解説者のプロフィール
果実の皮こそ食べるべきもの
ミカンを皮ごと食べるようになったのは、15年ほど前からです。
果物の中でも、特にミカンは血糖値が上がりにくいので、肥満の予防によいといわれています。でも実は、果糖は普通のブドウ糖よりも脂肪になりやすいという特性があります。
そのため、果糖はある意味、肥満や糖尿病などの一因になる可能性は、普通のブドウ糖よりも高いともいえるのです。
とはいえ、「1個のリンゴは医者いらず」「ミカンはカゼの予防になる」など、果物のよさは昔から語り継がれています。
どうしてかなと思い、調べてみると、果物の皮にはポリフェノールという物質が入っていることがわかりました。
ポリフェノールというのは、抗酸化物質の一つです。
例えば、リンゴは皮をむくと酸化して茶色く変色しますが、皮をむかなければ変色しません。これが抗酸化作用です。
また、鳥が果実をつついても、皮は修復されますが、これは創傷治癒作用(傷を治す作用)です。
また、皮があるおかげで、実にカビや菌が進入しませんが、これは抗菌作用になります。
果実は、この三つの作用で、老化や病気から守ってくれているということがわかりました。
また、日本でよく食されている温州ミカンの皮は、昔から陳皮といって、漢方薬として使用されています。
キンカンは、皮ごと食べるとカゼの予防になるといわれているので、ミカンも皮ごと食べられないかなと思ったわけです。
それで試しにミカンを四つに割って口に入れてみたら、キンカンと同じ味ではありませんか。非常に食べやすいので、以来、ミカンを皮ごと食べるようになったというわけです。
ミカンを皮ごと食べるメリット

農薬やワックスも流水ですすぐだけで十分
皮ごと食べるというと、農薬を心配するかたもいますが、実際に使われている農薬は、消費者の手に届く頃には、ほとんど検出されないくらい低濃度になるようにしか使用されていません。なので、軽く水で洗うだけで農薬の影響はありません。
僕が思うに、皮ごと食べたことによって病気になった人なんていません。むしろ、皮を食べないことによって、病気になる人たちのほうが多いのではないでしょうか。
また、ミカンやリンゴの表面にはワックスがついているから体に悪いんじゃないかという意見もありますが、日本のミカンにはワックスはほとんどかけてありません。
ツヤツヤしているのは、ミカンから染み出してきた天然のワックスで、オレイン酸やリノール酸と呼ばれるものになります。まったく心配ありません。
インフルエンザ予防や美肌の効果も期待できる
ミカンを皮ごと食べるようになって、カゼをひきにくくなったと実感しています。
インフルエンザも、僕は予防接種をしませんが、もう長いことかかっていません。きっとミカンの抗菌作用が効いているのでしょう。
また、ニキビや肌荒れが昔は出ることがありましたが、今ではまったくありません。ニキビ菌に対するミカンの抗菌作用や創傷治癒作用のおかげかもしれません。
ありがたいことに僕は、人から「若い」と言われることがあります。きっとそれは、ミカンの皮の抗酸化作用のおかげでしょう。
老化に大きくかかわる活性酸素は、ストレスや運動などでも発生します。ミカンの皮に含まれるポリフェノールによる抗酸化作用で、活性酸素を中和してくれるのでしょう。
今までだったら捨てられていたミカンの皮で、体が健康になるなんて、こんなに便利なことはないのではないでしょうか。
最後に、僕の果物の食べ方ですが、キンカンを皮ごと食べるなら、ミカンも皮ごと食べるし、リンゴが皮ごと食べるなら、ナシも柿も皮ごと。スモモが皮ごとなら、モモ、キウイも皮ごと食べます。
いつもは何種類かの果物を、皮ごと一口サイズにして器に盛り、シロップ代わりにエゴマ油を垂らして食べています。
エゴマ油を1日5gとると、抗炎症作用、抗凝固作用によって病気の予防になります。さらに体のなかでDHAという物質になると脳力アップ、視力アップ、精力アップにもなります。
食べるのは朝でも夕方でもかまいません。ミカンは手軽に食べられる果物ですし、最初の皮ごと果物としてもお勧めです。
南雲吉則
ナグモクリニック理事長・総院長。1955年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業後、東京女子医科大学で形成外科を、癌研究会附属病院外科で癌治療を学び、慈恵医大附属病院第一外科乳腺外来医長を経て、乳房専門のナグモクリニックを開業。「女性の大切なバストの美容と健康と機能を生涯にわたって守る」をモットーに、総院長として、東京、名古屋、大阪、福岡の4院でがん手術、乳房手術に情熱を注いでいる。著書多数で近著に『ドクター南雲の部屋とからだのお掃除術』(WAVE出版)が好評発売中。
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