解説者のプロフィール
父も祖父も脳卒中で亡くなった
健康診断で「血圧が高い」と言われ、内科に行ったら降圧剤を処方された。
以来、ずっと薬を飲んでいる……皆さんの中にも、こういうかたは少なくないのではないでしょうか?
もちろん、薬を飲むことは非常にたいせつです。
かく言う私も、ずっと弱い降圧剤のお世話になっています。
ただ、長年、医師として働いてきて思うのは、日本人は薬に頼りすぎだということ。
「薬を飲んだからだいじょうぶ」ではなく、やはり自分なりに養生していくことが、健康で元気いっぱいの老後につながっていくと考えます。
私も60歳で最大血圧が200㎜Hgを超えたときは、すぐに降圧剤の服用を開始するとともに、生活全般の見直しをしました(基準値は、最大血圧140㎜Hg以下、最小血圧90㎜Hg以下)。
高血圧は、心臓が慢性的に高い圧力をかけて血液を送り出している状態のことです。
血管に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともある怖い病気です。
私の父も、祖父も、脳卒中で亡くなっており、いわゆる高血圧の家系です。
祖父が倒れたのは当時の私と同年代の62歳でした。
私は、高血圧にありがちな頭痛がひどく、いつ倒れてもおかしくない状況だったと思います。
しかも、当時の私は、病院の院長を務めるとともに、産婦人科の医師でもありました。
外来で1日200人以上の患者さんを診察し、お産があれば夜中でも病院に駆けつけねばなりません。
また学生の講義を週に2回持っており、その資料作成も大変でした。
布団に寝転んだまま指をグー・パーするだけ
そんな多忙を極めた私が「少しでも血流をよくしよう」と始めたのが、「グー・パー体操」です。
グー・パー体操はその名のとおり、手をグー、パーと握ったり開いたりするもの。
朝、布団に寝転がったまま両腕を伸ばし、グー・パー体操を行います。
すると、2〜3週間後から血圧が下がり始め、なんと1カ月後には基準値の140㎜Hg以下になり、頭痛も解消しました。
もちろん、降圧剤を飲み、減塩を心がけ、間食をやめるなどの努力はしましたが、多忙な生活そのものは変わっていません。
グー・パー体操は、もともと冷え症に悩む患者さんのために考案したものです。
手足の先が冷たくてつらい……という人は、末端の血の巡りが悪くなっています。
心臓から遠い手足の毛細血管で、血液の流れが滞っているからです。
そして高血圧も、冷え症と同じく血行不良が原因の1つです。
血流が悪いなら、手足をポンプのように動かして、血液の流れを助けてあげればよいのでは? この発想から生まれたのが、グー・パーという単純な動きでした。
グー・パー体操のやり方
グー・パー体操の詳しいやり方をご説明しましょう。
まず足の血液を効率的に心臓に戻すため、2つ折りにした座布団やクッションを足の下に置きます。
そしてあお向けに寝て腕を伸ばし、年の数だけグー・パーし、さらにグー・パーの動きに合わせて、足首を前後に動かします。
年の数だけやるのが大変な人は、まずは30回を目安に行い、徐々に数を増やしてください。
また、グーのときに親指を中に入れて握ると「労宮」というツボの刺激にもなります。
労宮は手のひらの真ん中にあり、疲労やストレス解消に効果的です。
いつ行ってもかまいませんが、お勧めは朝です。
起床時に体を適度に動かす習慣を持つことで、自律神経を整えることができるからです。
また、腕を伸ばすのがつらい場合は、ひじを床につけて行ってもかまいません。
基本的には78歳の私ができる体操ですから、それほど大変ではないと思います。

78歳の今も現役医師で、4つの病院をかけもち
テレビでも「医師の勧める健康体操」というテーマでお話ししたところ、視聴者のかたから大きな反響をいただきました。
なにしろ、簡単で短時間ででき、手間もお金もかかりませんが、効果はてきめんですから。
おかげさまで、高血圧体質と上手につきあいながら、ずっと元気に働いております。
降圧剤も服用していますが、作用のぐっと弱い薬になりました。
定年後の現在は、4つの病院をかけもちで患者さんを診察。
土日は習い事にワイフの買い物のお供と、相変わらずの多忙な日々を満喫しています。

手の「グー・パー体操」を実演する村田高明先生
村田高明
1935年、秋田県生まれ。60年、慶應義塾大学医学部卒業後、同大婦人科教室入局。国立東京第二病院勤務を経て、アメリカ南カリフォルニア大学に留学。帰国後、国立埼玉病院産婦人科医長、国立栃木病院産婦人科医長を経て87年より南多摩病院産婦人科医長、のち院長。漢方による診断・治療を実践し、漢方応用の不妊症治療の実績は35年間で2000例以上にも上る。現在は、京王八王子山川クリニックほか、4つの漢方外来で診療に当たる。