MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
ミカンは糖尿の原因ではない!糖尿病発症リスクを6割減らす

ミカンは糖尿の原因ではない!糖尿病発症リスクを6割減らす

「果物は糖分や果糖が多いので糖尿病の原因になる」そう聞いたことがある人は多いでしょう。糖分が気になるので、「ミカンは食べない」という人もいるかもしれません。しかしこれは根拠のないいわば「風評」です。ミカンが糖尿病に与える影響を、きちんと調べたいと考え、二十数年前に研究を開始しました。【解説】矢野昌充(農学博士)

ミカンを食べる人ほど糖尿病が少ない!

「果物は糖分や果糖が多いので、糖尿病の原因になる」。そう聞いたことがある人は多いでしょう。
糖分が気になるので、「ミカンは食べない」という人もいるかもしれません。

 しかしこれは、根拠のない、いわば「風評」です。
 そこで私たちは、ミカンが糖尿病に与える影響を、きちんと調べたいと考え、二十数年前に研究を開始しました。

 その際、心がけたのは、審査の厳しい欧米の医学雑誌にも掲載されるような、しっかりした研究を行うことでした。それでこそ、ミカンの風評を打破できると考えたからです。

 そこで、まずは、予備調査として、6049名の一般消費者を対象にアンケートを行い、ミカンを食べている頻度と、糖尿病の有病率を比較しました。
 すると、ミカンをよく食べている人ほど、糖尿病の人が少なく、毎日4個以上食べている人は、週に1〜3個以下の人のおよそ半分の有病率でした。

 次に、ミカンに含まれる有効成分に着目した研究を行いました。ミカンなどのカンキツ類に特徴的に多く含まれる有効成分として知られているのが「β‐クリプトキサンチン」です。

 これはβ‐カロテンなどと同じカロテノイドの仲間で、すぐれた抗酸化作用(体に有害な活性酸素を除去する作用)を持っています。

 しかも、構造上、多種類あるカロテノイドのなかでも、特に吸収されやすく、体内の蓄積時間も長いので、体のすみずみまで届いて作用します。

β‐クリプトキサンチンの血中濃度が重要

 β‐クリプトキサンチンの血中濃度は、ミカンを食べれば食べるほど、上昇します(下図参照)。


 私たち(農研機構果樹研究所、浜松医科大学)は、ミカンの産地として有名な静岡県浜松市三ヶ日町の協力者(30〜70歳の1073人)の中から、調査開始時に糖尿病と診断されていない人を対象に選び、平成15年から25年まで、10年間の追跡調査を行いました。

 全員のβ‐クリプトキサンチン血中濃度を調べて、血中濃度上位1/3、中位1/3、下位1/3にグループ分けし、10年の間にどのくらいの人が糖尿病を発症するかを調べたのです。

 β‐クリプトキサンチンの血中濃度は、ミカンの摂取量を反映しています。かつ、アンケート調査のように曖昧ではないので、この手法は、後に医学雑誌に掲載される際、高く評価されました。

 さて、10年後の平成25年に、糖尿病の発症率を見たところ、β‐クリプトキサンチンの血中濃度が低いグループ(ミカンの摂取が少ない人)では、糖尿病の発症率が高くなっていました。

 それに比べ、β‐クリプトキサンチンの血中濃度が高いグループでは、糖尿病の発症リスクが57%も抑えられていたのです。
 また、別の調査では、高血糖の人同士で比べても、β‐クリプトキサンチンの血中濃度が高いと、肝機能が正常に近い値に保たれやすいこともわかりました(※1)。

 高血糖の弊害の一つに、肝機能を低下させることがありますが、ミカンを積極的にとっていると、その弊害を抑える効果もあることがわかったのです。

 当初の目的どおり、以上の研究成果は、欧米の医学雑誌に掲載されました。
 この結果から、ミカンが糖尿病の原因になるというのは誤りで、むしろ適切な摂取は糖尿病の予防や悪化防止、改善に役立つといえます。

(※1)血中ALT値による判定:Sugiura et al.Diabetes Res Clin Pract. 2006 Jan;71(1):82-91.

オレンジ色が濃く味の甘いミカンがお勧め

 では、どんなミカンをどのくらい食べればよいでしょうか。 β‐クリプトキサンチンは、オレンジ色のミカンに含まれており、オレンジ色が濃いほど、また味が甘いほど多く含まれることがわかっています。

 できればそういうミカンを選んだうえで、目安としては1日3〜4個ほど召し上がるとよいでしょう。

 これは、研究結果から導いた目安ですが、糖尿病の食事療法でも、80kcalを上限に果物をとるほうがよいとされており、これに当てはめると、中くらいのミカンなら2〜3個となります。

解説者のプロフィール

矢野昌充
農学博士。農林水産省野菜試験場、果樹試験場で野菜や果実の流通技術に関する研究に取り組む。その後、農業・生物系特定産業技術研究機構果樹研究所カンキツ研究部上席研究官として「カンキツの健康効果に関する研究」等を企画立案し、コーディネーターとして推進。現在はアドバイザリーボード「フルーツ広場」にて、ミカンなどの果物の健康効果について啓発活動を行う。杉浦実氏との共著『みかんでぐんぐん健康になる本』(BABジャパン)がある。

この記事のエディター

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

関連するキーワード
関連記事
こうして手のひらを押していたところ、なんと今年3月の人間ドックではヘモグロビンA1cが6.3%と正常値にまで低下したのです。これで安心したのですが、私の母にはもっと凄い効果が表れました。インスリン注射を1日1回に減らせました。注射は体に大きな負担があるらしく、これには母も大喜びでした【体験談】小池幸子(会社員・56歳)
更新: 2019-03-19 18:00:00
主人の血糖値ですが、酢タマネギを食べ始めてわずか2ヵ月ほどで100mg/dlまで下がりました。服薬を続けても下がらなかったのに、酢タマネギを食べ始めてすぐに改善したことには驚きました。血圧も下がり、以前は降圧剤を飲んで最大血圧が200mmHgだったのが、今は130mmHg程度です。【体験談】伊林好子(主婦・76歳)
更新: 2019-02-22 18:00:00
マグネシウムは体内では合成できないため、必ず食品から摂取しなければいけない「必須ミネラル」の1つです。現代の日本人の食生活は、カロリーは満たされていても、マグネシウムが足りない『新型栄養失調』状態にあるのです。その結果、糖尿病や脂質異常症、肥満をきたしやすくなるのです。【解説】横田邦信(東京慈恵会医科大学客員教授)
更新: 2018-12-31 18:00:00
認知症というと高齢者の病気、と考える人も多いでしょう。近年、認知症は「脳の糖尿病」で生活習慣の改善で予防できることがわかりました。認知症は20~30代の頃の生活習慣、特に食習慣の結果でもあります。ですから早めに対処することが認知症予防には欠かせません。【解説】熊谷賴佳(脳神経外科専門医・認知症サポート医・京浜病院院長)
更新: 2018-11-12 18:00:00
ゴーヤに含まれる苦み成分の一つであるチャランチンには、インスリンと似た働きがあります。また、同じく苦み成分であるモモルデシンにも、血糖降下作用があることがわかっています。さらに、ゴーヤには糖代謝を活性化するビタミンB1や、糖の吸収を遅らせる食物繊維も豊富に含まれています。【解説】下津浦康裕(下津浦内科医院院長)
更新: 2018-10-20 12:00:00
最新記事
見たいものにピントを合わせる「目の調節力」は25歳を過ぎる頃からどんどん低下し、30代後半から近くが見えづらくなる老眼になってきます。目の疲れや調節力の低下を改善するためにお勧めなのが、目の周囲を温める「温熱療法」です。私は、温熱療法の効果を多くの実験で確認しています。【解説】高橋洋子(みたにアイクリニック院長)
更新: 2019-05-21 18:00:00
これまで、入院患者さん向けの、いわゆる「リハビリ体操」はありましたが、外来の患者さんが希望するような体操はありませんでした。そこで私たちは、血圧を上げる要因である、末梢の「血管抵抗」を減らす筋トレを考案することにしました。【解説】金子操(自治医科大学附属病院リハビリテーションセンター室長・理学療法士)
更新: 2019-05-21 17:53:18
「脊柱管狭窄症」「椎間板ヘルニア」などの改善のために行われる従来の脊椎手術は体への負担が大きく、後遺症が生じることもあります。そうした中、後遺症をほとんど残さない、新たな手術法が注目されています。【解説】白石健(東京歯科大学市川総合病院整形外科教授)【取材】山本太郎(医療ジャーナリスト)
更新: 2019-05-20 18:00:00
頭痛、肩こり、腰痛、生理痛、耳鳴り、めまい、うつ、眼瞼けいれん、味覚障害、高血圧、逆流性食道炎──。一見、脈絡なく感じられるこれらの症状は、実は「食いしばり」が元凶となって起こっているという共通点があります。患者さんたちに、私は「10秒、口を開けるくせをつけてください」とアドバイスをしています。【解説】吉野敏明(誠敬会クリニック銀座院長)
更新: 2019-05-19 18:00:00
慢性的なひざ痛の原因はさまざまですが、なかなか完治しにくい上、少し無理をすると痛みがぶり返すので、かなり厄介です。今回ご紹介する「ひざと足の裏の温冷・温温湿布」は、慢性的なひざ痛に対して、自宅で簡単に痛みを解消することができる方法です。【解説】岡田明三(神宮前鍼療所院長)
更新: 2019-05-18 18:00:00

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt