トマトのリコピンは糖尿病の食後血糖値を緩やかにする働き
思わず食欲をそそられる、真っ赤なトマト。トマト好きにはたまらない、その赤さのもとは、いくつもの健康効果で注目されている色素成分リコピンです。
例えば、イタリアのガン研究所が行った調査では、トマトを1週間に7個以上食べている人は、2個以下の人に比べて、消化器系のガンの危険率が約6割までへったというデータがあります。
そうしたガン予防の主役と思われるのが、リコピンなのです。野菜のあらゆる成分のなかで、リコピンは、活性酸素(特に一重項酸素)を消す働き、いわゆる抗酸化作用が特に高いことがわかっているからです。最新の実験では、β—カロテンの2倍以上、ビタミンEの100倍以上の抗酸化力があると報告されています。
活性酸素は、細胞を傷つけ、生活習慣病や老化の原因を作る物質といわれています。血液中のLDL—コレステロールは、活性酸素と結びついて酸化すると、悪玉コレステロールと呼ばれる過酸化脂質に変わります。酸化した脂質とは、つまりは古くなった油です。それが血管にこびりつくと動脈硬化になり、高血圧や、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こします。
ところが、リコピンをとれば、いちはやくリコピンが活性酸素を消去することで、過酸化脂質の発生をおさえてくれます。実際、週2回20分ずつの運動に加えて、毎日トマトジュースを飲んだ人たちは、2ヵ月後には高血圧がハッキリと改善し、運動だけの人たちの血圧には変化がなかったという報告もあります。
また、トマトソースには、リコピン以外にクエン酸や、食物繊維が含まれており、糖の吸収を穏やかにする作用が知られています。うまく食事に利用すると、食後の血糖値の上昇を穏やかにすることが期待でき、インスリンの節約や、糖尿病の悪化を防ぐ可能性があります。
トマトは、シミやシワでお悩みのかたにも、うってつけの食品です。肌の老化には自然老化と光老化とがあります。光老化は、紫外線などによって肌に活性酸素が生じて起こります。シミやシワの発生原因の80%は、光老化が占めるといいますから、紫外線対策は重要です。
肌の表面に生じたメラニン色素がシミになることは、よく知られていますが、それこそが紫外線の仕業です。また、紫外線は肌の内側までも浸透して、コラーゲンの層を破壊し、シワができやすくします。そこで、リコピンの出番です。
リコピンは、肌・皮膚に蓄積されるので、まるで紫外線対策をとるために、肌で待機しているようなものです。そうしてリコピンは、メラニンの生成をおさえてシミを防ぎます。そして、コラーゲンが減少するのを抑制しながら、コラーゲンを増加させる働きも発揮して、シワを撃退してくれる可能性があるのです。
トマトの驚きの健康効果
トマトパワー① 高血圧への効果
トマトに含まれるリコピンが、活性酸素を消去して血液中のLDL-コレステロールの酸化を防ぎます。血液をサラサラに、血管をしなやかで丈夫にし、高血圧や動脈硬化を防いでくれる可能性があります。
トマトパワー② 血糖値への効果
トマトに含まれるクエン酸や食物繊維が、食後の血糖値の上昇を穏やかにしてくれます。糖尿病の予防が期待できるでしょう。
トマトパワー③ ガン予防への効果
トマトに含まれるリコピンは、強い抗酸化力を備えています。それらが、活性酸素を消去して、細胞の遺伝子の変異を抑制し、ガン化するのを防いでくれる可能性があります。
トマトパワー④ シミ・シワ・便秘への効果
紫外線によって皮膚の表面に発生する活性酸素を、トマトのリコピンが消去し、シミやシワ、ソバカスの予防に役立つことが期待できます。さらに、食物繊維が腸内環境を整えて、便秘を防いでくれます。
トマトパワー⑤ 免疫力を高める効果
リコピンの持つ強い抗酸化力が、体の細胞やDNAの破壊・損傷を防ぐことが期待できます。さらに、体の免疫を担う細胞を活性化し、免疫力を高めて病気になりにくい体にしてくれます。
トマトパワー⑥ ダイエットへの効果
トマトに含まれるペクチンという水溶性の食物繊維が、体の余分な脂肪を体外へと排出してくれます。
トマトパワー⑦ 喘息への効果
ぜんそく患者の血清リコピンの濃度は、健康なかたに比べて低い場合が多く、リコピン量とぜんそく症状とは、相関関係があると考えられます。トマトのリコピンが、体内の足りないリコピンを補ってくれます。
トマトパワー⑧ 不妊症(男性不妊)への効果
トマトのリコピンには、強い抗酸化作用があります。リコピンが精巣の中の活性酸素を消去し、精子によい効果をもたらす可能性があると考えられます。
トマトには注目の色素成分リコピンが豊富

解説者のプロフィール

稲熊隆博
1952年、大阪府生まれ。同志社大学大学院工学研究科博士課程修了後、カゴメ株式会社に入社。カゴメ(株)総合研究所主席研究員を経て、現職。農学博士、技術士。