睡眠時に血圧が高いと短命になるとわかった!
皆さんのなかには、病院や家庭で測った血圧が高かったことで、不安に思っているかたが多いかもしれません。
しかし、もし血圧が基準値をオーバーしていたとしても、心配する必要はないのです。
血圧はわずかな感情の変化や、ちょっとした動作で、すぐに上下します。
血圧計を装着しただけで30mmHgくらい上昇することがありますし、体を動かしたり、緊張したり、驚いたりすると、最大血圧が200mmHgを超えることも珍しくありません。
ですから、最大血圧が140mmHg以上を、一律に高血圧として問題視するのは無意味です。
もっとハッキリいいましょう。
現在の日本の高血圧に関するガイドラインは、根本的に間違っているのです。
それでは、健康長寿を実現できる血圧は、どうあるべきなのでしょう。
このことを明らかにするために、私は1989年から、「24時間血圧測定」を実施し、研究を続けてきました。
患者さんに特殊な血圧計を装着してもらい、睡眠時は15~60分ごと、それ以外は10~15分ごとに血圧を測定し、記録したのです。
現在までに集めたデータ数は、延べ1700人以上。
おそらく外来でこのような研究を行っているのは、日本では私だけでしょう。
地道にデータを取ってきた結果、これまで誰も論じなかった、血圧の真実が解明できたのです。
結論からいうと、日中に活動したり緊張したりしたときに血圧が高くなるのは、誰にでも起こるあたりまえの反応です。
問題となるのは、血圧が下がるべきとき、つまり睡眠時に血圧が下がらないことだったのです。
私は、これまでの調査をもとに、睡眠時の最大血圧が100mmHg前後、最小血圧が60mmHg台(70mmHg未満)を正常血圧と設定しています。
そして、24時間血圧測定を開始してから10年後に、追跡調査を行いました。
睡眠時に正常血圧だった137名と、正常血圧よりも高かった60名の生存率を調べたのです。
すると、前者に比べて、後者の死亡率は約9倍も高いことがわかりました。
睡眠中は、日中に比べ、体があまり酸素を必要としないので、血圧は低くていいはずです。
にもかかわらず、睡眠時に血圧が高い場合、ストレス等で興奮状態になり、脳が酸素を多量に必要としているか、血管が狭くなって脳細胞に十分に酸素が届かず、高い血圧を必要としていると考えられます。
いずれにしても睡眠が浅く、細胞の修復が不十分になるため、長期的に見ると短命となるのでしょう。
睡眠時の血圧測定は、特殊な機械が必要なので、簡単にはできません。
そこで、私がお勧めしているのが、就寝直前の血圧測定です。
測定は4回行います。
そのなかで、最小血圧が最も低かったときの数値を、睡眠時血圧として代用するのです。
寝る直前に血圧と脈を4回測る

血圧には、最大血圧と最小血圧がありますが、私は後者を重視しています。
なぜなら、最大血圧は緊張やストレスで変動するのに対し、最小血圧は血管の状態を示しているからです。
実際、睡眠時の最小血圧が75mmHg以上の人の頸けい動どう脈みやく(首の左右にある動脈)を調べたところ、約90%に動脈硬化が見られました。
1分間の脈数は最小血圧よりやや少なめが目安
就寝直前の血圧を測るときは、いくつかの注意点があります。
まず、酒を飲まずに測りましょう。そして、入浴直後の測定も避けてください。
さらに、なるべくリラックスした状態で測ることが大切です。
その日の行動やストレスによって、血圧が高くなる日もあるので、毎日正常である必要はありません。
1週間のうち、最小血圧が70mmHg以下の日が2日以上あれば問題ありません。
しかし、寝る直前の最小血圧が70mmHgを超える日が、1週間に6日以上あったら、睡眠時も血圧が高いと考えられます。
その場合は、血圧を下げるための生活改善が必要です。
脈数も大切です。1分間の脈数は、最小血圧よりもやや少ない程度が目安です。
脈数が多いのは、心臓が頻回に血液を送り出す必要があるということです。
これは、脱水状態で血液量が少なくなっていると起こります。
それが長く続くと血液が濃くなり、流れが悪くなると考えられます。
対処法を別記事で紹介するので、実践してください。
血圧が高くなるのは、動脈硬化以外にも原因があります。
動脈硬化が進み、薬を飲んでも睡眠時血圧が下がらなかった男性が、海外旅行を楽しんできたら、血圧が下がった例があります。
ストレスが血圧を上げていたのです。
私は多くの患者さんを診て、高血圧の最大の原因はストレスだと思っています。
以上を踏まえ、睡眠時の血圧を測定してください。
日中の最小血圧が65~75mmHgの人は、睡眠時も低いと考えられるので、測定の必要はありません。
日中も就寝前も血圧が高い人は、別記事でご紹介している生活改善法をすぐに始めましょう。