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【ヘモグロビンA1cを下げる】糖質制限ダイエットの効果 カロリー制限との違い

【ヘモグロビンA1cを下げる】糖質制限ダイエットの効果 カロリー制限との違い

私がお勧めする糖質制限食は、ごはんやパン、麺類などの主食(糖質)を少なめにして、肉、魚、豆類、野菜などおかずを多めに食べて、糖質の摂取量を減らす食事法です。糖質の摂取量を減らすことで、血糖値の上昇を抑え、糖尿病の改善、予防に結びつきます。【解説】前川智(新潟労災病院消化器内科部長・医学博士)

おいしい糖質を食べ続けるために

 炊きたてのごはん、香ばしいトースト、湯気の立つうどんやラーメンなどを前にすると、ついついおなかいっぱい食べたくなる。こんな経験は誰しもあるでしょう。
 私たちが主食としている「糖質」(炭水化物)は、理屈抜きにおいしく、心と胃袋を幸せにしてくれます。糖質の誘惑に逆らうのは難しく、私も牛丼やにぎりずしを無性に食べたくなることがあります。

 しかし、糖質には悩ましい一面があります。それは、3大栄養素(脂質、たんぱく質、糖質)の中で、糖質は唯一血糖値を上げる元凶なのです。
 ごはんやパン、麺類などの糖質(炭水化物)は、体内でブドウ糖に変わり、血液中から細胞に取り込まれエネルギー源となります。そのさい、細胞が血液中のブドウ糖を取り込むには、膵臓から分泌されるホルモン、インスリンの助けが必要です。

 インスリンが不足したり働きが悪かったりすると、細胞はブドウ糖を取り込めず、行き場を失ったブドウ糖が血液中に過剰に増え、血糖値が上がります。
 ブドウ糖をいちばん多く取り込むのは、筋肉細胞です。40代以降は運動不足で筋肉量が減る上に、代謝も低下するため、糖質を取り過ぎるとブドウ糖を処理しきれず糖尿病を発症するリスクが高まります。

 また、中高年になると肥満になりやすく、内臓脂肪が増える傾向があります。脂肪細胞はインスリンの働きを弱める物質を放出するため、インスリンの効きが悪くなり、糖尿病を合併しやすくなります。

 加えて、東洋人は膵臓の働きが弱く、インスリンが不足しやすい弱点があります。日本人である以上、糖質の取り過ぎに注意が必要といえます。では、おいしい糖質を、健康を保ちながら食べ続けるには、どうすればいいのでしょう。
 この問いを解決するのが「糖質制限食」です。

カロリー制限食と糖質制限食を比較

 私がお勧めする糖質制限食は、ごはんやパン、麺類などの主食(糖質)を少なめにして、肉、魚、豆類、野菜などおかずを多めに食べて、糖質の摂取量を減らす食事法です。糖質の摂取量を減らすことで、血糖値の上昇を抑え、糖尿病の改善、予防に結びつきます。
 糖質を取り過ぎて血液中にブドウ糖が残ると、余った糖は中性脂肪として脂肪組織にため込まれ肥満を招きます。しかし、糖質を少なめにすれば、糖のだぶつきがなくなると同時に、ため込んだ脂肪はエネルギーとして燃やされるので、肥満の予防・解消につながります。

 私が勤務する新潟労災病院では、肥満外来とダイエット入院の場で、糖質制限食を取り入れ、糖尿病や肥満の予防に努めています。2010年よりスタートし、これまでに約500人ほどの患者さんに実践してもらいました。

 結果は顕著で、患者さんの血糖値が下がり、肥満も改善しています。これについては、2015年10月に名古屋で行われた、第36回日本肥満学会で発表しました。当院で行った研究をご紹介しましょう。
 2012年から2015年までの間に、当院の肥満外来を受診した人のうち、BMI(肥満度の判定方法の一つで、25未満が標準)が25~40kg/m2、ヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖値がわかる数値で、正常値は6・5%未満)が5・0~8・0%の範囲内にあり、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)の薬物療法を行っていない60名の患者さんを対象にしました。

 この人たちをランダムに次の3群に分け、カロリー制限食と糖質制限食の効果を比較し、1年間観察を行いました。

①カロリー制限群(19名)
 外来でカロリー制限の指導を行った群です。
 カロリー制限食は、基礎代謝基準値×標準体重kg×身体活動レベル指数という計算式を用いて、患者さんそれぞれの1日の摂取エネルギー(kcal)を算出しました。
 なお、摂取エネルギーの3大栄養素のバランスは、糖質60%、脂質20%、たんぱく質20%としました。

②糖質制限外来群(20名)
 外来で糖質制限の指導を行った群です。糖質制限食は、1日の糖質摂取量を120g以下に制限するのみで、たんぱく質、脂質の制限はありません。

③糖質制限入院群(21名)。

 1週間、糖質制限のダイエット入院を行った群。入院期間中、糖質制限食の栄養指導、糖質制限の知識に関する研修、糖質制限の理解度をチェックするテストなどを受けます。食事の内容は、②と③は同じです。

腹囲や内臓脂肪コレステロール値も改善

 結果、効果に歴然の差が出ました。
 まず、12ヵ月後の体重減少の平均は、カロリー制限群が4・6kgだったのに対し、糖質制限の外来群は8・5kg、入院群は13kgでした。カロリー制限に比べ糖質制限のほうが、減量効果は明らかに高いといえます。

 次に、空腹時血糖値は、カロリー制限群が1・3mg/dl下がったのに対し、糖質制限外来群は4・5mg/dl、入院群では8・8mg/dlの改善が見られました。
 ヘモグロビンA1cは、カロリー制限群の差は0%で変化はなく、糖質制限外来群は0・4%、入院群が0・7%の低下で、糖質制限群で顕著に減少しました。
 また、その他の数値でも、特筆すべき結果が得られました。

 中性脂肪値は、カロリー制限群が11・9mg/dl低下だったのに対し、糖質制限外来群では31・4mg/dl、入院群では48・4mg/dl低下と、カロリー制限群と比較して、糖質制限群で大きな改善傾向が見られました。
 腹囲や内臓脂肪値、皮下脂肪値やコレステロール値など、全検査項目においても、カロリー制限食に比べ、糖質制限食のグループが有意に改善する結果となりました。
 糖質制限入院群が外来群に比べ、すべての項目で改善効果が高いのは、入院中の研修が功を奏したと思われます。

 このように、糖尿病の改善や予防ができるだけでなく、ダイエットにも役立つ糖質制限食は、誰でも簡単に自宅で取り入れることができます。
 これを行えば、いつまでも健康を保ち、ごはんやパン、麺類を食べる楽しみを長く持ち続けることができるのです。

解説者のプロフィール

前川 智
2001年、産業医科大学医学部医学科卒業。神戸労災病院等を経て、2011年より現職。新潟労災病院内視鏡診療センター長。内視鏡的胃内バルーン留置術を得意とし、胃ガンや大腸ガンの内視鏡治療の実績も多数。新聞やテレビの出演を通し、病気予防の啓蒙に努めている。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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