解説者のプロフィール
3日食べなくても死なない。むしろ調子がよくなる
私はこれまで40回にわたり、医師の立場から「座禅断食」の指導を行ってきました。座禅断食というのは、禅の修行である座禅と、断食を組み合わせたものです。
座禅は瞑想と似ていますが、大きく異なるのは、目を開けて行う点。思考が散漫にならないよう、視覚をその場に固定して、精神をクリーニングするのが特徴です。
断食中に座禅を組むと、両者の相乗効果によって、心と身体を同時にリセットすることができます。
このような断食法に興味を持ったきっかけは、私がまだ勤務医だった頃、座禅断食の考案者である野口法蔵先生の断食に参加したことです。
十数回にわたって断食に参加する中で、「心身ともに元気になる」という効果を確信した私は、10年前にクリニックを開院する際、ぜひ定期的に座禅断食を行いたいと、野口先生から伝授していただいたのです。
座禅断食に参加されるかたには、ガンの治療を終えた患者さんのほか、高血圧や糖尿病など、病中・病後の人も少なくありません。
病気をされているかたは、当初、食べないことに不安を感じられるかたもいらっしゃいます。ですが、それは子どもの頃から「食べなきゃダメだ」と言われ続けたことで、食べなかったら死ぬんじゃないかと心に刷り込まれているだけなのです。
人間は、3日間くらい食べなくても死ぬことはありません。そもそも、3日間といっても7食しか抜かないのですから。
断食を経験すると、「3日くらい食べなくてもだいじょうぶ」「むしろ体も軽くなり、かえって調子がいいぞ」ということに気づけます。これは、大きな収穫と言えましょう。
西谷雅史先生が行っている「座禅断食」って何?
座禅断食を行うと心と体のリセットが起こる
●腸・血管・心のリセットが起きる
●味覚がリセットされる
●食物に体が敏感になる
●さまざまな気づきが起きる
●生活習慣が変わり体重が落ちる
●食べないことへの恐怖感がなくなる

座禅断食は、週末の3日間で行われる。金曜日は自身で朝から食事を抜き、仕事や家事をこなしてから、夕方クリニックに集合。
西谷先生もいっしょに断食をしながら指導するうえ、看護師も常駐するので、病中・病後でも安心して参加できる
座禅と断食でつらく思うことも梅湯から始まる食事でうそのように消える

3日目の「明けの食事」は、水を300mlほど飲み、その後、ダイコンの煮汁に梅干しを入れた梅湯を、どんぶり茶碗2杯いただく。
3杯目からは、ゆでたダイコンも加え、ニンジンやトマトなどの生野菜も食べる。断食で味覚もリセットされるため、抜群においしいと好評だという
梅干しの塩分は気にする必要なし。リグナンやクエン酸の健康効果が大きい

西谷先生の「座禅断食」の明けの食事で飲む梅湯は、塩分9%程度の梅干しを使うが、自然塩で漬けられた梅干しなので塩分は気にする必要はないという。
梅は、抗酸化物質のリグナン、疲労回復を促すクエン酸のほか、ビタミンやミネラルなども豊富な食材で、断食明けにとると体が喜ぶ
体の代謝系や意識が変わり病気の治療にも期待される
人間はふだん、ブドウ糖を燃料にして活動しています。ところが、断食を行うと、ブドウ糖が不足するため、脂肪を砕いて燃料にする「ケトン代謝」に変わります。
実はこの現象、クマなどのほ乳動物が冬眠状態に入るときと同じなんですね。人間もほ乳動物ですから、食べることをやめると、3日目あたりで代謝系が切り替わります。
すると、意識がある状態でボーッと過ごすようになります。その結果、最初はきつく感じられる空腹感も、苦しくなくなるわけです。
断食中の座禅は、30分組んだら1時間休むというスケジュールで、合計11回行います。座禅では「無」になるわけですが、自然と自分の内側に目を向けることにもつながって、多くの気づきが得られます。
このように、体の代謝系や意識が変わることで、さまざまな病気治療にも効果が期待できるのです。
そして、座禅断食の仕上げとしていただく「明けの食事」では、大量の「梅湯」を飲みながら、何種類もの野菜をいただきます。すると、だいたい1時間以内に便意をもよおし、腸内に残っていた便が排泄されます。
その後、新陳代謝ではがれた腸壁の皮や、死滅した腸内細菌などの宿便が、まるでお湯で洗浄するようにジャーッと出て、完全に腸内がきれいになります。その爽快感で参加者の皆さんも晴れやかな顔になり、ニコニコしながら帰られるのです。
なお、近年では、塩分が高血圧に直結するという説は否定されています。精製塩で漬けた梅干しやハチミツ入り梅干し、調理梅干しは避け、天然塩を使った梅干しを選べば、マグネシウムなどのミネラルが豊富ですから、それほど塩分を気にしなくてもだいじょうぶでしょう。
西谷雅史
1956年、東京都生まれ。北海道大学医学部卒業。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本東洋医学会専門医、日本ホリスティック医学協会理事。意識の成長と進化を目指す、響きの杜ネットワーク主宰。「心とからだ、心と心、人と環境、すべてが響き合ったときに人は初めて健康に生きることができる」を理念とした響きの杜クリニックを2006年に開院。著書に『血流は“静電気デトックス”でよみがえる』(宝島社)がある。3カ月に1度、2泊3日の「座禅断食」を定期的に開催している。