緊張する場面などに!ストレスから自分の身を守る呼吸法

緊張する場面などに!ストレスから自分の身を守る呼吸法

朝の満員電車で、あるいは、痛ましい事件や事故のニュースを見たとき、人は心身の苦痛から身を守ろうと、息を止めて無感覚になっているといいます。それと同時に、「自分を見失う」状態にもなっているといいます。そんなとき、ストローを吹くような呼吸をするといいのです。【解説】藤本靖(ロルフィング®スタジオ・オールブルー主宰)


 朝の満員電車で、あるいは、痛ましい事件や事故のニュースを見たとき、人は心身の苦痛から身を守ろうと、息を止めて無感覚になっているといいます。それと同時に、「自分を見失う」状態にもなっているといいます。

 そんなとき、ストローを吹くような呼吸をするといいのです。

動物に備わっている防御反応の1つ

「苦手な人と相対すると緊張して、しどろもどろの受け答えになってしまう」
「愚痴っぽい友人につかまり、聞きたくない話、を延々と聞くはめになる」
 こうしたことは、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。後になってみれば、「ああも言えた」「こんな対処ができたはず」とわかるのに、なぜかその場ではアクションを起こせなくなってしまう……。

 このように固まってしまうのは、ストレスから身を守る“凍りつき”という反応が起こっているからです。“凍りつき”は、動物に備わっている防御反応の1つです。

 一例をあげましょう。
 シカはライオンに襲われるとき、一瞬息を止めて気を失い(凍りつき)ます。野生の動物は、生きた獲物しか食べないので、死んだふりをすれば、食べられずに済む可能性があるからです。気を失うことには、もう1つメリットがあります。無感覚になることで、食べられるときの苦痛から逃れることができます。

無感覚になり自分を見失う

 私たち人間も、緊張する状況におかれたり、嫌なことに遭遇したりすると、シカと同様に〝凍りつき〟を起こしてストレスを回避します。

 小言を言われ続けたり、怒られ続けたりすると、しまいに頭が真っ白になってなにも感じなくなります。これは、呼吸を止めて無感覚になっている状態です。

 無感覚になると、一時的に心身の苦痛から逃れることができますが、一方で「自分を見失う」という問題が生じます。

 心身に対する感覚がなくなると、自分が今どのような状態で、それに対してどのように対応すればよいかわからなくなってしまうのです。

 その結果、冒頭にあげたように「NO」が言えない、相手の言動に振り回されるなどのままならない状況を招くことになります。

 現代人は、日常のさまざまなストレスから逃れるために、「息を止めて無感覚になる」ことが常習化しています。朝の満員電車に乗っていると、ほとんどの人が通勤ストレス、仕事のストレスで息を止めているのが見て取れます。もちろん本人は気づいていません。

 テレビやネットでは、絶えず痛ましい事件や事故、自然災害のニュースが流れています。これら受け入れ難い情報にさらされているときも、体は無意識に身構え、呼吸を止めて、固まっています。

 断続的であっても呼吸を止めると、血液循環が悪くなったり、自律神経(内臓の働きを無意識に調整している神経)の働きが乱れたりして、さまざまな生理機能も低下し、健康を損ねることにもなります。

ストロー呼吸で自分を取り戻す

 ストレスが多くても、自分を見失わず、心身の健康を守る方法はあるので安心してください。それが「ストロー呼吸」です。

 やり方は、「ストローを吹くように口をすぼめて息を吐く」。たったこれだけですが、ストレスから身を守る効果は絶大です。

 細く息を吐くイメージをつかむために、はじめのうちは、実際にストローを使うといいでしょう。

 このとき、呼吸のリズムをゆっくりにしたり、腹式呼吸を意識したりする必要はありません。ただ「ストローを使って息を吐くように呼吸する」ことを意識するだけです。

 口をすぼめて息を吐くと、自然に鼻から息を吸うことになるので、息を吸うほうは、それほど意識する必要はありません。

 口をすぼめて息を吐くと、自然に下腹に力が入って腹圧がかかり、結果として横隔膜が動きやすくなり、呼吸が楽になります。

 下腹が安定するので、自分の中心や軸が感じられる、あるいは自分をしっかり支える感覚を体感できるようになります。

 そうなると、ストレスに対して過度に身構えて緊張したり、呼吸を止めてしまったりすることがなくなり、体も疲れにくくなります。精神的にも安定し、人や場の雰囲気に飲み込まれたり、外の情報や刺激に振り回されたりしない、「ぶれない自分」を取り戻すことができます。

 ストロー呼吸は、特別に時間や場所、姿勢を決めて練習するものではありません。通勤途中や会議中、苦手な相手と電話をするときなど、いつでも、どんな姿勢でもいいので必要なときに自由に行ってください。ストロー呼吸を習慣にすることで、無意識に呼吸を止めるのを防ぐことができます。

 ストロー呼吸のもう1つの魅力は、周囲に気づかれずにできることです。苦手な相手や場面に出会ったら、ストロー呼吸をぜひ行ってみてください。きっと大きな武器になるでしょう。

「ストロー呼吸」のやり方と魅力

臆していた相手に「YES」「NO」が言えた

 最後に、ストロー呼吸を実践しているかたをご紹介しましょう。

 人間関係のストレスで悩んでいたAさん(50代・女性)。ストロー呼吸を始めてからは、「自分のなかに核ができた」という感覚が持てるようになり、それまで臆していた相手にも、「YES」「NO」がはっきり言えるようになったそうです。
外の刺激に振り回されなくなり、持病の化学物質過敏症(微量な化学物質にも反応して苦しむ症状)も軽快しつつあります。


 Bさん(50代・女性)は、福島に住んでおられ、震災時はテレビから流れる情報を見聞きしているだけでぐあいが悪くなっていました。
そこで「ニュースを見るときにはストロー呼吸をしながら見てください」とアドバイスしました。すると、落ち着きを取り戻し、情報の取捨選択をできるようになりました。
Bさんは、「自分を失わずにすんで助かりました」とおっしゃっていました。

解説者のプロフィール

ふじもと やすし
東京大学経済学部卒業後、政府系国際金融機関で政府開発援助の業務に関わる。その中で「心と身体の関係」というテーマに出会い、東京大学大学院身体教育学研究室で神経科学の研究に入る。また、身体の内側にある個々人の可能性と出会っていく「ロルフィング®」の技術を研鑽。米国Rolf Institute 公認ロルファー。「ホームポジション」という独自の身体論を展開している。著書に『疲れない身体をいっきに手に入れる本』(さくら舎)などがある。

※これらの記事は、マキノ出版が発行する『壮快』『安心』『ゆほびか』および関連書籍・ムックをもとに、ウェブ用に再構成したものです。記事内の年月日および年齢は、原則として掲載当時のものです。

※これらの記事は、健康関連情報の提供を目的とするものであり、診療・治療行為およびそれに準ずる行為を提供するものではありません。また、特定の健康法のみを推奨したり、効能を保証したりするものでもありません。適切な診断・治療を受けるために、必ずかかりつけの医療機関を受診してください。これらを十分認識したうえで、あくまで参考情報としてご利用ください。

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