足の爪の切り方で全身に健康効果アリ!

爪の構造を知ろう

指の切断手術を免れた人もいる
足の爪を切るとき、ほとんどの人は「短くすればいい」「形よく整えればいい」と考え、自己流で爪切りをしていると思います。
しかし、爪切りは正しく行うと、巻き爪や角質など指先のトラブルが緩和されるだけでなく、全身の血の巡りが劇的に改善し、全身の健康にさまざまな効果をもたらします。
私は、古来代々伝承されてきた「血の道療法」(血液の滞りを改善する手当て方法)をベースにした指先ケア方法の指導と普及に取り組んでいますが、その核となる方法の1つが、「爪切り」です。
25年来の腎臓透析患者で足に壊疽(組織が壊死し腐ること)を起こし、指の切断手術を検討していた人が、2カ月の爪切りで改善し、切断を免れたケースもあります。下肢静脈瘤で足のひどいむくみと疲れに苦しんでいた人が、月1回の爪切りケアで、1年後には症状がほぼ消失したケースもあります。爪切りによる血巡り改善効果は、表に示すとおり、データ的にも実証されています。
爪ケアによる血流の改善効果

正しい爪の切り方を実践することで、足の血流が改善される。
指先の筋肉のゆがみやねじれを取るのが目的
では、なぜ爪切りを正しく行うと、全身の血流が改善するのでしょうか。実は指先の筋肉は、体の末端の血液を心臓へ戻す「第二の心臓」の役割を果たしているのです。爪の下には、とても細い毛細血管が網目状に広がっており、動脈から静脈へと移り変わる場所になっています。指先の筋肉がスムーズに収縮・弛緩することで、毛細血管にくまなく血液が送られて、心臓へと戻っていきます。
ところが、指先の筋肉にゆがみやねじれがあると、周囲の血管や神経が圧迫され、毛細血管まで血液が行き渡らなかったり、血流が滞ったりしてしまいます。毛細血管の手前には、「動静脈吻合」と呼ばれる一種のバイパス通路があり、毛細血管がうまく流れないときは、血液はこの迂回路ばかり通ることになります。指先の冷えは、毛細血管まで血液が流れていない典型的な症状です。
指先の筋肉のねじれやゆがみは、重力の影響や体の使い方のクセなどによって生じますが、爪も大きな要因です。爪の切り方が悪いと、指先にかかる圧力が不均等になったり、指の動きに合わせて爪がうまく動かなくなったりします。
そこで、私たちが提唱する「正しい爪切り法」では、指先内部の筋肉のねじれやゆがみの解消を目的に、指と爪が自然に動くような形に爪を切ります。
1回の爪切りで、その場で指全体が弾力を取り戻し、指や爪の血色がよくなります。数分後には、指全体に、やがて足やすね、太ももにまでスーッと赤みがさしてきます。これは筋肉のゆがみが解消され、血巡りがよくなることで起こる現象です。爪切りケアを行うと、「呼吸が楽になった」「冷えやむくみが軽くなった」といった感想を持つ人も多くいます。
覚えておきたい爪切りのコツ

正しい爪切りの基本は、「指の形」ではなく「爪の形」に合わせて爪を切ること。そのために、爪の中心を見つける作業が重要です。足の爪は手の爪以上にゆがんでいることが多く、指ごとに上下左右にねじれていたり、爪の生え始めの部分が斜めになっていたりします。指の形に合わせて爪を切るとますますゆがんでしまうので、めんどうでも爪切りのたびに、爪の中心を見つける作業を行ってください。
爪を切るとき、爪にできるだけ余分な圧力を加えないようにすることも大切です。正しい爪切りを行うと、末梢の血流が改善し、爪や周囲の組織にも栄養が行き渡るので、巻き爪や角質、小さくなった小指の爪なども改善していきます。全身の血巡りがよくなれば、冷え症やむくみなども改善し、免疫力もアップして、体が本来備えている自然治癒力も高まります。健康になるための習慣として、ぜひ正しい爪切りを実践してください。
正しい爪の切り方

解説者のプロフィール

室谷良子
滋賀県出身。日本フットケア協会師範。父方・母方に代々伝わる「血の道療法—血液の滞りを改善する手当て法」を研究し、普及・啓蒙活動ならびに全国各地の看護・養護学校での指導や研究発表を行う。監修書に『ピクチャーブック爪のケア・手足のケア技術』(看護の科学社)など。