黒コショウ湯は呼吸器系の症状に悩む人におすすめ!
私の治療院には、さまざまな症状を抱えた患者さんが訪れます。
私は治療に加え、自身が学んできた多様な療法の知識をもとに、食べ物や生活環境などあらゆる観点から助言をします。
というのも、私は30数年前、深刻なアトピー性皮膚炎に悩まされていたのです。
皮膚の上を小さな虫が飛び跳ねるような、猛烈なかゆみに苦しみました。
大学病院の皮膚科をはじめ、いくつもの病院を回り、ありとあらゆる治療法を調べては試したものです。
けっきょく、私のアトピーを治してくれたのは、マクロビオティックという、玄米菜食を基本とした食事療法でした。
口に入る物が私たちの体にもたらす影響は、甚大です。
鍼灸師として働き始めてからも、患者さんの症状と食べ物の関係には常に関心を持ち、研究を続けてきました。
そんな私が、呼吸器系の症状に悩む患者さんに勧め、いい効果を上げているのが、今回ご紹介する「黒コショウ湯」です。
これは文字どおり、黒コショウの粉末に、お湯を注いだ物です(作り方はページ下部『黒コショウ湯のやり方』参照)。
血管や気管支を拡張し炎症を止める!
マクロビオティックでは、食品を、「陰」と「陽」の二つの性質に分けて考えます。
陰性の食品は、広げる、緩める、止める、といった働きがあります。
一方で陽性は、縮める、固くする、動かす、といったぐあいです。
この分類によると、黒コショウは「極陰」寄りの食品です。
つまり、広げる、緩める、止めるといった作用に、非常に優れているのです。
セキの発作や息苦しさに悩む患者さんの体を拝見すると、圧痛のある箇所がいくつも見つかります。
のどや気管支、肺などにかかる負担が、首や肩、胸、背中など、主に上半身に、筋肉のコリとなって現れるためです。
こうした場合、少しの押圧でも、痛く感じられます。
筋肉がこっている部位は血流が悪く、血管や組織も収縮し、機能が低下しています。
こうした状態の緩和に役立つのが、黒コショウです。
「広げて緩める」作用により、収縮した血管や気管支などを拡張します。
炎症を「止める」ことで、呼吸器系症状の改善につながるのです。
栄養学的にいえば、カゼ症状への改善効果は、コショウの辛み成分であるピペリンによるものです。
ピペリンには、抗菌・防腐作用があるので、免疫力の向上が期待できます。
また、血行・代謝促進作用があるため、冷えの解消に役立ちます。
冷えは呼吸器の機能を低下させる大きな要因です。
こういった点からも、機能回復の一助になるでしょう。

変化をすぐに実感できる
黒コショウ湯に使うコショウは、市販の、いわゆる「テーブルコショウ」で十分です。
私は、陰陽のバランスを考えて、黒コショウ湯に、マグネシウム(にがり)を含んだ天然塩も加えるよう勧めています。
塩は、陽性の食品です。
加えて、いっしょに注ぎ入れる温かいお湯も、陽性の作用をもたらします。
これは、黒コショウが非常に強力な陰性食品であるため、陰性に傾き過ぎないようにと考えた処方です。
高血圧などのため、塩分のとり過ぎが気になる人は、塩を少なめにして試してもいいでしょう。
様子を見ながら、適宜加減してください。
私は、患者さんに新しい療法を勧める際には、できるだけ治療中に試してもらっています。
黒コショウ湯についても、本人の了承が得られれば、その場で作り、飲んでもらいます。
すると、最初の触診で患者さんが感じた、胸や背中の圧痛が、即時に軽減します。
セキが治まり、のどの痛み、イガイガ感や詰まり感、息苦しさなどのつらい症状が、その場で楽になることも、少なくありません。
すぐに変化を実感できるので、患者さんは、自宅でも継続して黒コショウ湯を飲んでくれます。
その結果、より着実に効果がもたらされるのです。
その場で呼吸が楽になり肩や首のコリも改善!
黒コショウ湯が効果を発揮した症例をご紹介しましょう。
40代の女性は、肩や首のコリを訴えて来院しました。
のどの痛みや息苦しさなどの、カゼ症状も抱えていたので、コリの原因は、そちらにあると思われました。
黒コショウ湯を飲んでもらうと、その瞬間、のどの痛みが解消し、呼吸が楽になりました。
続いて、肩や首のコリがぐんとよくなったと驚いていました。
帰宅後は、黒コショウ湯を飲みながら静養し、わずか数日で、カゼを治したそうです。
このように、黒コショウ湯には即効性があります。
お金もかかりませんし、味はまるでラーメンのスープのようで、患者さんからは「おいしい」と好評です。
呼吸器系の症状がつらいときに、ぜひお試しください。
黒コショウ湯のやり方
材料

・黒コショウ‥‥‥‥‥2振り(1g程度)
・天然塩 ‥‥‥‥‥2振り(1g程度)
・熱湯 ‥‥‥‥‥50ml程度
※分量は目安につき適宜調整してください
作り方
黒コショウと塩を湯飲みなどに入れ、湯を注ぎ、よく混ぜる。
飲み方
呼吸器系の症状があるときに作り、温かいうちに飲む。
胃腸を傷めないよう、1日に3回程度までとする。