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糖尿病治療に効果的!運動療法は血糖値を下げる効果が!

糖尿病治療に効果的!運動療法は血糖値を下げる効果が!

運動療法と食事療法は、糖尿病治療における両輪ともいえる治療法です。日本の糖尿病治療のガイドラインでは、まず食事と運動の指導を行い、その上で、必要に応じて薬を用いることが推奨されています。では、運動することは、なぜそれほどまでに重要なのでしょうか。【解説】平野勉(昭和大学医学部内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科教授)

運動療法を勧める平野先生

運動で血中のブドウ糖を消費し血糖値を下げる

 運動療法と食事療法は、糖尿病治療における両輪ともいえる治療法です。日本の糖尿病治療のガイドラインでは、まず食事と運動の指導を行い、その上で、必要に応じて薬を用いることが推奨されています。
 では、運動することは、なぜそれほどまでに重要なのでしょうか。その理由をご説明するために、まず、糖尿病という病気について簡単におさらいしましょう。

 糖尿病は「血液中のブドウ糖の濃度を表す血糖値が高いまま下がらなくなってしまう病気」です。
 血糖値は食後には誰でも急激に上がりますが、健康な人であれば、膵臓のランゲルハンス島という細胞から、インスリンというホルモンが分泌されるので、その働きによって血糖値は一定の範囲内に収まります。

 ところが、糖尿病の人はランゲルハンス島の機能が低下する、インスリンの分泌量が不足する、インスリンの効きが弱まるなどの理由により、血糖値が下がらなくなってしまうのです。
 ですから、その治療法としては、まず消化されるとブドウ糖に変化する、炭水化物や砂糖など糖質の摂取量を管理することが重要です。これが食事療法です。

 一方、運動療法には血液中のブドウ糖を消費し、血糖値を下げる効果があります。
 筋肉を動かすときには、エネルギー源として血液中のブドウ糖が取り込まれて利用されます。おなかがすくと力が入らなくなりますが、これは血液中のブドウ糖が減少し、エネルギーが得られなくなったためです。

 また、筋肉細胞は基本的にはインスリンの刺激を受け、ブドウ糖を取り込みます。しかし、筋肉を動かし続けると、筋肉細胞は足りなくなったブドウ糖を、インスリンの力を借りずに自ら取り込むようになります。
 ですから、インスリンの分泌が衰えても、運動で筋肉を動かすことで、血糖値を低下させることができるのです。
 かつて糖尿病管理のための運動療法としては、手軽に取り組めるウオーキングなどの有酸素運動が、推奨されていました。

運動療法は継続しないと意味がない

有酸素運動と無酸素運動を組み合わせる

 しかし、実は運動には有酸素運動と無酸素運動の2種類があり、近年では効果を高めるために、この二つを併用することが推奨されています。

 有酸素運動とは、体内にたくさんの酸素を取り入れることのできる運動のことです。具体的には、ウオーキング、水中歩行、軽めのランニングなど、負荷が軽く長時間続けることが可能な運動がこれにあたります。
 有酸素運動を行うと、ブドウ糖が筋肉の中で酸素によって消費されますから、血糖値をいち早く下げることができます。

 一方、無酸素運動とは、筋トレなどの筋肉に負荷をかける運動を指します。
 筋トレで筋肉が増えれば、血中に存在するブドウ糖の取り込み先が増えますし、それを消費する場所も多くなります。すると、血糖値をよりコントロールしやすくなるのです。

 運動療法の効果は、これだけではありません。
 糖尿病にはインスリンがまったく分泌されなくなる1型と、インスリンの量が減ったり効きめが弱くなったりする2型の2種類があります。

 圧倒的に多いのは2型ですが、このタイプの患者さんは、同時にメタボリック症候群(内臓脂肪型肥満に高血糖、高脂血症、高血圧のうち二つ以上が当てはまる状態)の診断基準を満たしている場合があります。
 そのような患者さんの場合、運動療法はさらに欠かせないものとなります。
 なぜなら、運動には中性脂肪値を下げたり、脂肪を燃焼しやすい体にして、内臓脂肪を減らしたりする効果もあるからです。

 このように運動療法は糖尿病治療に欠かせないものだからこそ、習慣として継続的に行えるものでなくてはなりません。
「筋トレ体操」なら、自宅で手軽に筋肉に刺激を与えることができますから、非常にお勧めです。
なお、空腹時は血糖値が下がっていますから、運動するのは避けてください。また、糖尿病の合併症がある場合も、主治医に相談してから運動を行うようにしましょう。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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