スムーズな血液の流れを促す、ふくらはぎマッサージ
自己治癒力を高めるための大きな柱
私たちが健康な毎日を送るのに欠かせないのが、スムーズな血液の流れです。
血液は、摂取した栄養と酸素を動脈によって全身の細胞へと運び、老廃物や有害物質を静脈によって細胞から回収する働きをしています。
ですから、血液の流れが滞ると、細胞がうまく機能せず、自己治癒力(免疫力)が低下して、さまざまな病気が起こりやすくなるのです。
実際、多くのガン患者は、血行が悪くなっています。
私が健康指導を行っている老人ホームには、ひざから下にむくみのある高齢者が数多く見受けられます。
これも、ほとんどは血流の悪化によるものです。
ただでさえ、血液(体液)は、重力で下半身にたまりやすいのに、加齢によって静脈還流(血液が心臓へ戻ること)がさらに悪くなれば、当然、血液循環が滞りがちになります。
実際、高齢者のふくらはぎをさわると、筋肉がへっていて、弾力のない人が多いのがわかります。
足(下肢)の血液は、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割を果たすことで、心臓へと戻ります。筋肉がへっているということは、それだけ血液が循環しにくく、むくみや冷えが起こりやすくなっているのです。
それだけではありません。ふくらはぎの筋肉がへり、血流が滞ると、ガンを引き起こす怖れがあるのです。
私は、「ガンを治すには、自助努力によって自己治癒力を高めることが不可欠」との考えから、「セルフ治療」を提唱しています。セルフ治療の中で、メンタル、食事と並ぶ、3本柱の一つが運動です。
これは、血行が悪くなっているガン患者が、全身の血流をよくするために行います。
ただ、運動といっても、きついものだとなかなか続けられません。高齢者の場合、歩くことすら、ままならないかたも多いでしょう。
そこで、私がお勧めするのが「ふくらはぎマッサージ」です。
血液が滞りやすいふくらはぎを手でもむことによって、直接、血管に働きかけられます。すると、滞った血液を心臓に押し戻すことができるのです。
しかも、ふくらはぎは体積が大きいため、この部分の詰まりを取って、血液がスムーズに流れれば、効率よく全身に血液が循環します。
そしてなにより、だれでも簡単にできるのがよい点です。
便秘改善などのデトックスにも有効
ふくらはぎマッサージは、足首からひざ裏に向かって、両手の指でゆっくりもみ上げていきます。少し痛気持ちいいぐらいの強さで、血液を下から上へ流す感じで、ふくらはぎ全体をマッサージしましょう。
私は、1日10〜20分を目安に、毎日行うことをお勧めしています。おふろに入ったときに湯ぶねの中や、おふろ上がりに行いましょう。
また、寝るときに足の位置を心臓と平行、または少し高くすると、血流が滞りにくくなります。
ふくらはぎマッサージを実際に行った人は、体温が上がり、血行が改善していることが確認できています。
なかには、免疫力の指標である白血球中のリンパ球の数値が上がった人もいました。東洋医学では、血液の流れと気(生命エネルギーの一種)の流れは連動すると考えられているので、その相乗効果で免疫力が高まったのかもしれません。
「気持ちがいい」「体がポカポカする」という声も多く、足のむくみや冷えが改善した人、血圧が下がり降圧剤が不要になった人、寝つきがよくなったという人もいました。
そのほか、利尿作用や、便秘改善などのデトックス効果も期待できます。もちろん、筋肉を刺激することで、ふくらはぎの筋力自体も高まるはずです。
初めは、かたくて痛かったふくらはぎも、もみ続けているうちに、やわらかくなり、痛みも感じなくなります。それが、血流が改善しているサインといえます。
体に不調があるかたは、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。
解説者のプロフィール

岡本 裕
1957年、大阪市生まれ。医学博士。大阪大学大学院修了後、大学病院、市中病院などに勤務。2001年に、主にガン患者を中心に、有用な情報を発信し続けるウェブサイト「e-クリニック」をスタート。編著に『免疫を高めるとガンが自然に治る』(マキノ出版)などがある。
●e-クリニック
http://e-clinic21.or.jp/
もんで痛みを感じなくなれば、血流改善のサイン