ふくらはぎは第二の心臓と呼ばれ、全身の血流を促す

ふくらはぎは特に血流が滞りやすい
血液は体内で絶えず循環し、私たちが生きていくうえで重要な働きをしています。
心臓から送り出された血液は、動脈によって栄養分と酸素が体の隅々に運ばれます。体の隅々に栄養分と酸素が行き渡ると、静脈によって老廃物などが回収され、血液は心臓に戻ります。
この一連の働きによって、私たちの体は正常に機能し、健康が保たれているのです。
しかし、この全身の血流が悪化すると、私たちの健康は阻害されます。その要因としてあげられるのが、不摂生な生活習慣や加齢です。
血流が悪化すると、動脈はしだいに伸縮性や弾力性を失っていきます。これによって動脈壁が厚くかたくなり、血管の内腔がだんだん狭くなる状態を動脈硬化といいます。
この動脈硬化の度合を知る指標の一つとして、最近注目されているのが、「血管年齢」です。これを調べると、動脈のかたさなどの血管の状態がわかります。
大きな病院に行けば、専用の検査装置で、自分の血管年齢を調べることができます。調べてみて、自分の血管年齢が実年齢よりも20歳以上も高かったら、動脈硬化がかなり進行しているおそれがあります。そして、血圧も高くなりやすいのです。
血流の悪化をもたらすのは、それだけではありません。足の末端で、静脈血は重力に逆らって心臓に戻らなくてはなりません。そのため、足では特に血流が滞りやすく、全身の血液循環の悪化を招くのです。
そして、全身の血流に大切な役割をしているのが、ふくらはぎです。そのため、ふくらはぎは昔から、「第二の心臓」と呼ばれてきました。
全身の血流が円滑になり血管が若返る!
ふくらはぎの重要性は、ふくらはぎにある静脈弁からも知ることができます。
血管の弁は、動脈にはなく、静脈にだけあるものです。しかも、すべての静脈にあるわけではありません。弁は限られた静脈にだけあり、その数少ない中の一つが、ふくらはぎにあるのです。
ふくらはぎの筋肉には、腓腹筋とヒラメ筋の二種類があります。 足先から心臓へ戻る静脈は、この二つの筋肉にはさまれ、この部分の静脈に、「ハ」の字の形をした静脈弁がついています。血液がハの字を下から上へ通ると、ハの字の弁がふたとなり、通過した血液が逆流しないようになっているのです。
例えば、歩く際、かかとを上げると、ふくらはぎの筋肉が圧迫されて、静脈がせばまります。
次に、かかとを下ろすと、ふくらはぎの静脈の圧迫が解け、静脈は拡張します。歩くとこれがくり返され、ふくらはぎがちょうどポンプの働きをします。その結果、静脈血は下から上へ押し上げられ、心臓へスムーズに戻るのです。
これと同じ効果が期待できるのが、ふくらはぎマッサージです。
血管を若返らせる方法として、生活習慣を見直して、喫煙をしているかたならただちに禁煙したり、バランスのよい食事を取ったり、適度な運動を定期的にしたりすることは、もちろん大切です。
湯ぶねの中でふくらはぎマッサージをすると、より効果的

そのほかに、ふだんからできる方法として、私はふくらはぎマッサージをお勧めしています。
ふくらはぎマッサージによる刺激で、全身の血液循環が円滑になれば、動脈硬化や高血圧が予防・改善でき、血管を若返らせる大きな力となるでしょう。
もちろん、それ以外のさまざまな病気の予防や改善に役立つことはいうまでもありません。
ちなみに、ふくらはぎをもむ際は下から上へもんでも、上から下へもんでもかまいません。ふくらはぎに静脈弁があるので、血液が逆流しないようになっているからです。マッサージによる刺激は上から下へでも、下から上へでも、血液を心臓へ戻す作用をもたらします。
また、入浴中は全身の血行がよくなっているので、湯ぶねの中でふくらはぎマッサージをすると、より効果的でしょう。
ふくらはぎマッサージ以外には、立った姿勢のまま、かかとを上げ下げする運動や、あおむけに寝た姿勢で、つま先を自分の顔の方向へ反らせるトレーニングもお勧めします。
解説者のプロフィール

高沢謙二
東京医科大学循環器内科教授。医学博士。東京医科大学卒業後、同大学大学院修了。日本循環器学会評議員。日本高血圧学会会員。日本動脈硬化学会会員。加速度脈波の波形解析による血管年齢を発案し、世界的に注目される。著書に『血管が若返る本』、監修に『100歳まで切れない詰まらないタフな血管をつくる!』(以上、マキノ出版)など多数。