“生”で納豆やサラダに“かける”と良い

免疫力を高めるのに重要な「油」
あらゆる病気に関係する免疫。その免疫を高めるうえで、特に重要なのが「油」のとり方です。なぜなら、私たちの体のすべての細胞膜(細胞を取り囲む膜)は、油(脂肪酸)でできているからです。質の悪い油をとっていると、細胞膜が酸化して硬くなり、バリア機能が落ちて、細菌などの侵入を阻止できなくなるのです。
免疫力を高めるためにとるべき油、控えた方がよい油とは
では、免疫力を高めるためにとるべき油、控えたほうがよい油とは、どのようなものでしょうか。 まず、油は大きく分けて2種類あります。一つは飽和脂肪酸。これは主に動物油で、常温では固まっています。漢字で表記すると、「脂」と書きます。もう一つは不飽和脂肪酸。これは植物油と魚油で、常温では固まらない液体です。漢字表記は「油」です。 固まった脂は、皮下脂肪やコレステロールとして、体内に残りやすくなります。一方、液体のサラサラとした油は、細胞膜にとり込まれやすくなります。 液体の不飽和脂肪酸は、炭素の二重結合の数によって、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分かれます。さらに、一価はオレイン酸(オリーブ油など)、多価はオメガ6系のリノール酸(サラダ油など)と、オメガ3系のαリノレン酸(アマニ油、エゴマ油、魚油など)に分類されます。 生体にとっては、これらの油をバランスよくとることが大切ですが、今の日本人は、リノール酸をとりすぎています。 巷にあふれるファストフードやインスタント食品、油で調理したスナック菓子には、リノール酸が大量に含まれています。市販のお総菜、飲食店や家庭で調理に使われる油も、ほとんどがリノール酸を主成分としたサラダ油です。これらの油(多価不飽和脂肪酸)は、酸化しやすいという欠点があります。 戦後、コレステロール対策としてリノール酸を積極的にとるよう食事指導が行われたこと、また、コストの安さと便利さを求めた結果が、リノール酸過多の現状を招いているのです。
リノール酸は、体内に入るとアラキドン酸に変化します。アラキドン酸は炎症を誘発する物質です。特に、腸管の細胞膜はダメージを受けやすく、腸の働きが悪くなると全身の免疫力が低下します。
そのため、リノール酸をとりすぎると、難治性の腸疾患であるクローン病や潰瘍性大腸炎、アレルギー疾患、アトピー性皮膚炎、動脈硬化、ガンなどの病気へとつながるのです。脳細胞も脂肪酸でできているため、脳の働きが低下して、認知症やうつなども招きます。
とりたい油

避けたい油

トランス脂肪酸は体にどんどんたまる!
しかも、市販されている食品に含まれているのは、ほとんどがリノール酸(安いサラダ油)に、さらに化学処理を施して作られた「トランス脂肪酸」です。これは、本来液状である油を使いやすいように固形化し、バターやラードの代用として製造コストをおさえるために作られた、自然界にない油です。化学式は、プラスチックと酷似しているのです。
プラスチックを地中に埋めても永遠に消えないのと同様に、トランス脂肪酸も体内で分解されず細胞膜に蓄積されます。その結果、細胞膜が硬く変性して、バリア機能が低下し、さまざまな疾患の原因となるのです。
ドイツでは、トランス脂肪酸がクローン病の原因とされ、実質的に禁止となりました。米国のいくつかの州でも、使用が規制されています。しかし、日本では、そのような対応は全く見られません。
生はエゴマ油やアマニ油 加熱はオリーブ油を使う
一方、同じ多価不飽和脂肪酸でも、オメガ3系のαリノレン酸には抗炎症作用があります。無意識のうちにどんどんリノール酸が体内に入ってくる現代だからこそ、αリノレン酸を意識的に摂取して、バランスを取ることが必要です。
具体的には、家庭ではリノール酸を多く含むサラダ油(コーン油、紅花油、大豆油、ひまわり油など)の使用は、なるべく控えましょう。
トランス脂肪酸を極力摂取しないようにするには、マーガリンや市販のマヨネーズの使用もやめるべきです。
お菓子やパン、インスタント食品、冷凍食品、ドレッシングなどの原材料の表記にある、マーガリン、ショートニング、植物油脂、加工油脂、ファットスプレッドなどもトランス脂肪酸ばかり。できれば避けてください。
そして、αリノレン酸を多く含むエゴマ油、アマニ油を意識してとるようにします。ただし、これらも酸化しやすいので、必ず生でとってください。納豆に垂らしたり、サラダにかけたりしても、おいしくいただけます。
炒め物や揚げ物など、火を使う調理には、比較的酸化しにくい、一価不飽和脂肪酸のオリーブ油を使うとよいでしょう。
私の診療室では、自律神経免疫治療と、油を中心とする食事指導によって、クローン病の症状が軽快した例もあります。
アトピーやアレルギー、うつ、ガン、腸の病気の人は、特に、油の見直しは不可欠だと思います。