医師の石川洋一先生(故人)が考案されたふくらはぎマッサージ

高血圧だとカツオ節のようにかたい!
ふくらはぎマッサージは、多くの健康効果が期待できる優れた方法です。今回ご紹介するふくらはぎマッサージは、医師の石川洋一先生(故人)が考案されたものです。
石川先生は、ふくらはぎの状態で、人の体調はある程度推し量れると考えていました。
健康な人のふくらはぎは、つきたてのおもちのように、温かくてやわらかく、弾力があります。
一方、体に何らかの不調がある人は、それがさまざまな形で、ふくらはぎの状態に現れることがしばしばあります。
その状態を見極めるポイントは、ふくらはぎの筋肉の「温度」、「かたさ」、「弾力」の三つです。これらのポイントから、ふくらはぎの状態はおおまかに五つのタイプに分けられます。
第一が、ふくらはぎは温かく、筋肉はコチコチにかたくなっている場合です。
これは、高血圧の人によく見られる状態です。高血圧が悪化すると、ふくらはぎがまるでカツオ節のようにかたくなっていることがあります。
第二が、ふくらはぎは温かく、筋肉はやわらかいものの、張りがある場合です。
これは、体内に急性の炎症が起こっている状態を現しています。例えば、カゼをひくと、ふくらはぎがこの状態になりやすいのです。
第三が、ふくらはぎは冷たく、筋肉はかたくなっている場合です。
これは、冷え症や婦人科疾患に悩む人に、よく見られる状態です。自律神経失調症による、さまざまな不定愁訴に悩んでいるかたも、これに該当します。
第四が、ふくらはぎは冷たく、筋肉はやわらかい場合です。
これは、糖尿病の人によく見られる状態です。糖尿病が悪化すると、ふくらはぎがさらにフニャフニャになり、血色も土気色になってきます。
第五が、ふくらはぎは冷たく、筋肉はやわらかく、弾力は全くない場合です。
これは、腎臓病の人によく見られる状態です。
もちろん、ふくらはぎの状態だけで、病気を正確に断定できませんが、自分の体調を判断する一つの目安になります。
ふくらはぎマッサージで効果が期待できるものとしては、高血圧、糖尿病、冷え症、自律神経失調症、肩こり、便秘、不眠、むくみ、腰痛、ひざ痛、肌荒れなど、数多くの症状が挙げられます。
症状別にふくらはぎの状態がある

肺気腫が改善した!股関節痛が消えた!
全身を流れる血液の70%は、下半身に集まっています。
この血液を心臓へと押し戻すポンプの役目をしているのが、ふくらはぎの筋肉です。そのため、ふくらはぎは、「第二の心臓」と呼ばれています。
ふくらはぎマッサージを行うと血流が大きく促され、それが多くの健康効果につながるのです。
私が代表を務める整骨院やデイサービスでは、ふくらはぎマッサージを施術の大きな柱として取り入れています。そして、患者さんたちにも、自分で行ってもらうことで、大きな成果を上げているのです。
その症例の一部をご紹介します。
74歳の女性は、高血圧で降圧剤を飲んでいました。
薬で最大血圧を下げることはできましたが、最小血圧が下がらず困っていました。それが、ふくらはぎマッサージを始めて1ヵ月ほどで、110mmHg台後半だった最小血圧が、80mmHgまで下がったのです(基準値は、最大血圧が140mmHg未満、最小血圧が90mmHg未満)。
長年、糖尿病に悩んでいた78歳の男性は、投薬治療を続けていましたが、治療効果がなく、手足のしびれにも悩まされていました。ふくらはぎマッサージを始めたことで、糖尿病の数値もしびれも大幅に改善したのです。
また、別の78歳の男性は、脳卒中で片マヒになり、リハビリをしていました。
ふくらはぎマッサージを取り入れたところ、介護レベルが5から3に改善。寝たきりで常に体に力が入っていたのが、今では、自転車に乗れるほど元気になっています。
ほかにも、「代謝がよくなって、肌がきれいになった」「高齢でなかなか妊娠しなかったのが、子宝に恵まれた」「肺気腫で息切れしていたのが改善した」「傷の治りが早くなった」「ひざから下が骨と皮だけのような状態だったのが、筋肉がついた」「股関節の痛みが消えた」など、多くの人がさまざまな効果を上げています。
ふくらはぎ内側のマッサージのやり方

ふくらはぎ外側と中央のマッサージのやり方

ふくらはぎマッサージは、どなたにも簡単にできる健康法
では、ふくらはぎマッサージのやり方をご説明します。
床にあぐらをかいた状態か、いすに腰をかけた状態で行います。
❶ ふくらはぎ全体を、アキレス腱からひざ裏に向かって、両手でまんべんなくもみ(さすり)ます。
❷ ふくらはぎを「内側」「アキレス腱〜中央」「外側」の三つに分けます。三つのうち、症状に対応している箇所を重点的にもみましょう。
中央は、アキレス腱のライン上を、ひざの裏までまっすぐもんで(さすって)いきます。
内側と外側は、ふくらはぎ上部の二つに分かれている筋肉(腓腹筋)を、それぞれもむ(さする)ようにしてください。
片方の足に1日2〜3分を目安に、「痛気持ちいい」と感じる強さでもみます。両足で、少なくても1日5分はもみましょう。
ふくらはぎマッサージはいつ行ってもかまいません。お勧めは、体が温まっている入浴中や入浴後です。マッサージの後には、必ずコップ1杯の水を飲んでください。
ふくらはぎが温かくてやわらかく、ほどよく弾力のある状態を効果の目安にしてください。(ふくらはぎの「内側」「アキレス腱〜中央」「外側」に対応する症状は、図参照)。
ちなみに、静脈瘤(静脈の一部がふくれているもの)の場合、初期であれば、さする程度なら行ってもかまいません。また、脳梗塞の場合も、足の血流がよくなるので、ふくらはぎマッサージによる改善効果が期待できるでしょう。
ただし、脳出血を起こしている場合や、ふくらはぎに傷がある場合、そして、足の手術をして1ヵ月程度の場合は、必ず医師と相談のうえ、行ってください。
ふくらはぎマッサージは、どなたにも簡単にできる健康法です。ぜひ、そのすばらしい効果を実感してみてください。
解説者のプロフィール

丸山眞砂夫
1973年生まれ。柔道整復師。2007年、明治東洋医学院専門学校卒業。11年、株式会社タオ代表取締役、日本ふくらはぎセラピスト協会会長に就任。高血圧、糖尿病、脳梗塞や、腰痛、ひざ痛など、あらゆる症状を持つかたの施術をしながら、雑誌、テレビの監修を行う。後進の育成にも注力している。