
神門は子宮や卵巣、骨盤に関係するツボ
私は以前、ある僧侶が創始された独特の治療法を産婦人科の治療の補助に用いていました。
それは、薬石を小さく薄いシール状にして、いくつかのツボに貼るというものです。貼るツボは耳にもあり、その位置が、今思うとまさに、「神門」だったのです。
ツボは全身にありましたが、外来でこの療法を行うには、耳がいちばん手軽に使えます。それで、私はもっぱら神門を使っていました。
好都合なことに、私が僧侶から習ったところによると、この神門は子宮や卵巣、骨盤などに関係するこということでした。
私は産婦人科医ですので、クリニックには、月経痛や更年期障害、冷え症、不妊症などを訴える患者さんたちがみえます。そういう患者さんたちに、神門への刺激を行ってみたところ、かなり手応えがありました。
そこで、300人ほどを対象にデータをとってみたところ、7〜8割の患者さんに効果が認められました。そのうち、特に効きがよく、事実上、神門に薬石を貼るだけで症状が取れた人も2〜3割いました。
私は薬石シールを貼る方法だけを用いていましたが、当時、その僧侶からは「耳をひっぱるのもよい」と教わりました。
ですから、現在、飯島敬一さんが行っている耳ひっぱり健康法とぴったり一致していることになります。
耳鳴りにも効果があった
私は、自分の診療科の関係から、主に婦人科系の症状に用いており、「自律神経のバランスをとる」というところには着目していませんでした。
しかし、更年期障害の本態は自律神経の失調ですから、これに効くということは、自律神経を整える効果もあると考えられます。
婦人科系の症状ではありませんが、私は耳鳴りを訴える患者さんの神門を刺激して、効果を上げたこともあります。これも、自律神経を整える作用を通じて、耳鳴りに効果がもたらされたのかもしれません。
私のこうした経験から考えても、神門を刺激する「耳ひっぱり」は、自律神経を整えるセルフケアとして、すぐれた療法と言えるでしょう。
もともと耳には、足の裏と同じように、全身のツボがあるとされており、その意味でも、耳への刺激が幅広い効果を生むというのはうなずけます。
なんといっても簡単に行える方法ですから、ここに挙げたような症状に悩む人はもちろん、自律神経を整えて健康の維持・増進に役立てたい人も、耳をひっぱることを習慣にされるとよいでしょう。
解説者のプロフィール

いけがわ あきら
帝京大学医学部卒。医学博士。上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、1989年、横浜市に産婦人科の池川クリニックを開設。 年間約100件の出産を扱い現在に至る。2001年9月、全国の保険医で構成する保団連医療研究集会で「胎内記憶」について発表し話題となる。著書に『子どもはあなたに大切なことを伝えるために生まれてきた。』(青春出版社)など多数。
●池川明公式サイト
http://ikegawaclinic.net/sites