普通のカゼに薬は不要!抗生物質は逆にマイナス
ウイルスによる普通のカゼは、ほうっておいても自分の免疫力で自然に治ります。いわゆるカゼ薬を飲む必要はありません。
カゼ薬は、解熱、鎮痛、セキ止めなどの目的で一時的に症状を抑えるだけのもので、根本原因であるウイルスを駆除する薬ではないからです。
もし、「いや、カゼ薬が効いて治ったことがあるぞ」という人がいたら、それは、あなたの体の免疫システムが、病原体を駆逐したからです。
薬を飲まなくても、治っていたでしょう。
また、すぐに治らないと「市販のカゼ薬が効かない」といって、病院を受診し、抗生物質を処方してもらうなどしていませんか。
抗生物質は、例えば溶連菌や肺炎球菌など、少数派の細菌性のカゼに限って効果を発揮します。
普通のカゼに対しては無意味などころか、必要のないときに乱用すると、体内に耐性菌が生じやすくなります。
いざというときに、抗生物質が効かなくなってしまうのです。
細菌性であれば、たいてい、ウイルス性のカゼよりも重症化します。
38・5度以上の高熱が出たり、黄色いタンが出たり、体が相当にだるかったりするので、「普通のカゼじゃない」と判断がつくでしょう。
ちなみにインフルエンザは、普通のカゼのウイルスと異なり強力なので、簡単には撃退できません。
タミフルなどの抗ウイルス薬はありますが、ウイルスの増殖を抑えるだけで、症状に対する特効薬はないのです。
いずれにせよ、普通のカゼではないと感じたら、早めに病院を受診してください。
ただ薬は、できるだけ飲まないにこしたことはありません。
というのも、例えばセキは異物を排除するための生体防御反応であり、気道にたまったタンを吐き出す役割もあります。
無理に症状を抑え込まないほうが、早く治ります。
「普通のカゼに薬は不要」というのは、そうしたわけなのです。カゼ対策の基本は、十分な睡眠です。
しっかり休養することで、免疫力が回復します。睡眠は、予防のうえでも重要です。
アメリカの研究報告によると、毎日7時間程度の睡眠で、ウイルスの侵入を防ぐだけの免疫力がキープできるそうです。

口すぼめ呼吸のやり方
一時的なカゼではなく、ぜんそくやCOPDなどの症状があり、呼吸器の機能が慢性的に低下した人には、「口すぼめ呼吸」をお勧めします。
これは、実際に治療現場で患者さんに指導している訓練法です。
気道を広げ、呼吸筋を鍛えるので、息苦しさを改善する一助になります。
行うタイミングは、入浴中がいいでしょう。
浴室は湿度が高いので、のどにやさしい環境です。
リラックスしながら、無理のない範囲で行ってください。
慣れてきたら、3秒かけて吸い、9秒かけて吐くといったように、秒数を伸ばすと、負荷が高まり、効果がアップします。

嚥下機能を鍛えるには、「空嚥下」
高齢者に多い誤嚥性肺炎は、嚥下機能の低下が原因です。
本来ならセキ反射で外に吐き出されるはずの唾液や食べ物が、誤って肺に入ってしまい、細菌感染を起こした結果、炎症が起こります。
嚥下機能を鍛えるには、「空嚥下」が有効です。
毎食前に5回、唾液をゴクンと飲み込んでください。
「これから食べ物が食道に入るぞ」と脳に伝えることで、誤嚥しにくくなります。
別名「タバコ病」ともいわれるCOPDの対策法は、なんといっても禁煙。
タバコは、肺の健康を損なう最大の要因です。
高齢になると、「いまさら禁煙なんて」と開き直るケースも見られますが、何歳からでも肺機能の低下は食い止めることができるのです。
家族のためにも、禁煙を強くお勧めします。
ハチミツとコーヒーはセキの軽減に有効!
食べ物や飲み物からも、呼吸器系症状の予防・改善を図ることができます。
野菜は、ビタミン類や抗酸化物質を多く含むため、全般的にお勧めです。
なかでも、ブロッコリースプラウト(ブロッコリーの芽)は、非常に抗酸化作用が高いスルフォラファンという成分を含み、気管支の収縮を抑制します。
ぜんそく予防に有効です。
豆苗(エンドウマメの芽)も葉よう酸さんが豊富に含まれていることから、呼吸器系にいい野菜です。
葉酸は、体内でドーパミンという物質の産生にかかわっています。
ドーパミンが不足すると、セキ反射や嚥下機能が低下するという研究があるので、積極的にとりたいものです。

嗜好品なら、ハチミツとコーヒーはいかがでしょう。
ハチミツには抗炎症作用があり、薬よりもセキ止めに効果的という医学論文が多数あります。
コーヒーは、カフェインに気管支拡張作用があり、ぜんそくの発症リスクを低減するそうです。
ハチミツとコーヒーをいっしょに摂取しても、セキの軽減に有効と報告されています。
まだまだ空気が乾燥する季節が続きます。
自分に合った方法で、呼吸器系症状の予防・改善に努めてください。