることなどが見えてきます。すると、そこから新たに「生き直す」ことができるのです。
 このような擬死再生の視点から、還暦(60歳)や古希(70歳)などの人生の節目には、„生前葬パーティー"を行うことをお勧めします。
 なお、8の「事前指示書」と14の「『死』について語る」は、次の図をご覧ください。

あの世には何一つ持っていけないのを実感する。

「集い」4周年記念イベント模擬葬儀の様子

自分の考えを家族に周知徹底しておく

 事前指示書とは、自分で正常な判断ができなくなったときのために、どのような医療サービスを受けたいのか、受けたくないのかを、書面で表明しておくものです。
 最近は、いろいろな形式のものが出回っているようですが、「延命措置は一切お断り」という書き方は、実用的ではありません。
 というのも、延命の受け取り方は人によって違うからです。「一切」という十把ひとからげの表現ではなく、「人工呼吸器はどうするのか」「チューブ栄養は?」「人工透析は?」など、具体的な医療措置に対する個別の意思表示が必要です。

 それぞれの措置は、リスクも伴います。内容をよく理解した上で、どうしてほしいのか、よく考えておきましょう。

①心肺蘇生(心臓マッサージ、電気ショック、気管内挿管など)
 心臓や呼吸が止まったときに行う治療手段です。
 心臓マッサージでは、当然、肋骨骨折が起こります。また、一度心臓が止まると、停止期間の長さによって、再び動きだしたとしても、脳死や植物状態になることもあります。

②気管切開 タンが詰まって窒息しそうなときや脳死の場合に、のど元に穴を開けます。

③人工呼吸器 自力での呼吸が十分でない場合、機器の力を借ります。

④強制人工栄養(鼻チューブ栄養、胃ろうによる栄養、中心静脈栄養)
 口から飲み食いができなくなったときに、栄養を補給するために行う医療措置です。
 チューブを挿入される不快感や、その後の回復およびQOL(生活の質)の改善がどの程度見込めるのか、といったこともよく考慮する必要があります。

⑤水分の補給(末梢静脈輸液、大量皮下注射) 
 口から水分が入らなくなると、脱水状態を防ぐため、手や足の静脈から点滴注射を行います。
 年を取ると、血管がもろくなっていてすぐ漏れるので、何回も針を刺し直さなければなりません。大量皮下注射の場合、点滴をできるだけゆっくり落とすのは、速度が速いと痛みが出るからです。

⑥人工透析 腎臓が機能しなくなったときに、腎臓に代わって血液を浄化する医療行為です。
 人工透析をすると、短時間で体内環境が大きく変化するため、高齢者にはかなりしんどいと思われます。それを、死ぬまで続けなければなりません。

⑦輸血 吐血したり、お尻から血を流したときに、輸血をどうするかも指示しておく必要があります。
 なかには、胃や腸の末期がんのように、止血が難しい場合もあります。そうすると、展望のない輸血をくり返すことになります。

⑧強力な抗生物質の使用
 誤嚥性肺炎(詳しくは17ページ参照)をくり返し、普通の抗生剤ではよくならない場合、一段と強い抗生剤を使うかどうかを指示しておきます。

 以上を参考に、事前指示書が作成できたら、「自分の死を考えるための具体的な行動十五ヵ条」の14番目にあるように、家族と話し合い、自分の考えを周知徹底しておきましょう。

 日本では今のところ、事前指示書には法的効力がありません。本人が意思表示できなくなったら、決断を下すのは家族です。
 ですから、いくら事前に希望を伝えておいても、家族の気持ちしだいでは、覆される場合もあるのです。
 それを避けるには、事あるごとに「死」について家族と語り合い、互いの意見を十分すり合わせておくことが大切です。
 できれば、最後の場面で決定をひっくり返されないよう、遠い親戚にも、事前に理解を得ておくことが理想です。
 事前指示書は定期的に見直し、そのつど日付を新しいものに書き換えておきます。もちろん、気が変われば内容を書き直しても構いません。

 そのほか、在宅での自然死を希望する場合は、死亡確認をして、死亡診断書を発行してくれる往診医を手配しておく必要もあります。でなければ、警察が介入し、家族が保護責任者遺棄致死の罪に問われる可能性もあり得るからです。
 今は、24時間往診に対応してくれる「在宅療養支援診療所」というものがあります。近所にそのような診療所を探し、事前に話をつけておくというのも、一つの方法です。

これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに掲載しています。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

これらの記事にある情報は、効能や効果を保証するものではありません。専門家による監修のもと、安全性には十分に配慮していますが、万が一体調に合わないと感じた場合は、すぐに中止してください。

この健康情報のエディター

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