【医師解説】夜間頻尿の対策に お尻を温める「仙骨カイロ」がよく効く

【医師解説】夜間頻尿の対策に お尻を温める「仙骨カイロ」がよく効く

冷えや低体温の高齢者の患者さんに、私はお尻を温めることをお勧めしています。「夜間頻尿が解消」「腰痛が改善」「便秘が改善」などといった声が聞かれます。お尻を温める対策だけで、なぜこんなに幅広い効果が得られるのでしょうか。やり方を紹介しましょう。【解説】上田ゆき子(日本大学医学部附属板橋病院東洋医学科外来医長)


仙骨の温め効果を語る上田先生

骨盤の動きがよくなり 下半身への血流を促進

「がんこな冷え症が解消」「腰痛が改善」「寝付きがよくなり熟睡できる」「むくまなくなった」「便秘が改善」「疲れ・イライラが減った」「カゼをひきにくい」「おなかの調子がよくなった」「夜間頻尿が解消」「大人ニキビが治った」「月経痛が軽減」「不妊症が治って妊娠した」
 2009年『安心』12月号で、「お尻を温める健康法」をお勧めしたところ、実践された読者の皆さんから大きな反響がありました。
 普段から、冷えや低体温の患者さんに、私はお尻を温めることをお勧めしています。その患者さんたちからも、同じような声が聞かれます。お尻を温めるだけで、なぜこんなに幅広い効果が得られるのでしょうか。
 ここでいう「お尻」とは、厳密にはお尻の割れ目の少し上の、平たい骨がある部分です。この平たい骨は「仙骨」といい、背骨の屋台骨に当たります。

 私は、最も手軽で効果的な「お尻温め術」として、この仙骨に、下着などの上から使い捨てカイロをはる方法をお勧めしています。すると、腹部の臓器を効率よく温めるとともに、全身によい作用をもたらすことができるからです。
 腹部の臓器を温めるには、おなかにカイロをはるほうがよいと思われるかもしれません。しかし、おなかは皮下脂肪が厚く、脂肪は熱が伝導しにくいので、温まらないのです。
 それに対し、皮膚のすぐ下が大きな骨である仙骨部を温めると、効率よく熱が伝導して臓器が温まります。
 また、腹部の臓器を支配する自律神経は、脳から背骨の中を通って仙骨に達し、ここから各臓器へとつながっています。臓器自体もそれを支配する神経も、適度に温めることで正常かつ活発に働くので、仙骨を温めると、二重の意味で腹部の臓器は正常化・活発化するのです。
 その結果、便秘解消や消化器の調子をよくするなどの効果が得られます。
 仙骨は、骨盤の一部でもありますから、ここを温めることで、上半身と下半身の「関所」ともいえる骨盤の動きがよくなります。すると、下半身への血流が円滑になり、冷えが大きく関係する腰痛やひざ痛の改善が促されます。
 同時に下半身から心臓に血液が戻りやすくなり、足のむくみの解消にも効果的です。ひいては全身の血行が促され、冷えや低体温による諸症状全般に改善効果があるのです。

気力の低下や気分の 落ち込みにも有効

 漢方では、末梢の血液循環の滞りを瘀血と呼び、月経痛や月経不順、不妊症ほか、さまざまな婦人科系の病気の要因と位置付けています。
 大人ニキビや肌のくすみなどの肌トラブルも、末梢の循環不全、すなわち瘀血で起こりやすい症状です。仙骨を温めることは瘀血の解消にもつながるため、多くの婦人科系の病気・症状、肌トラブルの改善にも力を発揮します。
 さらに漢方では、血液に限らず、「気血水(生命エネルギーと血液と体液)」のすべてが、冷えることで滞るとしています。冷えると、エネルギーの循環不足から、疲れやイライラが生じやすくなったり、免疫力(病気に対する抵抗力)が低下してカゼのリスクが高まったりするのもそのためです。仙骨を習慣的に温めることで、これらの改善も促されます。
 女性の症状に限らず、男性の夜間頻尿なども、漢方的には気血水の滞りが大きく影響します。したがって、仙骨を温めることで大きな効果が得られます。
 気が付いていない人が多いのですが、冷えや低体温が、気力の低下や気分の落ち込みにつながっているケースも少なくありません。冷えると睡眠が浅くなるので、それによっても、気力の低下や落ち込みが助長されます。
 近年増えているお子さんの不登校の背景にも、冷えや低体温があることが多いと私は見ています。最近は、平熱が35度台という低体温のお子さんも増えています。
 大人・子どもを問わず、寝起きが悪い、気力が乏しい、気分が落ち込みやすいといった症状に気付いたら、試しにお尻を温めてみるといいでしょう。
 現代生活では、冬でも、本来は夏や南国産の野菜・果物(トマト、キュウリ、バナナなど)を取ったり、ビールやアイスクリームで体を冷やしたりしています。夏は夏で冷房によって体を冷やすので、1年を通じて冷えやすい環境になっています。その弊害が、大人にも子どもにも表れているのです。
 それを改善する手軽で効果的な手段が、カイロなどを用いたお尻温め術です。
 ここに挙げた症状に心当たりのある人は、ぜひ一度、しっかりとお尻を温めてみてください。冷えの自覚がない人でも、温めてみたら意外なほどらくになったというケースが多いのです。具体的なやり方をご紹介しましょう。

◦お尻カイロ

 最も手軽に効果的にお尻を温めるには、仙骨に使い捨てカイロをはるのが一番です。仙骨は、お尻の割れ目の少し上にあり、下向きにやや長い二等辺三角形をしています。ここをおおうように、使い捨てカイロを縦にはりましょう。必ず下着などの上からはってください。
 低温ヤケドを防ぐため、熱過ぎると感じたら、すぐにいったん外すか、一時的にはる位置を変え、加熱し過ぎないように気を付けてください。下着を2枚ばきしてはるのも、低温ヤケド防止と保温の一石二鳥となるいい方法です。心地よく温まる範囲なら、特に時間の制限はありませんので、持続的にはっておいてけっこうです。
 こうして仙骨にカイロをはるだけで、通常は十分温まりますが、もし、ひどい冷え症で温まり方が不足と感じる場合は、下腹部にはったり、仙骨の両側に小さいサイズをはったりしてもいいでしょう。

心地よく温まる範囲なら持続的にはってもよい

「お尻カイロ」のやり方

◦コンニャクホットパック

 もう一つ、家にいて時間があるときにお勧めしたいお尻の温め方として、「コンニャクホットパック」があります。体の芯までじっくりと熱が浸透して、とても気持ちがいい方法です。
 鍋に湯を沸かし、塩を一つまみ加え、コンニャクを入れて15〜20分煮ます。ヤケドしないように気を付けて、コンニャクの水気を切ってタオルなどで包みます。
 うつぶせに寝て、このコンニャクをカイロと同じ仙骨部に載せます。コンニャクが冷めるまで、または体が十分温まるまで載せておきましょう。

◦半身浴と薬湯

 このほか、みずおちより下だけを湯につける半身浴も効果的です。自分の平熱+4℃くらいの湯温にし、水位を調節して下半身だけつかります。肩が冷えないようにタオルなどをかけ、15〜20分温まります。
 このとき、日干ししたミカンの皮(目安量は1回に10個分)やショウガのスライス(同5〜6枚)、陰干ししたダイコン葉などを、布袋などに入れて湯に入れると、温め効果がさらに増して効果的です。

 日ごろの食生活で、特に冬は体を温める作用がある根菜類(ゴボウ、ニンジン、レンコン、ダイコンなど)や、黒い食品(黒豆、海藻)を積極的に取ることも大切です。
 お尻を温めるとともに、こうした点にも気を付けて、ぜひ冷えを撃退してください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

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