MENU
医療情報を、分かりやすく。健康寿命を、もっと長く。医療メディアのパイオニア・マキノ出版が運営
ミカンで骨が丈夫になる!骨粗鬆症のリスクが激減!

ミカンで骨が丈夫になる!骨粗鬆症のリスクが激減!

超高齢社会となった日本で対策が急がれている病気の一つが骨粗鬆症です。骨密度が低下して骨がもろくなるのが骨粗鬆症です。それによる骨折などは、要介護や寝たきりにつながるため、なんとしても防ぎたい病気です。骨粗鬆症対策として骨を強くする物質がミカンに含まれているのです。【解説】矢野昌充(農学博士)

解説者のプロフィール

矢野昌充
農学博士。農林水産省野菜試験場、果樹試験場で野菜や果実の流通技術に関する研究に取り組む。その後、農業・生物系特定産業技術研究機構果樹研究所カンキツ研究部上席研究官として「カンキツの健康効果に関する研究」等を企画立案し、コーディネーターとして推進。現在はアドバイザリーボード「フルーツ広場」にて、ミカンなどの果物の健康効果について啓発活動を行う。杉浦実氏との共著『みかんでぐんぐん健康になる本』(BABジャパン)がある。

ミカンをたくさん食べる人ほど骨が丈夫!

 超高齢社会となった日本で、対策が急がれている病気の一つが骨粗鬆症です。

 骨密度、つまり、骨に含まれるカルシウム濃度が低下して、骨がもろくなるのが骨粗鬆症です。それによる骨折などは、要介護や寝たきりにつながるため、なんとしても防ぎたい病気です。

 まだあまり知られていませんが、骨粗鬆症対策として、大きな力を発揮する物質があります。それは、ミカンに豊富に含まれているβ‐クリプトキサンチンです。

 β‐クリプトキサンチンは、β‐カロテンなどと同じカロテノイドの仲間で、ミカンに代表されるカンキツ類に多い特徴的な成分です。
 β‐クリプトキサンチンの血中濃度は、ミカンの摂取頻度に比例して高くなることがわかっています。
 私たちは、β‐クリプトキサンチンが骨粗鬆症に与える影響を調べるため、糖尿病と同様の方法で、骨粗鬆症になっていない人を対象に、追跡調査を行ったのです。

 協力者全員のβ‐クリプトキサンチン血中濃度を調べて、
①濃度上位1/3のグループ(ミカンを毎日4個程度食べる人に相当)
②濃度中位1/3のグループ(ミカンを毎日1〜2個食べる人に相当)
③濃度下位1/3のグループ(ミカンを毎日は食べない人に相当)
 に分け、平成17~21年までの4年間に、それぞれどのくらいの人が骨粗鬆症を発症するかを調べました。

 すると、β‐クリプトキサンチンの血中濃度が高い(ミカンをよく食べている)グループほど骨粗鬆症になる率が低く、③群の発症率に比べて、①群は92%も低く抑えられていました(下の図参照)。

骨の形成を促進し骨の破壊を抑制する

 骨細胞は、絶えず一定量が壊され、一定量が作られてバランスを保っています。作られる量より壊される量が多くなると、骨粗鬆症が起こります。
 高齢になると、このバランスが壊されるほうに傾くため、骨粗鬆症の危険が高まるのです。

 ミカンに豊富に含まれるβ‐クリプトキサンチンには、骨細胞が作られるのを促進し、壊されるのを抑制する作用のあることがわかってきました。
 被験者にミカンジュースを4週間飲んでもらってβ‐クリプトキサンチンの血中濃度を高めると、骨細胞の破壊が抑えられ、合成が高まることが確認されたのです(※1)。

 さらには、静岡県立大学薬学部と金沢大学薬学部の研究により、そのメカニズムも明らかにされました(※2)。 骨密度といえば、カルシウムやビタミンDの摂取も大切ですが、同時に積極的にミカンを食べることで、骨粗鬆症を効果的に防げるといえるでしょう。

(※1)Yamaguchi ら、J. Health Sci. 51, 738-743, 2005
(※2)Yamaguchi ら、J Biomed Sci. 2012 Apr 2;19:36、Ozaki ら、
  J Pharmacol Sci. 2015 Sep;129(1):72-7.

抗酸化作用や炎症を抑える作用が重要

 同じような方法で調査したところ、ミカンをよく食べる人は、動脈硬化症のリスクが45%抑えられることもわかっています。

 これは、β‐クリプトキサンチンのもつ抗酸化作用のほか、炎症を抑える作用が影響していると考えられます。動脈硬化は、動脈壁の炎症が深くかかわって起こりますが、β‐クリプトキサンチンには、それを抑える作用があるからです。

 このほか、同様にミカンを多く食べることで、肝臓の機能異常を起こすリスクは50%抑えられることもわかりました。

 また、脂質代謝の異常(高コレステロール血症や高中性脂肪血症など)を起こすリスクは、33%抑えられるという結果も出ています。

 ミカンは、オレンジ色が濃いほど、また甘いほどβ‐クリプトキサンチンを多く含んでいます。
 ここに挙げた効果を期待するには、できればそういうミカンを中心に、1日に目安として3〜4個食べるとよいでしょう。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

この記事のエディター
関連するキーワード
関連記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
これまで、疲労が起きるのは、「エネルギーがなくなるから」「疲労物質が筋肉にたまるから」と考えられてきました。しかし、最新の研究によって、疲労が起きるほんとうの理由は、「自律神経の中枢である、脳がサビつくから」ということが、わかっています。【解説】梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック院長)
症状の原因ははっきりとはわかりませんが人工透析を行う人には老若男女問わずよく現れるものです。これに薬で対応しようとすると体にもっと大きな負担がかかってしまいますし、副作用も心配です。少しでも患者さんの体に負担をかけずに症状をやわらげるのに「手のひら押し」が有効だと思っています。【解説】佐藤孝彦(浦安駅前クリニック院長)
東洋医学には五行思想というものがあり、人の体に起きるあらゆることは五臓につながっていると考えられています。涙がすぐに出るのは、「憂い、悲しむ」感情からです。 これは、五臓の中の「肺」の弱りから発する感情です。肺が弱い体質、もしくは肺が弱っているのかもしれません。【解説】田中勝(田中鍼灸指圧治療院院長)
最新記事
熱中症は7月8月の日中に最も多く見られます。熱中症は、乳幼児から高齢者まであらゆる年代で起こる病気です。なかでも高齢者は重症化する場合が多いのです。また服薬や持病のある方も熱中症にかかりやすいリスクがあるといえるでしょう。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
熱中症は私たちの日常生活の中での注意や工夫で予防することができます。たとえば、服装です。また、水分補給についても、実は「水分」だけを補給するのではいけません。そのほかに、エアコン等の空調の使い方のコツなどをご紹介します。【解説】大澤直人(高知大学医学附属病院老年病・循環器内科)
手洗いの時間の目安は、おおよそ30秒。次のような手順で洗っていくと、少なくともそれくらいの時間が必要であることが実感できるでしょう。
新型コロナウイルスには、まだ特効薬やワクチンはなく、感染しないための予防法を徹底することが重要です。自分一人ひとりができる感染症対策のポイントをチェックしてみましょう。
コンブを水に漬けて冷蔵庫で10日ほど発酵させ、乳酸菌と酵母を培養する「コンブ酵母」が話題になっています。コンブ特有のにおいが軽減し、旨みが濃くなるので、そのまま飲んでも、料理に使ってもよし!食生活に取り入れる人が急増中です。コンブ酵母の作り方と、コンブ酵母の活用レシピをご紹介します!【レシピ】COBOウエダ家

ランキング

総合ランキングarrow_right_alt
get_app
ダウンロードする
キャンセル