長引くセキや、治りにくいぜんそく発作におすすめのツボ
呼吸器系の症状を訴える患者さんに、私が勧めているのが、ツボ刺激です。
長引くセキや、治りにくいぜんそく発作に特に有効なツボは2点。
孔最と中府です。
(刺激のやり方とツボの位置は、下記『ツボの2点押し』の図解参照)。
東洋医学では、一種の生命エネルギーである「気」の通り道を経けい絡らくといいます。
体中を巡る経絡には、それぞれ、かかわりの深い臓器や器官があります。
例えば、肺経という経絡は、肺と密接な関係があります。
肺経上にあるツボを刺激すると気の流れが改善し、肺の働きが整います。
そして孔最も中府もこの肺経に属するツボなのです。
孔最の「孔」という字は、穴や、すきまを表します。
「最」は、最も優れているという意味。
つまり、孔こう最さいは、肺に気を通す特効ツボというわけです。
一方、中府は、鎖骨の下にあります。
中は「当たる」、府は「集まる」ということ。
つまり、肺経の気が集中するのがこのツボです。
肺に気を通し酷使した呼吸筋の緊張をほぐす
激しいセキは呼吸筋を酷使し、緊張させます。
すると、胸や背中にコリが生じて、血流が悪化します。
中府への刺激は、これらの筋肉の緊張をほぐし、付近の血流も改善するので、セキや息苦しさなどを軽快させるのです。
呼吸器系の機能が弱い人は、これらのツボを日常的に刺激することで、予防効果が期待できます。
入浴後の体が温まったタイミングや、就寝30分前などに、毎日行ってください。
特にぜんそくの人は、寝入りばなや睡眠中にセキ込むケースが多いので、これらのツボへの
刺激を就寝前に行うことで、発作が起こりにくくなります。
また、実際にセキが出て止まらない、息切れ感があり胸苦しい、といったときにも、これらのツボを刺激してください。
即時に症状が和らぐので、大変重宝します。
急性の症状緩和のために行う場合は、押す回数を増やして、しっかりと刺激すると効果が増強されます。
呼吸器系症状に特効!ツボの2点押し
やり方(孔最)
●やり方
右腕の孔最に左手の親指を当て、息を吐きながらグーッと押し込む。10秒したら、指を離す。5回(急性症状の緩和のため行う場合は、15回)くり返す。左腕も同様に行う。
やり方(中府)

●中府
鎖骨の下端を首から肩のほうにたどっていくと、へこみがある。そこから指幅1本分下がったところ。
※いずれも、押すと痛みがあり、ズンと響くように感じるところを探す。
●やり方
右肩の中府に左手の人差し指、中指、薬指を当て、息を吐きながらグーッと押し込み、小さな円を描くように回す。10秒したら、指を離す。5回(急性症状の緩和のため行う場合は、15回)くり返す。左肩も同様に行う。
薬が効かない症状にも効く便利な特効ツボ
私自身も、ぜんそくに悩まされたことがあります。
40代のとき、急に息苦しさを覚え、ぜんそく発作が出るようになったのです。
セキ込みが止まらなくなり、苦しくてしかたがありません。
肺からは、ゼイゼイという音がします。
そこで、これらのツボ刺激を集中的に実践したところ、半年ほどの間に発作が出なくなりました。
それから10数年が経ちますが、ぜんそくはもう、すっかり克服しています。
実は、私の息子も、幼いころからぜんそく持ちでした。
彼の場合は、ステロイドの吸入薬、内服薬をはじめ、気管支拡張薬、タンを出しやすくする薬などを処方されましたが、なかなか改善しませんでした。
しかし、孔最と中府を中心に、熱心にツボ刺激を続けたところ、症状が治まるようになり、小学校低学年のうちに、完治させることができました。
これらのツボは、自分でも見つけやすく、刺激しやすい位置にあります。
呼吸器系の症状で困ったときの特効ツボとして、ぜひ覚えておいてください。
解説者のプロフィール

鈴木 秀寿
宝寿堂鍼灸治療院院長。1983年日本大学理工学部卒業後、1986年国際鍼灸専門学校卒業。葛飾区鍼灸マッサージ師会会長。
●宝寿堂鍼灸治療院
https://hojjudo.jimdo.com/
●孔最の位置
ひじの内側のシワから、手首のシワまでの長さを3等分し、図中のAから、指幅1本分ひじに近く、腕幅の中央よりも、指幅2本分、親指側寄りの位置。