MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の呼吸困難に効果「笑いヨガ」

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の呼吸困難に効果「笑いヨガ」

皆さん、COPDという病気をご存じでしょうか。正式名称を慢性閉塞性肺疾患といい、主に長期間の喫煙が原因による、肺から全身に及ぶ炎症性疾患のことです。症状としては、慢性的な咳と痰、体を動かしたときの息切れが現れます。【解説】福岡篤彦(南和広域医療企業団南和広域医療企業団吉野病院吉野病院院長・奈良県立医科大学臨床教授)

職員の不安感も下がった!

COPDは、日常生活にも支障を来します。

 皆さん、COPDという病気をご存じでしょうか。正式名称を慢性閉塞性肺疾患といい、主に長期間の喫煙が原因による、肺から全身に及ぶ炎症性疾患のことです。症状としては、慢性的なセキとタン、体を動かしたときの息切れが現れます。

 COPDは、症状に気づきにくいのが特徴です。ゆっくりと進行していくため、重症になって、ようやく発見されるケースがほとんどです。症状が重くなると、呼吸不全に陥り、息苦しさのせいで日常生活にも支障を来します。
 全世界で、COPD患者数が増加傾向にあります。日本でも、2000年に行われた疫学調査によると、40歳以上の男女の8・5%、530万人がCOPDを発病していることが明らかになりました。

 近年、病名の認知度が高まってきましたが、まだまだじゅうぶんとはいえないのが現状です。
 私は、長年、奈良県立医科大学でCOPDを専門に研究を続けていました。2007年からは、現在の病院に移り、実際の治療やリハビリ指導を行っています。

 COPD専門医として、リハビリ指導の中の運動療法として、注目している体操があります。それが「笑いヨガ」です。
 そもそもの出会いは、NHKのテレビ番組で紹介されていたのがきっかけでした。わずか数分程度でしたが、見た瞬間に、「これだ!」と思ったのです。

高齢者でも安全に楽しく行えた!

 COPD患者の約40%は、うつ症状を抱えているといわれています。その原因は、やはり呼吸困難です。息苦しさが長く続くうえ、改善する見通しも立たないため、気分が落ち込んでしまうのです。

 笑いヨガを見たとき、「これをリハビリに応用すれば、患者さんのうつ症状に効果があるのでは」とピンときました。
 早速、インターネットで検索したところ、ヒットしたのが、「日本笑いヨガ協会」でした。そして、リーダー養成講座があることを知り、すぐに参加を決めたのです。それが、2009年2月のことです。
 2日間、「日本笑いヨガ協会」の代表の高田佳子さんからていねいに笑いヨガを教わりましたが、正直なところ、最初は違和感だらけでした。
 というのも、私が関西出身だからかもしれません。笑いヨガは、おもしろいと感じるネタがなくても、とにかく笑うエクササイズ。これまで、「ネタがおもしろいから笑う」ということが体に染みついているせいで、うまく笑うことができませんでした。

 しかし、それも最初だけで、慣れると、すぐに笑えるようになりました。不思議なことに、心の底から楽しいと感じて笑えたのです。
 さて、実際に体感してみると、笑いヨガが優れた有酸素運動だということがわかります。その後、早速、COPDのリハビリに笑いヨガを活用しようと研究を始めました。

 まずは数名の病院職員と、週1回、笑いヨガを実践しました。その有志の人で、「不安感」「全体的な健康感」「精神的な健康感」などを測定。すると、不安感が下がったうえ、心身ともに健康感が上昇したのです。
 さらに、高齢者福祉施設に協力を仰ぎ、1ヵ月間データを取ったこともあります。こちらに関しては、顕著な結果は出ませんでしたが、高齢者でも安全に楽しく行えることがわかりました。

肺に残ったままの息を排出し呼吸が楽になる

 2010年4月には、リハビリ入院されているCOPD患者さんを対象に、臨床試験を開始しました。8名の患者さんを二つに分け、Aグループは笑いヨガを取り入れたリハビリを、Bグループは通常のリハビリを行ってもらい、両グループを比較したものです。比較には、慢性呼吸不全専用に作られた特別な指標を用いました。

 その結果、「インパクト(病気に負けているという感覚)」の項目が、Aグループは大きく改善し、Bグループはそれほど変化がありませんでした。また、前述した研究データと同じように、Aグループの「全体的な健康感」「精神的な健康感」が、やはり改善したのです。2週間という短い期間なので、じゅうぶんな検証とはいえませんが、この結果だけを見ても、有効性が非常に期待できます。
 何より、息切れしやすいCOPD患者さんでも、無理なく、楽しくリハビリに臨めたということが大きな収穫でした。
 COPDになると、呼吸の際、息を吐ききれず、空気が肺に残ったままになります。肺に空気が残っているせいで、次に息を吸うとき、たくさん息を吸えません。これが、呼吸困難を引き起こすのです。

 笑いは、吐く息の連続です。笑うことで、肺に残った空気の排出が促され、呼吸が楽になります。こうした点からも、笑いヨガが、COPD症状の改善に役立つことに期待して研究を続けています。 COPDと笑いヨガについて、研究は緒に就いたばかりですが、近い将来、私の期待どおりの結果が出ると確信しています。
 COPDをはじめ、呼吸器の問題でお悩みのかたは、笑いヨガがお勧めです。最後に注意点を挙げるとすれば、抱腹絶倒するような大笑いだけは避けましょう。とはいえ、あまり心配せず、普通に笑いヨガを行っていれば問題はありません。

解説者のプロフィール

福岡篤彦
1963年、大阪市生まれ。奈良県立医科大学を卒業後、内科・呼吸器科として、同大学附属病院、吉野町国民健康保険吉野病院(現:南和広域医療企業団吉野病院)で医療・研究に従事。現在、南和広域医療企業団吉野病院院長として、過疎地で高齢者医療に邁進中。奈良県立医科大学臨床教授。COPD患者の栄養管理とQOL(生活の質)の向上をテーマに研究している。笑いヨガに出会い、笑いによる高齢者の健康増進をテーマの一つにしている。座右の銘は「一期一会一笑」。

●南和広域医療企業団 吉野病院
奈良県吉野郡吉野町大字丹治130番地の1
[TEL]0746-32-4321
http://nanwairyou.jp/yoshino/

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

関連記事
西洋医学では、カゼの原因の大半は、ウイルスであると考えられています。そのため、うがいと手洗いでウイルスを除去することがカゼの予防には効果的とされ、対症療法として薬が処方されます。私たち鍼灸師は、カゼの初期症状に対しては、発汗を促し、熱を下げる治療を行います。【解説】木戸正雄(日本鍼灸理療専門学校教務部長)
インフルエンザの初期なら、私は麻黄湯という漢方薬を処方します。優れた解熱効果があり、インフルエンザの型によってはタミフル以上に有効だったと日本小児感染症学会で報告されています。インフルエンザは決して軽く見ることはできませんが、初期のうちに手当てをすれば怖くありません。【解説】石原新菜(イシハラクリニック副院長)
インフルエンザの発症・重症化を防ぐのは、体に備わる免疫力です。全身に乾布摩擦をするのはめんどうですが、体幹部だけなら、着替えのついでに簡単に行えます。肌がほんのりと赤みを帯びるまで、優しくこすればじゅうぶんです。【解説】渡邉真弓(医学博士・鍼灸マッサージ師)
これまで便秘を治すために、腸にいいと言われるものを食べたり、飲んだりしましたが、いちばんおいしくて簡単で、効果のある発酵食品にたどりつくことができました。発酵の楽しさは、自分で菌を育てて、おいしくて体によいものができあがること。料理をする楽しみが増えました。【体験談】清川伸子(会社員・40代)
カゼにかかりやすくなるのは、寝不足やストレス、体の冷えなどによって、体力や免疫力が低下したときです。「カゼは万病の元」といいますが、その原因である「冷え」こそが万病の元です。ミカン湯やショウガみそ汁で、冷えを解消し、カゼをはね返してやりましょう。【解説】石原新菜(イシハラクリニック副院長)
最新記事
まずチェック項目で自分の足の指がどんな状態かチェックしてみましょう。はだしになって、自分の足の指をよーく見てください。足の指をチェックして気になる項目があっても、あきらめることはありません。「きくち体操」でこれから足の指を育てていけばよいのです。【解説】菊池和子(「きくち体操」創始者】
私は、60歳の今も左右の視力は1・0を保っています。これまでメガネの世話になったこともありません。老眼知らずの状態をキープしている秘密は、私が毎日行っているトレーニング「目のスクワット」にあるのです。毛様体筋をほぐす効果があります。【解説】本部千博(ほんべ眼科院長)
体重100kgの人なら3kg、80kgの人なら2.5kg程度の減量で、条件付きですが糖尿病の改善は可能です。体重が3%減少すると、ヘモグロビンA1cが3%程度下がることがわかったからです。例えば、ヘモグロビンA1cが9%の人なら、だいたい6%程度まで下がります。【解説】吉田俊秀(島原病院 肥満・糖尿病センター長)
これまで、入院患者さん向けの、いわゆる「リハビリ体操」はありましたが、外来の患者さんが希望するような体操はありませんでした。そこで私たちは、血圧を上げる要因である、末梢の「血管抵抗」を減らす筋トレを考案することにしました。【解説】金子操(自治医科大学附属病院リハビリテーションセンター室長・理学療法士)
1日の疲れを取るには、就寝時間や睡眠時間ではなく、「眠りに就いて4時間以内に、深睡眠を取ること」がたいせつなのです。しかし現代人の多くは、深夜にテレビやスマホを見たり、ストレスで体の緊張が取れなかったりして、本来の睡眠リズムが狂い、深睡眠を取りづらくなっています。【解説】白濱龍太郎(睡眠専門医)