【名医に聞く】坐骨神経痛の治療法「寝るだけ・伸ばすだけ」簡単体操を紹介

【名医に聞く】坐骨神経痛の治療法「寝るだけ・伸ばすだけ」簡単体操を紹介

座骨神経痛、脊柱管狭窄症は、安静にしているときには症状が出ないことも多く「長く歩けない」「足がしびれる」という訴えから始まることがほとんどです。症状が出始めたら運動療法のセルフケアを行いましょう。【解説】松平浩(東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座特任教授) 


松平 浩
1992年、順天堂大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院整形外科助手、英国サウサンプトン大学シニアリサーチフェロー、関東労災病院勤労者筋・骨格系疾患センター長などを経て、現職に至る。福島県立医科大学医学部疼痛医学講座特任教授(兼務)。日本整形外科学会専門医。日本腰痛学会評議員(編集委員)。国際マッケンジー協会認定セラピスト。腰痛治療のスペシャリストであり、著書も多数。

脊柱管狭窄症は自力で改善できる!

 脊柱管狭窄症は、安静にしているときには症状が出ないことも多く、「どうも長く歩けない」「たまに足がしびれる」という訴えから始まることがほとんどです。

 しかし、背骨の中を通る神経が圧迫を受けた状態が長く続くと、神経が疲弊し、重症化する危険性があります。肛門や性器周辺が熱くなったり、尿が出にくくなったりした場合は、かなり症状が進んでいると考えられ、すぐに治療が必要です。

 手術や投薬、通院などは、できれば避けたいものでしょう。脊柱管狭窄症は、重症化する前ならば、自力で症状を改善することができます。

 症状が出始めたら、もしくは、診断を受けたら、日ごろから簡単なセルフケアを行いましょう。

坐骨神経痛、間欠性跛行も改善できる

①弱っている神経を開放し患部の血流をアップする「足下げリラックス」

 今回は、私が多くの患者さんに勧め、成果を上げている方法をご紹介します。

 続けて長く歩けない「間欠性跛行」や、お尻から下肢にかけてしびれや痛みが出る「座骨神経痛」が現れたら、脊柱管を通る神経が弱っているサインです。できるだけ神経を解放する時間を取り、回復を図りましょう。

 症状が出たら、必ず行ってほしいのが、イスに両足をのせる「足上げリラックス」です(下記参照)。

 最低30分を1日2回、2週間続けましょう。

「足上げリラックス」のやり方

 神経の圧迫を取るのが目的なので、これ以上長く、多く行ってもけっこうです。飽きないように、音楽やラジオを聴きながら行うといいでしょう。

 あおむけになってイスに両足をのせることで、腰部の脊柱管が少し広がり、神経の圧迫が緩みます。神経の血流はアップして酸素の循環がよくなり、痛みの改善が期待できます。

 なるべく高い枕を使用すると、より前かがみになるので、狭窄部分が広がりやすくなり、さらに効果的です。

 ときどき足首を動かすことで、足のむくみを解消する効果も得られます。
 夜寝るときも、クッションや座布団をふくらはぎの下に置き、ひざから下の部分を高くすることをお勧めします。できるだけ長い時間、腰部の神経を解放したほうがいいからです。

②鎮痛効果のある脳内物質を分泌させる「自転車こぎ」

 次に、脊柱管狭窄症の症状を和らげる簡単な運動をご紹介します。

 下肢のしびれや痛み、間欠性跛行が出ているときは、なかなか運動する気になれないかもしれません。しかし、症状の緩和や悪化防止に、ぜひ行ってほしい運動があります。

 意外かもしれませんが、「自転車こぎ」です。

 自転車をこぐときは、前かがみの姿勢になるでしょう。この姿勢で足を動かすと、腰の神経への圧迫を減らした状態で、有酸素運動をすることができるのです。

 少し汗ばむくらいの負荷をかけ、有酸素運動を20分以上継続すると、鎮痛効果のある脳内物質がほどよく分泌されることがわかっています。この点からも、自転車こぎは、脊柱管狭窄症の痛みを軽減する方法として有効なのです。

 とはいえ、足腰に不安を抱えながら、自転車で外を走るのは心配でしょう。いちばんお勧めなのは、スポーツジムなどにある、自転車エルゴメーター(自転車型の運動器具)です。専用の器具なので、転倒の心配もなく、安全です。

 近隣にそうした施設がない場合は、自宅で自転車のスタンドを立てたまま、こいでもいいでしょう。ただし、安全には十分留意してください。

③症状が良くなってきたら行う「アームレッグレイズ」

「足上げリラックス」と「自転車こぎ」で、症状がよくなってきたら、インナーマッスル(深層筋)を鍛えながら、背骨の並び(姿勢)を正すことも大切です。

 前かがみの姿勢ばかり取っていると、ネコ背になり、腰痛を起こすおそれがあります。正常な背骨は、首(頸椎)から腰(腰椎)まで、緩やかなS字カーブを描いています。この形をキープできていれば、腰への負担は最小限になります。

 ところが、ネコ背や前かがみの姿勢が続くと、背中の筋肉が必要以上に緊張・収縮して、腰への負担が大きくなり、S字カーブがくずれてしまうのです。背骨の美しいS字カーブを作るには、骨盤がほんの少しだけ前傾した状態が理想的です。
私は、この姿勢を「美ポジ」(ビューティフル・ポジションの略)と名づけました。

 美ポジ を保つために大切なのは、背骨を支え、体幹を構成している腹横筋や多裂筋などのインナーマッスルです。これらの筋肉を日常的に刺激し、強化することで、脊柱管狭窄症の予防・改善に役立ちます。

 今回は、「アームレッグレイズ」という筋トレをご紹介しましょう(下記参照)。

「アームレッグレイズ」のやり方

①床によつんばいになり、背すじを伸ばす。

②右手と左足を床と水平になるように伸ばして、10秒間キープ。
いったん手足を下ろし、反対側も同様に行う。左右交互に3回ずつを1セットとし、1日3セットを目標にする。
※症状が落ち着いたら、3日に1度程度行いましょう。

 アームレッグレイズは、その名のとおり、腕(アーム)と足(レッグ)を持ち上げた(レイズ)姿勢を取る筋力トレーニングです。背骨を安定させる筋肉を、効率的に鍛えることができます。

 やり方は簡単です。
 床によつんばいになり、背すじを伸ばします。次に、右手を床と水平に自然に伸ばし、左足も腰の高さで伸ばして、10秒間キープしましょう。

 いったん手足を下ろし、今度は反対側の手足で同様に行います。左右交互に3回ずつ行うのを1セットとし、1日3セットを目標にしましょう。慣れてきたら、左右30秒間キープを目指してください。

 この筋トレを行うのは、3日に1度程度でもかまいませんが、多少「きつい」と感じるくらい行うと、高い効果を得られます。がんばりましょう。

 以上に紹介した姿勢や簡単な運動を実行し、脊柱管狭窄症による痛みやしびれの改善に役立ててください。

美しい姿勢を保てる!

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


老廃物をグイグイ流して血流を改善「足の指刺激」のやり方

老廃物をグイグイ流して血流を改善「足の指刺激」のやり方

私は若い頃から拳法で鍛え、道場で拳法家の育成にも努めています。30代前半までは、仕事に、拳法にと精力的な日々を送っていましたが、30代後半になると、とたんに肩こりや座骨神経痛など、さまざまな痛みが生じるようになりました。【解説】原田秀康(国際足健法協会会長)


脚やせ運動「股関節回し」でむくみスッキリ!腸腰筋を鍛える10のメリット

脚やせ運動「股関節回し」でむくみスッキリ!腸腰筋を鍛える10のメリット

股関節は、上半身と下半身をつなぐ関節ですから、ここが硬いと体全体がゆがみます。その結果、ネコ背や腰痛、肩こり、頭痛、関節の痛みなどが生じてくるのです。股関節の可動域を広げるためには、股関節周辺の筋肉を柔軟にすることがたいせつです。【解説】谷口光利(日本ボディーケア学院学院長)


鎮痛剤が効かない痛みの原因は神経の誤作動!耳さすりで正常な状態に戻すとよい

鎮痛剤が効かない痛みの原因は神経の誤作動!耳さすりで正常な状態に戻すとよい

私のクリニックには1日に100人以上の患者さんがいらっしゃいます。患者さんの中には、「消炎鎮痛剤を飲んでも痛みが引かない」「手術を受けたのに痛みがずっと続いている」と訴える人が少なくありません。骨や筋肉の器質的な異常や炎症ではなく、神経が誤作動を起こしている場合が多いのです。【解説】小田博(おだ整形外科クリニック院長)


股関節と腰の痛みを取る対策を紹介!運動療法「エゴスキュー体操」で歪みをとろう

股関節と腰の痛みを取る対策を紹介!運動療法「エゴスキュー体操」で歪みをとろう

痛みや病気を治すために生まれた運動療法「エゴスキュー体操」を知っていますか。病院やクリニックでの運動療法として、エゴスキュー体操を取り入れている医師も少なくありません。内科医や痛みの専門医が、股関節痛、腰痛、脊柱管狭窄症などの患者さんに勧めているのです。【解説】水野加津人(エゴスキュージャパン代表)


【風邪・喉の痛み】“梅仙人”が実践する健康法 「梅干しの黒焼き」

【風邪・喉の痛み】“梅仙人”が実践する健康法 「梅干しの黒焼き」

明治生まれの祖母は、のどが痛いときやカゼのひき始めには、梅干しを焼き網で焼いて、熱いお茶を注いで飲むと治ると話していたことも思い出しました。そこで私は、かつて祖母から伝え聞いた記憶を頼りに、梅干しの黒焼きを自分で作ってみようと考えたのです。【体験談】永井恒雄(梅生産者・77歳)


最新の投稿


女性のための簡単筋トレダイエット【バストアップ・二の腕やせ】のコツ

女性のための簡単筋トレダイエット【バストアップ・二の腕やせ】のコツ

「手合わせ筋トレ」は、手のひらを合わせて全力で押し合うだけの、シンプルな筋トレです。動きは簡単ですが、筋肉を意識しながらゆっくり行えば、大きなトレーニング効果が得られます。最初はあまり変化を感じないでしょう。しかしそこを過ぎると、体は目に見えて変わっていきます。【解説】岡田隆(バズーカ岡田・日本体育大学准教授)


昆布酵母のおかげで減塩でも美味しい!薄味で胃腸に優しい手料理に家族が大満足

昆布酵母のおかげで減塩でも美味しい!薄味で胃腸に優しい手料理に家族が大満足

私は食べ歩きが好きで、おいしい物やお店を、インターネットで探すことがよくあります。ウエダ家さんの酵母パンを見つけたのも、インターネットでした。「油も砂糖も使わない天然酵母パン」に興味がわき、すぐにウエダ家さんのパン作り講座に通い始めました。もう10年になります。【体験談】多羅裕子(62歳・主婦)


脳が活性化する親指の体操で明るく前向きになれる!意欲がわいてくる!

脳が活性化する親指の体操で明るく前向きになれる!意欲がわいてくる!

親指刺激を行っているうちに、手の動きと脳の働きが同時によくなり、薬の管理がうまくできるようになったというお年寄りもいます。認知症に関する効果だけでなく、肩こりや冷えが軽減した、姿勢がよくなったという人も多いのです。【解説】長谷川嘉哉(認知症専門医)


巻き爪を予防する「正しい爪の切り方」深爪やバイアスカットが陥入爪も招く

巻き爪を予防する「正しい爪の切り方」深爪やバイアスカットが陥入爪も招く

フットケア外来を開設して驚いたのは、ほとんどの患者さんが正しい爪の切り方を知らないことでした。巻き爪や陥入爪(巻いた爪が皮膚に食い込む状態)といった爪のトラブルを防ぐには、スクエアカットといって、爪を̻四角に切ります。絶対してはいけないのが深爪とバイアスカットです。【解説】高山かおる(済生会川口総合病院皮膚科主任部長)


老廃物をグイグイ流して血流を改善「足の指刺激」のやり方

老廃物をグイグイ流して血流を改善「足の指刺激」のやり方

私は若い頃から拳法で鍛え、道場で拳法家の育成にも努めています。30代前半までは、仕事に、拳法にと精力的な日々を送っていましたが、30代後半になると、とたんに肩こりや座骨神経痛など、さまざまな痛みが生じるようになりました。【解説】原田秀康(国際足健法協会会長)