効率よくおなかを温める方法が、ふくらはぎを温めること

ふくらはぎが冷たい人は血管が詰まりやすい
不妊治療を得意とする私の鍼灸院では、患者さんの大半が女性です。不妊のほかに、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣のう腫といった婦人科疾患の患者さんも多数いらっしゃいます。
これらの病気は、冷えや血流の低下と、深くかかわっています。おなかが冷えて血流が悪くなると、卵巣や子宮の機能が低下してしまうからです。
卵巣は、子宮の左右についている親指の頭ほどの臓器です。ここから女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)が分泌され、月経周期がつくられます。おなかが冷えて卵巣機能が低下すると、生理痛がひどくなったり、女性ホルモンの分泌が低下して更年期障害のような症状が出たりするのです。
また、子宮が冷えると、血栓を溶かす酵素が働きにくくなり、血液の塊ができやすくなります。さらに、血流が低下すると、子宮筋腫もできやすくなるのです。
ですから、おなかを温めることはとても大事です。しかし、それよりも、もっと効率よくおなかを温める方法が、ふくらはぎを温めることです。
ふくらはぎとおなかの関係がピンと来ないかもしれませんが、この二つは密接につながっています。
ふくらはぎの奥には、後脛骨動脈と足背動脈という太い動脈が通っています。心臓から押し出された血液は、これらの動脈を通って細胞に酸素や栄養を届けたあと、老廃物を回収して静脈に入り、心臓に戻ります。
しかし、ふくらはぎが冷えると、これらの血管が詰まりやすくなり、流れが悪くなります。おなかにも血液が巡りにくくなって、卵巣や子宮が冷えてしまうのです。
足の血流は歩くことでも改善しますが、筋肉の少ない人や、あまり歩けない人は、まず、ふくらはぎを温めてください。
ふくらはぎを温めると、動脈や静脈の血管が開き、血液量がふえて、流れがよくなります。さらに、自律神経のうちの、リラックス時によく働く副交感神経が優位になり、全身の血管が開きやすくなります。
もう一つのメリットは、温められた血液が全身を巡れば、おなかを内側から温められることです。
このように末端の詰まりをなくし、血流をよくすると、おなかの血流が改善し、子宮や卵巣をしっかり温めることができるのです。
自律神経が調整されストレス性の症状緩和
東洋医学の観点からいっても、ふくらはぎを温めることは大事です。ふくらはぎには重要なツボがたくさんありますが、とりわけ婦人科疾患に関係が深いのが、三陰交というツボです。
三陰交は、内くるぶしから指幅4本分上にあるツボです。ここは3本の経絡(「生命エネルギー」といわれる気の通り道)が交わる点で、それらの経絡はすべて、おなかの下部につながっています。
三陰交は、紀元前1200年に書かれた東洋医学の聖典、『黄帝内経』にも記述があるほど、古くから使われてきた重要なツボです。このツボを温めると、おなかが温まることがわかっています。
婦人科疾患は、おなかを温めることでほとんどが改善します。古い血の滞りによる病気を、東洋医学では「瘀血症」と呼んでいます。温めて血流がよくなると、血管の中に滞っていた老廃物が排出され、瘀血の状態が解消するのです。また、温めると自律神経も調整され、ストレス性の症状が和らぎます。
ふくらはぎの温め方にはいろいろありますが、だれにでも手軽にできるものを二つご紹介します。
① ドライヤーで温める
足首からひざの下まで、ふくらはぎをまんべんなくドライヤーで温めます。特に、三陰交はよく温めてください。おなかがポカポカするまで、温めるといいでしょう。靴下の上からドライヤーを当てると、ヤケドの心配がありません。足に直接当てるときは、温度と距離に気をつけてください。
② 使い捨てカイロで温める
ふくらはぎの真ん中から上のほうに、ふくらはぎの筋肉(ヒラメ筋と腓腹筋)がついています。この筋肉が少ない人は、いくら歩いても、ふくらはぎが温まりません。ですから、その筋肉の上に使い捨てカイロを貼って、筋肉を直接温めましょう。
ふくらはぎの筋肉がある人は、その下のアキレス腱に貼ってください。アキレス腱は婦人科疾患を防ぐ重要な場所ですが、温まりにくいのです。
カイロを肌にじかに貼ると低温ヤケドをするおそれがあるので、長めの靴下や厚手のタイツをはいた上から貼るといいでしょう。
靴下をはいて汗をかいたのを、そのままにしておくと、よけいに足が冷えます。靴下は、こまめにはき替えてください。
なお、かかとがザラザラしている人、手の指の爪に横線がある人も、卵巣や子宮の血流が悪くなっています。そういう人も、ふくらはぎを温めるといいでしょう。