
アルカリ性でミネラル分のバランスがいい水を飲む
私たちは毎日、2.5ℓもの水を放出しています。尿や便として1.5ℓ、汗が0.5ℓ、吐く息から0.5ℓという排出量です。こうして失われた2.5ℓの水分は、しっかり補充する必要があります。
2.5ℓというと多いように思いますが、食事から1ℓ、たんぱく質や炭水化物、脂肪の燃焼でも0・5ℓ摂取しています。ですから、飲み水としては1ℓ摂取すればいいことになります。夏場には汗をかく量が1ℓくらい増えますから、2ℓの水を飲む必要があります。
水の飲み方としては、ゆっくりこまめに飲むのがいいでしょう。目安は、コップ1杯を1日に10回。これで1.5〜2ℓの水を摂取することができ、体が水不足になることもなく、新陳代謝も活発になります。
おいしく水を飲むには、温度もたいせつです。夏場はやはり冷たいほうがいいですが、冷たすぎると体を冷やしてしまいます。ですから、やや冷たいくらいの7、8℃が適温です。
体にとってよい水の条件は、まずアルカリ性であることです。体は疲れると酸性に傾くので、それを中性に戻すにはアルカリ性がいいのです。また、ミネラル分がバランスよく含まれていることも、たいせつだと言えます。
南フランスのピレネー山脈の麓で湧き出ている「ルルドの水」のように、世界で長生きの水と言われる水の多くは、アルカリ性でミネラル分、特にカルシウムが豊富であることが明らかになっています。
脳梗塞や心筋梗塞を防ぐカルシウムが豊富な水
血管の若さを保つためにも、水はたいせつな働きをします。動脈硬化を防ぎ、脳梗塞や心筋梗塞になるリスクを低くするには、カルシウムを豊富に含んでいるアルカリ性の水がお勧めです。
体はカルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンによるSOS信号を出し、骨や歯に含まれるカルシウムが血液中に溶け出して、不足した分を補います。血液中のカルシウム分がじゅうぶんな量になると、SOSの信号は止まります。
ところが、信号が止まらずに、血液中のカルシウムが増えすぎてしまうことがあります。
すると、血管壁に余分なカルシウムが付着して動脈硬化を起こし、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなるわけです。
ふだんからカルシウム分を多く含んだ水を飲んでいれば、血液中のカルシウム分は適量に保たれます。そうすると、SOS信号を出す必要がなくなり、血液中に増えたカルシウムが血管壁に付着することもありません。血管が丈夫になり、脳梗塞や心筋梗塞になるリスクも減ることになります。
また、カルシウムと同様にたいせつなミネラルがマグネシウムです。カルシウムはマグネシウムあってこそ、有効に働くことができるからです。ですから、カルシウムとマグネシウムをバランスよくとれる水を飲むようにしましょう。
理想的な比率は、カルシウム2に対してマグネシウム1とされています。硬度でいうと、100〜300の硬水がいいと思います。

50代の頃(左)と、現在74歳になる藤田先生(右)。飲み水にこだわって、心身ともにエネルギーが高まり、髪も濃くなった。
寝る前のコップ1杯は「宝水」になる
脳梗塞や心筋梗塞の予防に効果的な水の飲み方の目安は、起きてすぐにコップ1杯、午前中に1杯、午後に1〜2杯、寝る前に1杯です。
なかでも、寝る前の1杯がたいせつです。この水は「宝水」と呼ばれますが、その理由は血液の粘度と関係があります。
寝ている間は、汗や呼吸によって水分が失われ、水分を補給することもできません。その結果、血液の粘度は午前4〜8時くらいに最も高くなります。脳梗塞や心筋梗塞の発作が、早朝や午前中に多く見られるのは、このためです。
しかし、寝る前にコップ1杯の水を飲んでいれば、血液の粘度が高くなるのを抑えることができます。脳梗塞や心筋梗塞のリスクも下がりますから、まさに宝水だと言えるでしょう。
皆さんも上手に水を飲み、血管の若さを保って、健康な生活を送っていただきたいと思います。

解説者のプロフィール

藤田紘一郎
1939年生まれ。東京医科歯科大学卒業。東京大学医学系大学院修了、医学博士。金沢医科大学教授、長崎大学教授、東京医科歯科大学教授、人間総合科学大学教授を経て、現在、東京医科歯科大学名誉教授。専門は感染免疫学、寄生虫学、熱帯医学。1983年、寄生虫体内のアレルゲン発見で、小泉賞を受賞。2000年、ヒトATLウイルス感染経路などの研究で日本文化振興会・社会文化功労賞、国際文化栄誉賞を受賞。著書に『脳はバカ、腸はかしこい』(三五館)、『50歳からは炭水化物をやめなさい』(大和書房)、『体をつくる水、壊す水 10年後に差がつく「水飲み〝腸〟健康法」30の秘訣』(ワニブックス【PLUS】新書)などがある。