【高齢化社会を救う“笑い”の効果】認知症の問題行動が改善!うつ緩和にも

【高齢化社会を救う“笑い”の効果】認知症の問題行動が改善!うつ緩和にも

私は、「笑いヨガ」と出会ってから、もう6年がたちます。きっかけは、毎年参加していた「日本笑い学会」の研究発表会でした。その中で、「日本笑いヨガ協会」の代表である高田佳子さんの講演があり、初めて笑いヨガの存在を知ったのです。【解説】枝廣篤昌(豊岡台病院院長)


枝廣篤昌
1962年生まれ。愛媛大学医学部医学科卒業後、精神科医師として、愛媛大学医学部附属病院、新居浜精神衛生研究所附属財団新居浜病院などを経て、現職に至る。大学時代には落語研究会に所属し、現在も精神保健福祉の啓蒙の一環として「チョーサ寄席」を毎年開催。「笑い」を生かした地域づくりを実践。また、「日本笑い学会」四国支部の代表であり、笑いの普及活動に努めている。

声を出して笑って発散することが大切

 私は、「笑いヨガ」と出会ってから、もう6年がたちます。
 きっかけは、毎年参加していた「日本笑い学会」の研究発表会でした。その中で、「日本笑いヨガ協会」の代表である高田佳子さんの講演があり、初めて笑いヨガの存在を知ったのです。

 医師として、私が「笑い」に注目するようになったのは16年ほど前からです。そもそも学生のころの私は、落語研究会に所属していたほどの落語好きでした。それが高じて、自ら高座に立ったこともあります。
 しかし、精神科の医師として働き続けるうちに、自然と、落語と距離を置くようになりました。深刻な問題を抱えている患者さんや、その家族と接していく中で、「笑い=不謹慎」という思いが強くなったのです。

 そんなある日、心に問題を抱えている患者さんの家族会がありました。その際、私が落語を演じられることを知っているかたから、一席お願いされたのです。
 頼まれるままに演じてみると、皆さんの反応は、意外なものでした。ほとんどの人が笑顔になって、心から楽しんでもらえたのです。また、「明日からがんばれそうな気がします」という、前向きな感想もいただきました。
 それまで、私の中で、笑いと医療は対極の位置にありましたが、これをきっかけに、「笑いも捨てたものではない」と考えを改めるようになったのです。

 さて、偶然にも、その家族会に看護師のかたが同席していました。そのかたから、「笑いと健康」というテーマの講演と、落語を演じてほしいと依頼されたのです。こうして、現在も続けている、笑いと健康の話と、落語がセットになった講演会を定期的に開くようになりました。
 ときには、職場の雰囲気をよくするための、メンタルヘルスの一環として、企業に招かれることもあります。相手のほとんどは、中高年の男性です。いつものように落語を演じるのですが、なかなか笑顔を見せてくれません。心の中ではおもしろいと感じても、他人に感情を動かされたくないという防衛本能から、笑うという動作を押さえつけてしまうのです。

 数々の研究によって、笑いには優れた健康効果があることが判明しています。しかし、心の中で笑うだけでは、せっかくの効果が得られません。やはり、声に出して発散するのが大切です。
 そこで試しに取り入れたのが、笑いヨガでした。これは、ユーモアや冗談とは関係なく、笑いを運動として再現できる優れた体操です。また、年齢や性別に関係なく、だれでも簡単に笑うことができます。
 すると予想どおり、たくさんの人から大好評でした。その後、私の講演会の最後には、笑いヨガをするのが慣例になりました。今では、私の落語よりも人気があります(笑)。

患者さんの便秘薬の使用回数がへった!

 2012年、病院の看護師から、看護研究のテーマに何かいいものがないかと聞かれました。そこで勧めたのが、笑いヨガです。
 これが思いのほか好評で、今では、ほぼ毎日、笑いヨガを行うようになりました。昼食後、スタッフと入院患者さん約20名で、15分ほど行っています。

 病院の入院患者さんの状態は、認知症の高齢者を中心に、うつ症状などの問題を抱えるかたなど、実にさまざまです。しかし、笑いヨガは、症状や年齢も関係なく、だれでも実践できます。
 特に、認知症のかたには、効果的でしょう。なぜなら、笑いヨガで大切なのは、とにかく笑うこと。話の内容も、ネタも関係ありません。集中力も不要で、自分だけが話がわからない、という孤独感もないのです。
 実際、認知症の患者さんの生活に、いい影響が現れています。認知症になると、日中に動かないせいで、夜間に「せん妄」と呼ばれる意識障害に陥り、急に叫ぶなどの問題行動を起こす場合があります。しかし、笑いヨガを取り入れてから、日中の行動が活発になり、そうした行動がへったのです。

 また、病院全体として、患者さんに便秘薬を使う回数もへりました。これは、笑うことで自律神経(無意識に内臓や血管などを調整する神経)のバランスが整い、排便が促されたと考えられます。また、笑うという動作が横隔膜を上下させ、腸に刺激を与えたのでしょう。

 笑いヨガは、うつ症状の改善にも効果が期待できます。近年、うつ症状に効果が高いとして、リズム運動が注目を集めています。笑いヨガも、一定のリズムで横隔膜を動かすので、同様の効果が期待できるでしょう。
 これからの未来、高齢化社会がますます深刻です。人と人とのつながりは薄れ、孤独な高齢者がふえ続けていくことでしょう。
 そんな社会問題の救世主となりえるのが、笑いヨガなのかもしれません。

→「笑いヨガ」のやり方はコチラ

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


脳が活性化する親指の体操で明るく前向きになれる!意欲がわいてくる!

脳が活性化する親指の体操で明るく前向きになれる!意欲がわいてくる!

親指刺激を行っているうちに、手の動きと脳の働きが同時によくなり、薬の管理がうまくできるようになったというお年寄りもいます。認知症に関する効果だけでなく、肩こりや冷えが軽減した、姿勢がよくなったという人も多いのです。【解説】長谷川嘉哉(認知症専門医)


50歳を超えたら食事に変化を!サルコペニアや骨粗鬆症を防ぐには「ちょっと太ってるくらいがいい」

50歳を超えたら食事に変化を!サルコペニアや骨粗鬆症を防ぐには「ちょっと太ってるくらいがいい」

「体のためには粗食が一番」「肉や卵はメタボのもと」「中高年になったら少食を」最近は、こういったことが「健康の常識」とされているようです。しかし、これらの考え方は、若くて、過食や肥満がある人には当てはまりますが、日本の多くの高齢者には当てはまりません。【解説】新開省二(東京都健康長寿医療センター研究所副所長)


【男性更年期障害】うつ病との違いは? EDを改善する“筋トレ”と前立腺肥大の治療

【男性更年期障害】うつ病との違いは? EDを改善する“筋トレ”と前立腺肥大の治療

男性にも「更年期障害」があるのをご存じでしょうか。男性の更年期障害は、加齢に伴うテストステロン(男性ホルモンの一つ)の分泌量の低下が主な原因となり、50~60代以降の中高年男性に現れる心と体の不調をいいます。【解説】持田蔵(西南泌尿器科クリニック院長)


秋元才加 腹筋の秘密【筋トレ&食事法】体型維持と腰痛改善に(女医・松宮詩依 対談)

秋元才加 腹筋の秘密【筋トレ&食事法】体型維持と腰痛改善に(女医・松宮詩依 対談)

筋肉があるとよい姿勢になるし、肩こり、腰痛、ひざ痛などのケアにもなります。(秋元)糖尿病や認知症を防ぐホルモンが筋肉から出ているという最新研究もあります。(松宮)【対談】秋元才加(女優・タレント)・松宮詩依(天現寺ソラリアクリニック院長)


【うつ・不眠を改善】心も体も温めて自己肯定感を高める“半身浴”のやり方

【うつ・不眠を改善】心も体も温めて自己肯定感を高める“半身浴”のやり方

私のクリニックでは、「心を温めること」と「体を温めること」は治療の両輪です。うつ、不眠、適応障害、過食症、引きこもり、パニック障害、不登校など、さまざまな症状の患者さんの治療に、半身浴を取り入れています。半身浴で体を温めることが、精神面でも自己肯定感を高めることにつながります。【解説】於保哲外(オボクリニック院長)


最新の投稿


生ガキにあたった時に「梅肉エキス」をなめたら痛みが治まった!

生ガキにあたった時に「梅肉エキス」をなめたら痛みが治まった!

友人とフランス料理店に行き、生ガキを食べました。すると、なぜか私だけがカキにあたってしまったのです。胃がねじれるように痛く、脂汗が浮き出てきます。痛みで体がよじれたりのけぞったり。じっとしていることができないほどでした。わらにもすがる思いで、私は梅肉エキスを手に取りました。【体験談】江崎紀子(仮名・主婦・72歳)


ぐるぐるめまいと吐き気が取れる「クチナシの実」の黒焼きの作り方

ぐるぐるめまいと吐き気が取れる「クチナシの実」の黒焼きの作り方

クチナシの実は、キントンや炊き込みごはんなどに色を着ける天然の着色料として利用されるほか、生薬(漢方薬の原材料)としても昔から使われており、髙血圧や肝機能の改善、鎮痛・鎮静作用などの働きがあることが確認されています。【解説】平田眞知子(薬草コンサルタント)


【大根の健康効果】有効成分の酵素・ファイトケミカルはスムージーで取ると良い!

【大根の健康効果】有効成分の酵素・ファイトケミカルはスムージーで取ると良い!

私は、若々しく健康な体を維持するために、食事で酵素をたっぷり取ることを提唱しています。そのために役立つ食材はいろいろありますが、癖のない風味が、多くの人に好まれている大根も、実は、酵素の補給源として、とても優秀な野菜です。【解説】鶴見隆史(医療法人社団森愛会鶴見クリニック理事長)


脊柱管狭窄症の足のしびれと痛みが解消 81歳現役シェフの「11円スリッパ」体験談

脊柱管狭窄症の足のしびれと痛みが解消 81歳現役シェフの「11円スリッパ」体験談

最初は半信半疑でしたが、藤井先生に勧められたとおり、常に中敷きを入れて、靴をはくようにしました。そうして1ヵ月ほどたったころでしょうか、自分でも「あれほどつらかったのは、一体なんだったのだろう? 」と感じるくらい、その後はひざの痛みに悩まされることはなくなりました。【体験談】藤田正義(オーナーシェフ・81歳)


食欲がない原因は「胃の位置」胃を上げる体操で飲みこみやすさがアップする理由

食欲がない原因は「胃の位置」胃を上げる体操で飲みこみやすさがアップする理由

子どものころ、立てひざでご飯を食べて叱られた。そんな思い出はありませんか。「立てひざで食事」は、一般常識ではマナー違反とされています。しかし実は、誤嚥の予防にとてもいい姿勢なのです。お勧めなのが、食事の前に胃の位置を上げておくこと。それを簡単に行える体操が「右足首の内回し」です。【解説】浜田貫太郎(浜田整体院長)