
目の筋肉をほぐして ピント調節力を強化
「水分をちゃんととっていますか?」と聞くことにしています。
目の状態とはあまり関係がない質問のように思えるかもしれませんが、実はそうではありません。
水分摂取は、目の状態とも密接な関連があります。私たちの体は、一日2リットル以上の水分を必要としますが、一日2リットルの水をとっている人は、そんなにたくさんはいないでしょう。つまり、私たちの水分摂取量はもともと不足ぎみです。
そこで、例えば、根を詰めて4〜5時間のパソコン作業を続け、その間に水分をとらずにいると、体の脱水状態がすでに始まっていることも多いのです。
この脱水の初期状態が続くと、どうなるでしょうか。
血液はドロドロになり、血流は滞り始めます。体の各細胞への酸素などの供給がへり、肩がこったり、頭痛を訴えたりする人も出てきます。体は冷え、肌は乾きがちになります。こうした水分不足の症状の一つとして、ドライアイや目の疲れ、目の奥の痛みなどの症状が生じているケースもあるのです。
ですから、水分補給をじゅうぶんに行っただけで、ドライアイや眼精疲労が楽になることもあります。
こうして水分摂取について確認したら、次に、運動しているかどうか、患者さんに聞きます。運動不足も、眼精疲労を引き起こす要因の一つだからです。
一定の姿勢で一定距離のパソコン画面をじっと見つめていることは、目の筋肉に緊張状態をずっと強いていることになります。この結果として、目の周辺の血流状態も悪くなり、眼精疲労やドライアイが起こるだけではなく、目のピント調節力が低下して、目がかすむなどの不快な自覚症状が生じてきます。
こうしたときは、体を動かすことが大切です。運動によって全身の血行がよくなり、体全体の筋肉がほぐれると、目の血行促進も図られます。同時に、運動で体を動かしているときは、遠くを見たり近くを見たり、見る対象が自然にばらつきます。このため、近距離の対象を凝視することで疲労した、目の筋肉をほぐすのにも役立つでしょう。
これと同様の意味で、皆さんにお勧めしたいのが、目の遠近トレーニングです。やり方を説明しましょう(下の写真参照)。
遠近トレーニングのやり方

まず、近くを見るときは、自分の親指の爪を目標にします。左右どちらの手でもかまいません。
目の前30センチの位置に親指を立てて、その指先を両目でじっと見てピントを合わせます。
次に遠くを見ます。外の景色など、できる限り遠くに目標物を定め、それを見て、ピントを合わせます。こうして近くと遠くを交互に見て、ピントを合わせることを交互にくり返し、30往復やってみましょう。
30往復をワンセットとして、一日に4セット以上行ってみてください。
この動作では、両目、指先、遠くの目標物が、一直線に並ぶようにします。遠くの目標は、山でもビルでも樹木でも、なんでもかまいません。何メートル以上離れていなければ効果がない、といったこともありません。室内で行う場合は、2〜3メートル離れた壁にかけられた絵やカレンダーなどを目標にしてもいいのです。
ピントを早く合わせようと、慌てる必要はありません。ゆっくりでいいのです。じっと見つめて完全にピントが合ってから、次の目標物へ目を移します。
メガネやコンタクトを使っている人は、そのままトレーニングを行ってかまいません。遠近両用メガネを使っている人や、近距離用と遠距離用の二つを持っている人は、遠距離用のメガネで行いましょう。
この遠近トレーニングに加えて、次のような眼球運動を行うと、より効果的です。
眼球運動のやり方

以下の①〜③の動作をしたら、そこで動きを保持し、八つ数えます。
①目をギュッと閉じる。大きく開く。
②精いっぱい右を見る。同じく左を見る。
③精いっぱい上を見る。同じく下を見る。
この三つの眼球運動を、遠近トレーニングとセットでやってみましょう。
このほか、ぬるめのお湯にゆっくり入浴したり、温タオルで目を湿布したりといった方法も勧められます。
水分補給をじゅうぶんに行って、目の遠近トレーニングを行えば、目の筋肉のこりや疲れをほぐし、ピント調節力を強化することができるでしょう。ピント調節力が高まれば、近視や老眼の改善効果も期待できます。
特に老眼は、加齢とともに、水晶体の厚みを調節している毛様体筋が弾力性を失い、調節力が落ちた状態です。継続して遠近トレーニングを行えば、この毛様体筋の弾力性を保つのに役立ちますし、それがひいては、老眼の進行を遅くすることにもつながってくるでしょう。
目の輝きを保って 白目の充血を一掃!
水分補給をしっかり行い、運動したり、遠近トレーニングを行ったりすることは、目の美白という点から見ても有効です。
目は、老化が進むと、若いころは青みがかっていた白目の部分が、だんだん黄色っぽくなってきます。また、水晶体の透明度が落ちてくるために、黒目がどんよりとしてきます。さらに、瞳孔が小さくなり、目のキラキラ感も減少します。
老化によって水晶体の透明度が落ちてくるのを防止するのは、難しいかもしれません。しかし、水分補給と遠近トレーニングをしっかり行えば、目の血行もよく保たれますし、ドライアイや眼精疲労などが予防されて、目がいつもよい状態で保たれるようになります。
結果として、疲れてショボショボした目ではなく、疲労知らずのパッチリした目が保たれることになります。こうした点では、目の遠近トレーニングは、目の輝きを保つのにも有効であるといっていいでしょう。白目の充血などもなくなりますから、この意味では、確かに目の美白にもなるはずです。
なお、市販の点眼薬の中には、血管収縮剤入りのものがありますが、これは使いすぎると、かえって目の充血を招いたり、目の疲れが取れにくい状態になったりするケースが見られます。くれぐれも、使いすぎには注意してください。

「目の美白にもなる」と新見先生