【医師考案】「症状のない場所」を揉んで筋の芯までほぐす!遠隔刺激のやり方

【医師考案】「症状のない場所」を揉んで筋の芯までほぐす!遠隔刺激のやり方

マッサージや指圧、湿布薬は、表層筋のコリをある程度緩和することができます。しかし、首や肩のコリはほとんど改善しないか、一度よくなっても、すぐにぶり返します。症状の出ている筋肉や腱に直接ふれず、遠隔刺激でコリをほぐして症状を改善するものです。【解説者】班目健夫(青山・まだらめクリニック院長 自律神経免疫治療研究所所長)


もみ返しがない!効果が長持ちする !

皆さん経験があると思いますが、首や肩のコリは、少しもんだくらいでは、なかなかほぐれません。なぜでしょうか。

首や肩の筋肉は、一層ではなく、何層にも重なって構成されています。
いちばん上にある筋肉を「表層筋」、その下にある筋肉を「深層筋(インナーマッスル)」といいます。

例えば、肩から背中にかけての表層筋は、「僧帽筋」です。
僧帽筋は、首から左右の肩、背中へとひし形に広がっています。

その下には、小菱形筋、大菱形筋、棘下筋など、数々の深層筋があります。

首の部分にも、頭板状筋や頸板状筋など、多くの深層筋が存在します。

肩や首がこった状態のとき、表層筋だけではなく、その下の深層筋も、こり固まっています。
特に、慢性的なコリに悩まされている人は、深層筋が強くこっている傾向が強いのです。

マッサージや指圧、湿布薬は、表層筋のコリをある程度緩和することができます。
しかし、その刺激や薬効は、深層筋までは届きません。

このため、首や肩のコリはほとんど改善しないか、一度よくなっても、すぐにぶり返すことになるのです。

深層筋まで刺激が届くように強く刺激すると、今度はもみ返しの危険性が出てきます。
もみ返しとは、刺激が強すぎて筋肉の組織を傷つけてしまい、炎症が起こった状態です。
コリをほぐして痛みが出るのでは、元も子もありません。

私は、筋肉のコリをほぐすための方法を、長年研究してきました。
その結果、浮かび上がったのが「拮抗筋」でした。

拮抗筋とは、特定の筋肉を指す言葉ではなく、筋肉の機能や関係性を表す言葉です。
ひじを曲げる動作で説明しましょう。

ひじを曲げるとき、収縮する筋肉は、上腕で力こぶを作る「上腕二頭筋」です。これが主動筋です。主動筋に対して、逆の動きをする拮抗筋は、力こぶの反対側についている「上腕三頭筋」になります。

主動筋の上腕二頭筋が収縮するとき、拮抗筋である上腕三頭筋は弛緩します。ひじを曲げるという動作は、こうした筋肉のコンビネーションによって成り立っているのです。

私たちの体には、主動筋と拮抗筋の関係を持つ筋肉が、多数存在します。
そして、筋肉のコリをほぐすという観点から見ると、拮抗筋の利用が、非常に役立つことがわかってきました。

背中の痛みを例に取って説明しましょう。
背中を覆う僧帽筋を主動筋としたとき、拮抗筋は、首の胸鎖乳突筋はじめとした筋肉群です。

僧帽筋がこっている、つまり収縮していたら、拮抗筋である胸鎖乳突筋は弛緩しているはずです。ところが、患者さんを触診すると、ここにコリ(収縮)が見つかるのです。そこを押すと、「痛い」「気持ちが悪い」「不快感を覚える」といいます。

そのコリを、手の指で押しもみすると、徐々に痛みや不快感が消失します。
すると、たったこれだけのことで、僧帽筋が緩み、背中の痛みが楽になるのです。

しかも、背中を直接刺激するより、拮抗筋である胸鎖乳突筋を刺激したほうが、筋肉をほぐす効果が長持ちします。

こうした拮抗筋の驚くべきメカニズムは、ほかの多くの筋肉にも当てはまることがわかってきました。今回は、そのうちのいくつかを皆さんにご紹介します。別記事で、症状別の刺激法を図解入りで解説します。

筋肉で圧迫されていた 神経の働きが回復する

拮抗筋を刺激することの利点は、三つあります。

①刺激しにくい場所の筋肉を緩めることができる
背中を直接押すのは難しくても、拮抗筋である肋間筋なら、自分で刺激できます。
拮抗筋を使えば、手が届きにくい場所の筋肉を、直接もみほぐす以上に、効果的に緩めることができます。

②重症化したコリを解消できる
コリが重症化すると、表層筋と深層筋の両方がかたくなります。
表層筋は押したりもんだりできますが、奥にある深層筋には、刺激が届きません。

拮抗筋を刺激すると、主動筋全体が緩むので、表層筋だけでなく、深層筋もやわらかくなるのです。重症化した頑固なコリを、効率的に解消できます。

③血液循環や神経の働きが改善する
筋肉のこわばりがほぐれると、血液の循環が大きく改善します。
血流がよくなることで冷えも解消し、こった筋肉で圧迫されていた神経の働きも回復します。

その結果、多くの不快症状が改善されていくのです。今回は、筋ほぐしを全部で9種類紹介しています。
このうち、「力こぶほぐし」と「腕ほぐし」は、拮抗筋のメカニズムを利用したものではありません。

しかし、やはり、症状の出ている筋肉や腱に直接ふれず、遠隔刺激でコリをほぐして症状を改善するものです。ぜひご自身で実践し、その効果を体感してください。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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