血糖値は250ミリを超え、入院を勧められた
かつての日本では、糖尿病はまれな病気でした。しかし、2016年には、糖尿病が疑われる成人の推計数が1000万人を超えました。これは、厚生労働省の調査で判明したもので、いまや、糖尿病は国民病といえるでしょう。実は、かくいう私も、10年来、糖尿病に悩んできました。
最初に糖尿病を指摘されたとき、ヘモグロビンA1c(過去1~2ヵ月の血糖状態がわかる指標。基準値は4・6~6・2%)が、なんと12%もあったのです。本来、110㎎/㎗未満でなければならない血糖値にいたっては、250㎎/㎗を超えていました。
こんな結果になったのは、当時仕事が大変忙しく、検査をする時間がなかったからです。さらに、いわゆる糖尿病の自覚症状とされる、口の渇きや頻尿、体のだるさといった症状が、全く感じられませんでした。
気づかないうちに、どんどん悪化してしまったわけです。医師も驚いて、すぐに入院するよう勧めました。しかし私は、仕事の関係で休むわけにはいきませんでした。そこで、薬や食事療法などを併用して治療に当たったのです。その後、ヘモグロビンA1cは、なんとか8%台までは下がりましたが、それ以下にはどうしても下がらなくなりました。それが今から5年ほど前の状況でした。
しかしその後、私の数値はゆっくり下がり始めます。そして、ついにヘモグロビンA1cは7%を切り、6%台になり、ほぼ正常値になりました。薬をいくら使っても、8%は切れませんでしたから、この成果の理由は別のところにあるのです。
それは、私の専門であるツボ刺激です。手の甲にあるツボを刺激することで、数値が大幅に改善しました。
東洋医学においては、生命エネルギーの一種である気があるとされています。その気の通り道が経絡です。経絡は全部で14本あり、そのうち糖尿病は、肺経、腎経、脾経という3本の経絡が関連しています。
また、東洋医学では糖尿病は、「消喝」といわれ、渇きの病であると考えられています。腎が熱を発して肺に熱がこもると、体に微熱が生じてほてるようになります。その結果、糖尿病の自覚症状としてよく知られている、のどの渇きや多飲、多尿などの症状が現れてくるのです。
こうした症状にいいとされるのが、手の親指のつけ根にある「魚際」というツボを刺激することです。
魚際のツボ刺激のやり方

肺にこもる熱を抑えて糖尿病の不定愁訴を解消
魚際の位置を確認しましょう。親指のつけ根のふくらみの上で、手のひらと手の甲の境目です。少しくぼんだところに魚際があります。
まず、左手の親指を右手の4本の指でつかみます。そして、右手の親指を魚際に当てて、五つ数えながら押し込み、ゆっくり離します。同じように右手の魚際も刺激して、左右合わせて3分程度行うといいでしょう。入浴中に行うと、より効果的です。
魚際は、肺経に属するツボです。ここを毎日刺激するうちに、肺経の気の流れがよくなるので、肺にこもった熱を抑え、糖尿病に伴うさまざまな不定愁訴が解消していくでしょう。
また、魚際と合わせて、いっしょに刺激するといいゾーンがあります。手の甲の指の骨(中手骨)と骨の間を観察してみてください。糖尿病のかたは、そこを通る血管がぷっくりとふくらんでいるのではないでしょうか。これは、消化器点と呼ばれる、糖尿病に対応するゾーン(反射区)と考えられます。
臓器などに悪いところがあると、それに対応した手足の特定部分に反応が現れます。そのゾーンを反射区と呼びます。その反応が現れているゾーンを刺激することで、不調を起こしている元の臓器などによい影響を与えることができるのです。
この場合もそうです。手の甲にふくらんだところが見つかったら、その盛り上がりを押しもみしてみましょう。嫌な痛みがあるはずです。もんでいるうちに、その嫌な感じがなくなってきます。それが解消の一つの目安になります。魚際と並んで、このゾーンも刺激するといいでしょう。
ここでご紹介した手の甲への刺激に加えて、食事療法や運動療法も組み合わせれば、より大きな成果が得られると思います。私の場合は、食前にキャベツをとる習慣を続けた結果、血糖値もほぼ正常値の辺りで推移しています。糖尿病でお悩みのかたは、ぜひ魚際のツボ刺激をお試しになってください。

体験者でもある佐藤先生