
ふくらはぎの筋肉のポンプ作用が活発になる
私は、寝たままでふくらはぎの筋肉を刺激して、全身の血液の循環をよくする「足首たたき」を患者さんにお勧めしています。
健康の第一条件は、血液循環をよくすることです。私たちの体の細胞1つひとつに、栄養や酸素を運んでいるのは血液です。
ですから、その血液の循環が悪くなると、細胞は健康を保つことができず、体にいろんな障害が起こってきます。血流の悪さは万病の元といっても過言ではないのです。
そして、血液循環をよくするうえで重要な役割を果たすのが、ふくらはぎです。
心臓から流れ出た血液は、動脈を通って細胞に酸素と栄養を供給し、二酸化炭素や老廃物を受け取ったあと、静脈を通って心臓に戻ります。
ところが、2本足で生活している人間は、足から心臓まで高低差があるため、足先の血液が重力に逆らって心臓に戻るのは容易なことではありません。
そこで、ふくらはぎの筋肉が伸び縮みしてポンプのように働き、血液の還流を助けているのです。ふくらはぎの筋肉のポンプ作用を働かせるには、運動して筋肉を伸縮させる必要があります。
とはいえ、お年寄りや、ひざ・腰に痛みのある人は、ウォーキングなどの運動は困難です。
そこで私がお勧めしているのが、寝たままで、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用を効率よく働かせることができる「足首たたき」です。
ひざや腰に痛みがある人も寝たまま楽にできる
足首たたきは、自然療法研究家の稲垣多美作先生が考案し、西会(故・西勝造氏が確立した西式健康法を研究・実践している団体)が普及させている運動法です。西会では、「足首の上下運動」と呼んでいます。
負荷が少ないため、腰やひざに痛みのあるために運動をしづらい人でも楽に行うことができます。
また、あおむけに寝た姿勢で行うため、心臓と足の高低差がなくなり、立って行う運動よりも効率よく血液を心臓に戻すことができます。
足首たたき
やり方を説明しましょう。
まず、大きめのバスタオルをきつく巻いて、棒(バスタオル棒)を作ってください。
バスタオル棒の作り方

足首たたきのやり方
次に、あおむけに寝てバスタオル棒に両足を乗せます。
そして、片足ずつ棒に足首を打ちつけるようにストン、ストンと落とします。
足首が棒に当たる瞬間は速度を落とさず、力を抜いて下まで落としきってください。
そうすることで、足を落とした勢いで自然に足先が伸びてアキレス腱が縮みます。
再び足を上げると、足先が自然に上を向いてアキレス腱が伸びます。
同時にふくらはぎの筋肉が伸展し、ポンプ作用が働いて血液循環がよくなります。
片足10〜25回ずつを1セットとして、5〜10セットずつを目安に、1日2〜3回行うとよいでしょう。
食後すぐは避け、空腹時に行ってください。

睡眠時無呼吸の補助器が不要になった
私は毎朝、柔軟体操を行った後、足首たたきを3〜4分やっています。時間がある日は夕食前にも行います。
足首たたきで血液の循環をよくしているおかげで、毎日元気に診療ができています。お通じは1日1〜2回必ずありますし、運動不足の解消や気分転換に、とても役立っています。
足首たたきは、足のむくみやだるさ、冷え症、こむら返り、下肢静脈瘤、ひざ痛など、足の症状には著しい効果があります。
それにとどまらず、全身の血流がよくなるので、便秘や前立腺肥大、高血圧や心臓病、耳鳴り、めまい、うつ、パニック障害などにも効果が期待できます。
最近では、こんな例がありました。
睡眠時無呼吸症候群による眠気と集中力の低下、抑うつの症状を訴えて来院した28歳の男性Kさんは、西式の食事や運動療法とともに足首たたきを熱心に行いました。
その結果、2カ月後には、睡眠時につける呼吸の補助器が不要になり、体も軽くなって、表情もたいへん明るくなりました。
Kさんのように、食事に気をつけて足首たたきに取り組めば、きれいな血液が体中を巡るので、体はどんどん健康になるはずです。
皆さんも、寝ながら簡単にできる足首たたきを、ぜひ日常生活に取り入れてください。
解説者のプロフィール

吹野 治
1975年、鳥取大学医学部卒業。九州大学心療内科、国立療養所鳥取病院医長、(財)生活環境問題研究所附属健康の森内科診療所長などを経て、2008年、ふきのクリニック(大阪府藤井寺市)を開設。現代医学に漢方、食事療法、心理療法、西式健康法(甲田療法)などを取り入れ、自然治癒力の向上を目指した統合医療(ホリスティック医療)を行っている。
●ふきのクリニック
大阪府藤井寺市北岡1-8-36
[TEL]
http://www.fukino.net/