目が冷えると全身の自律神経が乱れる
寒い季節には、厚着をしたり、帽子や手袋や耳あてをしたりと防寒対策をされるでしょう。でも、「目」は、防寒対策のしようがありません。
寒さだけでなく、パソコンやスマホの長時間使用などで目を酷使することも、冷えを招く一因です。
目の周囲が冷えると、眼球を動かす筋肉が固くなり、血流が悪くなって、目に必要な酸素や栄養が不足します。筋肉の動きが悪いと当然、目の疲れも起こりやすくなりますし、見え方にも支障が生じます。
実際、眼球の運動や瞳孔(黒目)の収縮を検査すると、それらの動きが悪い人は少なくありません。その原因の1つが、目の冷えなのです。
また、目の周囲の皮膚はとても薄いので、血行が悪くて血液が滞っていると、目の下にクマが現れます。
さらに、冷えは神経の緊張も招きます。目の動きには、外転神経、滑車神経、動眼神経という3つの神経がかかわっています。このうち動眼神経は、私たちの意志が関わって動く「運動神経」と、意志とは無関係に動く「副交感神経」を含んでいます。
例えば、瞳孔の収縮は周囲の明るさに反応して自動的に行われますが、これは動眼神経の副交感神経が自動的にコントロールしています。また水晶体は、毛様体筋によって厚みを調整されることで、目のピントを合わせています。
この毛様体筋を動かしているのも、同じく副交感神経です。
副交感神経は体をリラックスした状態に導く働きがありますが、目の周囲が冷えていると、副交感神経が活性化せず、ますます目の疲労や近視・老眼を招く可能性があります。
さらに目の周辺だけでなく、広い範囲の自律神経のバランスが乱れて、筋肉の不要な緊張を招いたり、首や肩のこり、頭痛などの体の症状が現れたり、不眠やイライラなど精神的な症状にもつながりかねません。
蒸しタオルの心地よさを感じるのが大事
目を酷使していたり、冬場の外出が多かったりする人は、意識的に目を温め、冷えを解消しましょう。
手軽でお勧めなのは「蒸しタオル」です(図参照)。
蒸しタオルを目に乗せると、血流がよくなり、筋肉がほぐれます。じんわり温かく、心地よく感じるでしょう。この「心地よさ」が重要です。小さなことですが、この快感が副交感神経を活性化させ、心身のリラックスや、疲労・痛み・ストレス・不安感の緩和につながるからです。
目を温めれば、疲れ目やクマへの効果が期待できます。頭痛や肩こりなど、目の疲れからの不快症状の緩和にも有効でしょう。続ければ、近視や老眼の解消にもつながります。
ただし、目はとてもデリケートな器官ですから、硬い物や温度が熱すぎる物を当てるのは厳禁です。それから、花粉症などアレルギー性疾患の症状や急性結膜炎など、目に炎症が起こっている場合には、絶対に温めてはいけません。目が充血していたり、まぶたが腫れていたりしたら、温めるのは避けてください。
目の冷え対策で、目と全身の健康を守りましょう。
蒸しタオルでじんわり目を温める方法

②目を閉じ、蒸しタオルをまぶたの上からそっと乗せる。
5分程度かけて目の周囲を温め、心地よさを感じる。
蒸しタオルで目を温めると、全身の自律神経ともかかわる動眼神経が活性化!

解説者のプロフィール
石坂裕子
新小松アイクリニック院長。日本医師会認定産業医。日本人間ドッグ学会認定医。石川県出身。金沢医科大学医学部卒業。金沢医科大学病院、済生会金沢病院、NTT西日本金沢病院などを経て、2017年3月より現職。『自律神経を整えて超健康になるCDブック』(マキノ出版)監修。
①水分を含ませてからよく絞ったタオルを、40℃程度に温める。
家庭用の電子レンジでの加熱なら1分程度。