【男性の尿トラブル】骨盤湯たんぽや8000歩の速歩きで解決できる

【男性の尿トラブル】骨盤湯たんぽや8000歩の速歩きで解決できる

男性の尿トラブルは、主に前立腺の異常によって起こります。40〜50代では、細菌感染や血行不良で前立腺が炎症を起こしてむくむ「前立腺炎」が多く、60代以降になると前立腺が大きくなる「前立腺肥大症」が圧倒的に多くなります。【解説】奥井識仁(よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニック院長) 


解説者のプロフィール

奥井識仁
1965年、愛知県生まれ。東京大学大学院修了後、ハーバード大学ブリカム&ウイメンズ病院にて手術を学ぶ。2009年、よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニックを開院。骨盤臓器脱が専門で、年間約300件の日帰り手術を行う。著作、論文多数

前立腺のむくみを取るには血流をよくすること

 男性の尿トラブルは、主に前立腺の異常によって起こります。
 40〜50代では、細菌感染や血行不良で前立腺が炎症を起こしてむくむ「前立腺炎」が多く、60代以降になると前立腺が大きくなる「前立腺肥大症」が圧倒的に多くなります。

 前立腺が肥大している人のなかで、排尿に支障があって治療を必要とするのは、全体の4分の1程度です。
 しかし前立腺が大きくなって尿道が圧迫されれば、当然排尿障害が起こってきます。前立腺肥大症は大きく3期に分かれ、前立腺が大きくなるにつれて、症状も進行していきます。

 1期は、前立腺がそんなに大きくなっていない段階です。尿道への圧迫もあまり強くありません。症状としては、「頻尿」があり、就寝後もトイレに起きる「夜間頻尿」も始まります。急に尿意を催す「尿意切迫感」、排尿時間が長くなる「排尿遅延」なども起こります。

 2期になると、前立腺の肥大は中程度に進み、尿道への圧迫が強くなります。排尿後もスッキリしない「残尿感」や、一時的に尿が出なくなる「急性尿閉」「血尿」「排尿痛」などの症状が出てきます。

 3期になると、前立腺の肥大が大きくなり、尿道がかなり圧迫されます。膀胱にたまった尿がもれる「溢流性尿失禁」や、尿が出なくなる「尿閉」、尿が腎臓へ逆流する「水腎症」などを起こすこともあります。

 また、前立腺肥大症が過活動膀胱(膀胱が過剰に収縮し急に強い尿意が起こる症状)と合併すると、頻尿や尿もれの症状がより強くなります。
 男性の尿トラブルの最大の原因である前立腺肥大症は、前立腺がむくんでいるだけですから、そのむくみを取れば、尿トラブルを抑えたり、症状を緩和できたりします。

 では、むくみを取るにはどうしたらいいのでしょうか。それにはまず、血流をよくすることです。
 むくんで大きくなった前立腺には、活性酸素が多く、一酸化窒素(NO)が減っています。NOは血管の内皮細胞から分泌される善玉物質で、血管を拡張したり、血液をサラサラにしたりして血流を促進する働きがあります。そのNOが減るせいで、血流が悪くなり、前立腺がむくみやすくなるのです。

 このむくみを取る薬が、ED治療薬のシアリスから生まれた「ザルティア」です。ED治療薬を服用するとNOが増え、血流がよくなってテストステロン(男性ホルモン)が増加します。ザルティアは、ED治療薬の半量を改良して作った、初期の前立腺肥大症に処方する薬なのです。
 このことからわかるのは、血流をよくしてテストステロンが増えれば、前立腺のむくみが取れる可能性があることです。

薬を増やさずに済み 前立腺ガンの転移も抑制

 前立腺の血流をよくするために、私が患者さんに勧めているのが、次の三つです。

❶湯たんぽで骨盤を温める

 骨盤が冷えると、下半身の血流が悪くなり、前立腺がむくみやすくなります。そこで、湯たんぽで骨盤周辺を温めます。
 起床時と就寝前、布団の中で30分間、湯たんぽを恥骨からへその下辺りに当てます。こうして骨盤を温めると下半身の血流がよくなり、昼間や夜間の頻尿が抑えられます。
 最近は、電子レンジで温めるだけで使える物も市販されています。おなかにのせるには、そうした便利で軽い湯たんぽを使うのもいいでしょう。

❷スロースクワット

 下半身の筋肉を使った、有酸素運動です。ゆっくりしゃがみ、ゆっくり立ち上がることによって、筋肉が太くなり、下半身の血流がよくなります。

❸1日8000歩の速歩き

 1日8000歩の速歩きを、月20〜25日行います。速歩きの速度は、少し息がはずむ程度です。こうした有酸素運動で下半身を鍛えれば、下半身の血流が増加し、前立腺がむくみにくくなります。
 私の研究や、ハーバード大学、東京都健康長寿医療センターの研究でも、1日8000歩の速歩きが健康・長寿にいいことがわかっています。
 私は尿トラブルのある患者さん全員に万歩計を渡し、歩いた記録をつけてもらっています。その結果、前立腺ガンの患者さんは転移が抑えられ、前立腺肥大症の患者さんは薬を増やさずに済んでいます。
 なお、ひざや腰が痛くて歩けない人は、無理をしないでください。年齢に応じた速度や距離でいいと思います。ただし、まだ60代で元気な人は、ぜひ1日8000歩の速歩きを実践してください。
 

前立腺肥大症の予防・改善にお勧めの3対策

私が提唱した三つの方法は、いずれも血流をよくしてテストステロンを増加させる効果があります。それによって前立腺が小さくなる可能性があり、前立腺肥大症だけでなく、前立腺ガンの予防にも有効です。ぜひ実行してください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この健康情報のエディター

関連する投稿


夜間頻尿にはむくみ対策が有効!下半身に溜まった水分を流す「足上げ」ポーズ

夜間頻尿にはむくみ対策が有効!下半身に溜まった水分を流す「足上げ」ポーズ

スウェーデンの研究期間が行った調査では、夜間頻尿のある人はそうでない人に比べて、心筋梗塞や脳梗塞(心臓や脳の血管が詰まって起こる病気)にかかりやすく生存率が低いことも確認されています。夜間頻尿の原因は「むくみ」にあるのです。その対策法を紹介します。【解説】菅谷公男(北上中央病院副院長)


頻尿・尿もれを改善する男の骨盤底筋体操「ながら肛門締め」のやり方

頻尿・尿もれを改善する男の骨盤底筋体操「ながら肛門締め」のやり方

50~60代以上の中高年男性に多く見られる前立腺肥大症という病気をご存じでしょうか。前立腺は精液を作る場所で、膀胱の下部、尿道を囲むように存在する臓器です。健康な人の前立腺はクルミ大のサイズですが、40代半ばからこれが硬くなり、それから徐々に大きくなっていくといわれています。【解説】持田蔵(西南泌尿器科クリニック院長)


くしゃみで尿が漏れる 対策はミネラルバランスを整える“50℃”の味噌汁

くしゃみで尿が漏れる 対策はミネラルバランスを整える“50℃”の味噌汁

私が主宰する料理教室では、身近な食材を使って、健康で美しい体を作る知識と調理方法をお伝えしています。その中で重要なカギとなっているのが、「酵素」です。酵素は、体内で起こるさまざまな化学反応を促進する物質です。【解説】人見惠子(ミレット・スタイル代表)


【夜間頻尿】原因は「足のむくみ」たまった水分を排出させる生活習慣4

【夜間頻尿】原因は「足のむくみ」たまった水分を排出させる生活習慣4

夜、眠りについた後に、排尿のために1回以上起きなければならず、そのことで日常生活に支障をきたしている状態を「夜間頻尿」といいます。実は、あまり知られていませんが、夜間頻尿の原因として「足のむくみ」が関係していることもあるのです。【解説】高橋悟(日本大学医学部附属板橋病院副病院長・泌尿器科部長)


【頻尿】予防・改善する食材は「シナモンミルク」がお勧め 夜間頻尿の対策は?

【頻尿】予防・改善する食材は「シナモンミルク」がお勧め 夜間頻尿の対策は?

中高年になると、頻尿に悩まされる人が多くなります。頻尿は、前立腺肥大や膀胱炎、過活動膀胱など、泌尿器系の病気が関係していることもありますが、主な原因として挙げられるのが、体の冷えと腎機能の低下です。【解説】関口由紀(女性医療クリニックLUNAグループ理事長)


最新の投稿


脊柱管狭窄症の足のしびれと痛みが解消した!81歳現役シェフの11円スリッパ体験談

脊柱管狭窄症の足のしびれと痛みが解消した!81歳現役シェフの11円スリッパ体験談

最初は半信半疑でしたが、藤井先生に勧められたとおり、常に中敷きを入れて、靴をはくようにしました。そうして1ヵ月ほどたったころでしょうか、自分でも「あれほどつらかったのは、一体なんだったのだろう? 」と感じるくらい、その後はひざの痛みに悩まされることはなくなりました。【体験談】藤田正義(オーナーシェフ・81歳)


食欲がない原因は「位置」!胃を上げる体操で飲みこみやすさがアップする理由

食欲がない原因は「位置」!胃を上げる体操で飲みこみやすさがアップする理由

子どものころ、立てひざでご飯を食べて叱られた。そんな思い出はありませんか。「立てひざで食事」は、一般常識ではマナー違反とされています。しかし実は、誤嚥の予防にとてもいい姿勢なのです。お勧めなのが、食事の前に胃の位置を上げておくこと。それを簡単に行える体操が「右足首の内回し」です。【解説】浜田貫太郎(浜田整体院長)


【野球肘】肩が痛い ひじが痛い 症状を改善・予防するストレッチの方法

【野球肘】肩が痛い ひじが痛い 症状を改善・予防するストレッチの方法

体の柔軟性を保つには、ストレッチを行うことが重要です。練習や試合のあった日はもちろん、休養日にも必ずストレッチを行い、柔軟性を保ちましょう。前項のチェックで硬さがあった場合はもちろん、硬さがなくてもストレッチは必ず行ってください。【解説】山本智章(新潟リハビリテーション病院院長)


注目のシンバイオティクス!発酵あんこは腸内環境を改善する効果がある

注目のシンバイオティクス!発酵あんこは腸内環境を改善する効果がある

発酵あんこの魅力は、それが「シンバオイティクス」であることです。シンバイオティクスとは、腸の善玉菌を増やすなど、人体によい影響を与える有用菌と、そうした菌のエサになる、食物繊維やオリゴ糖などをいっしょに取ることです。【解説】関由佳(内科医・味噌ソムリエ・メディカルフード研究家)


【腰痛の原因】食べすぎやストレスによる肝臓疲労 対策は「足首回し」

【腰痛の原因】食べすぎやストレスによる肝臓疲労 対策は「足首回し」

腰痛や肩こりは、体のゆがみによって起こります。その原因を探ると、なんと約8割の人は、肝臓に疲労がたまっていることが、私の長い施術経験からわかりました。肝臓の疲労のしかたによって、体は右肩上がりになったり、左肩上がりになったりします。それが、痛みの原因になるのです。【解説】田川直樹(快風身体均整院院長)