にがりのミネラル、納豆の栄養素が多くの健康効果を生む

必須ミネラルを豊富に含むにがり
にがりは近年、ダイエットや美肌作り、健康増進に役立つということで注目され、大ブームにもなりました。今ではスーパーマーケットなどでにがり商品を目にすることも増え、入手も簡単です。
ご存じのとおり、にがりは豆乳を固めて豆腐を作る際に使うもので、その原料は基本的に海水です。
にがりには、主成分である塩化マグネシウムをはじめ、カルシウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛、イオウ、ヨード、セレンなど、海水中に存在する50種類以上のミネラルがたっぷり含まれています。
赤ちゃんが育つ子宮の羊水や、血しょう(血液の液体成分)に含まれるミネラルは、海水のミネラルと非常に構成が似ていると聞いたことはありませんか?
にがりは、塩以外のミネラルが海水中でのバランスをほぼ保ったまま凝縮されており、体に必要なミネラルの絶好の補給源なのです。
ミネラルのうち、人体にとって不可欠で、栄養として毎日取らなければならないものを「必須ミネラル」といい、現在は29種類がわかっています。私たち現代人は栄養過多といわれますが、その一方で体に必要なミネラルは不足気味です。化学合成した塩が広く使われるようになったうえ、農薬や化学肥料を使った栽培法により、農作物のミネラル含有量は大幅に減っています。インスタント食品などの増加も、ミネラル不足を加速させる一因となっています。
ミネラルは、一部が体の構成材料になるほか、生体機能の調節に使われます。このため、慢性的にミネラル不足の人は、さまざまな不快症状が現れたり、病気になったりすると言われます。ですから、にがりでミネラルを補給することは、健康維持や体の不調の改善に大いに役立つのです。
では、にがりの効果について、簡単に説明しましょう。
第一に挙げられるのは、便秘解消効果です。にがりの主成分であるマグネシウムは、失われた水分を腸内に呼び戻す働きがあり、便を柔らかくして排便を促します。
また、マグネシウムには、糖や脂質の代謝に深くかかわるホルモンであるインスリンの分泌を調整する作用があります。そのため、肥満が抑制され、ダイエット効果が得られるのです。さらに、糖尿病や高脂血症、高血圧、高尿酸血症(痛風)など生活習慣病の予防、改善にも役立つと考えられます。
さらに、美容面でもうれしい作用があります。にがりに含まれるマグネシウムが皮膚の細胞を活性化し、保湿成分である「セラミド」の合成を高めるうえ、ほかのミネラルも皮膚の代謝を調整します。このため、肌荒れやニキビ、シミ、シワなどが予防・改善されます。
マグネシウムは、にがりに含まれるカルシウムと相まって、骨粗鬆症の予防にも役立ちます。一方、納豆に含まれるビタミンK2は、骨を作る働きを促進するのです。

海のミネラルを豊富に含んでいるにがりは、現代人の健康維持や体の不調の改善に大いに役立つ
私も毎日欠かさず食べている
納豆はダイエットに欠かせない良質なたんぱく質であり、食物繊維も多く含まれています。この食物繊維は便のかさを増やすとともに、腸内で善玉菌の栄養源となり、腸内細菌のバランスを整えます。にがりを納豆といっしょに取ることで、便秘解消などの効果が、より高まるわけです。
熊本県立大学の奥田拓道教授は、こんな実験結果を報告されています。マウスにエサとにがりを同時に与えると、糖や脂肪の吸収が抑制され、にがりを与えなかったグループに比べ、脂肪増加が明確に抑えられたというのです。人間の場合も、糖や脂肪の吸収を抑える効果が期待できるでしょう。
さらに、納豆にも肌の再生・強化に役立つビタミンB2やビタミンEが含まれているので、美肌作りに役立ちます。
にがり納豆ダイエットの方法は、1日に1パックのにがり納豆を通常の食事に加えるだけと、ごく簡単に作ることができます。
ダイエット目的ではありませんが、私自身も、以前から毎朝「にがり納豆」を食べています。大きめの器に納豆と、すりおろしたヤマイモを入れ、にがりを数滴垂らしてかき混ぜ、ゴマと青ノリを振りかけて、そのまま食べるのです。
朝食にこのにがり納豆を取り入れてから、お通じは抜群で便秘とは無縁です。納豆をご飯にかけて食べるのもよいですが、それに飽きたときや、頑固な便秘のときには、この食べ方もお勧めです。
最後に、にがり納豆を利用する際の注意を挙げておきます。
にがりには塩分も含まれているので、納豆に加える際は、タレやしょうゆを控えめにして、にがりで味を微調整すると便利です。ミネラル不足のときは、にがりが濃いめのほうがおいしく感じるはずです。
にがりの適量は、体質や食生活によっても違ってきます。量が多過ぎると、にがりを加えた食物がくどく感じたり、便が緩くなったりしますので量を控えましょう。
また、腎臓病の人や炎症性の腸の病気がある人は、にがりによるミネラル摂取が体への負担になることがあるので、主治医に相談のうえで用いてください。
解説者のプロフィール

関太輔
1955年生まれ。83年、富山大学(旧富山医科薬科大学)医学部卒業。同年、同大学皮膚科入局。同大学皮膚科助手、講師、96~97年の米国カリフォルニア大学を経て、2000年に富山市にセキひふ科クリニックを開業。09年から富山大学医学部臨床教授。