肝臓が健康な人ほど 生き生きしている
私は長年、ガンの免疫療法(自己治癒力を高めて病気を治す方法)の研究に携わってきました。
その活動を通じて、健康維持のためにとても重要だと認識するようになったのが、肝臓の状態を良好に保つことです。
拙著『人生の幸せは肝臓で決まる』(青萠堂)でも書きましたが、肝臓が健康な人ほど、体全体に不調が少なく、生き生きしているというのが、医師としての実感です。
それというのも、肝臓は代謝、解毒、胆汁の生成・分泌といった、人体にとって非常に重要な役割をいくつも担っています。肝臓の健康状態が悪化し、機能低下すれば、これらの役割がうまく果たせなくなるわけですから、体のあちこちに弊害が出て当然なのです。
肝臓の健康状態を悪化させる主な要因は、暴飲暴食です。
肝臓ではアルコールの分解や脂肪分の処理が行われますが、その処理能力が追いつかなくなるほどアルコールや脂肪分を摂取すると、肝臓がダメージを受けてしまいます。
アルコールを分解するさいには、アセドアルデヒドという有害物質が生成されます。「アルコールに強い・弱い」は、アセドアルデヒドの分解能力の高低によって決まるのです。
お酒を飲んで吐き気やめまいがしたら、それは分解されなかったアセドアルデヒドが引き起こした症状だと考えてください。吐き気やめまいの症状が出るということは、明らかに肝臓に負担がかかっている証拠。
また、肝臓の処理能力を超える脂肪を摂取した場合は、処理しきれなかった脂肪が、肝臓に蓄積されることになります。
それが続くと、いわゆる脂肪肝と化し、肥満しやすい体質になってしまいます。今の日本には脂肪肝の人が多く、サラリーマンの約7割程度に、脂肪肝の傾向があるともいわれます。
脂肪肝が進行すると、肝硬変やウイルス性肝炎、慢性肝炎、さらには肝臓ガンなどを発症しかねないため、なんとしても進行を食い止めなければなりません。
肝臓があたたまる「温肝湿布」のやり方

肝臓(右の肋骨の下)部分に服の上から使い捨てカイロ(はるタイプ)などを当てて、じっくり温めるだけ。
30分程度を目安とする。温める時間は、夜寝る1~2時間前がお勧め。
※低温ヤケドには注意をすること。
寝る1〜2時間前に 温めるのがお勧め
睡眠不足や運動不足によっても肝臓の機能は損なわれるため、食事のみならず、生活習慣全般に注意を払いましょう。
また、ストレスによって交感神経(心拍数や血圧を上げるなど全身の活動力を高める神経)が優位になり、肝臓に流れ込む血液量が減ることも、機能低下の一因になります。
通常、肝臓には1分間につき約1・5Lの血液が流れ、体中の血液量の約50%が集まっています。それは、エネルギーのもとになる栄養分を代謝するために、血液が必要だからです。
血液量が減ると、必然的に代謝が悪くなり、体脂肪がたまりやすくなります。そればかりでなく、冷え症や便秘になる可能性も高くなるでしょう。
さらに、肝臓の機能低下は、アンモニア(疲労のもとになる物質)などの有害物質を解毒する力を弱めてしまいます。
結果、常に体がだるく感じられたり、疲れやすくなったり、睡眠の質が低下したり、二日酔いがひどくなったりと、ありとあらゆる不快な症状が出やすくなるのです。
こうした状況に陥らないためには、前述のとおり生活習慣に注意することが大切ですが、それと同時並行で取り組んでいただきたいのが、「温肝湿布」です。
方法は簡単。肝臓(右の肋骨の下)部分に、服の上からはるタイプの使い捨てカイロなどを当てて、じっくり温めるだけです。
長過ぎると肝臓が疲れてしまう場合があるので、30分程度を目安としてください。
カイロなどで温めると、肝臓の血行がよくなり、低下した機能の改善が見込めます。
例えば、やせやすくなったり、疲れが取れたり、便秘が解消されたりといった効果も、十分期待できるでしょう。
温める時間は、夜寝る1〜2時間前がお勧め。肝臓の解毒は夜寝ている間に行われるため、寝る前にするとよいでしょう。
私自身も温肝湿布をしますが、体調がよくなるばかりでなく、リラックス効果も高いと感じています。おかげで、よく眠れるようにもなりました。
毎日ではなく、2日行ったら1日お休みするペースでも十分なので、気負わず日々の習慣として取り入れてみてください。
温肝湿布を愛用する阿部先生