不調は副腎の疲労が根本原因といっても過言ではない
皆さんは、副腎という臓器をご存知でしょうか。
副腎は、腎臓と同じように左右に二つあり、その位置も、腎臓のすぐ上にちょこんと乗っかるように存在しています。
しかし、その働きは全く異なります。
腎臓は、泌尿器系の臓器であるのに対し、副腎は、ホルモンを産生・分泌している内分泌器官なのです。
私たちの体で起こる、あらゆる不調は、副腎の疲労が根本原因だといっても過言ではありません。
副腎は、日本ではあまり注目されていませんが、諸外国では、病気や症状を治療する際には、まず「副腎ケア」をすることが、もはや常識となっているのです。
副腎から分泌されるホルモンは、実に50種以上。
これらのホルモンは、血糖値の維持、免疫機能の調整、血圧の調整、神経系のサポート、骨の代謝など、生命の維持に欠かせない働きをしています。
そのなかでも特に重要なのが、副腎皮質ホルモンの「コルチゾール」です。
コルチゾールは、ストレスから体を守るホルモンですが、働きはそれだけではありません。
副腎が疲れると体内の炎症を抑え切れない!
私たちの体内では、残念ながら、年齢を重ねるほど炎症が増えてしまいます。
それを放置しておくと、さまざまな病気や老化現象が起こります。
その炎症をやっつけてくれるのが、コルチゾールなのです。
ところが、副腎が疲れると、この大切なコルチゾールの分泌が悪くなります。
副腎の構図

現代社会は、ストレスに満ちあふれています。
ストレスというと、人間関係や仕事による精神的なストレスをイメージしがちですが、それだけではありません。
体に悪影響を及ぼす物は、すべてストレスです。
具体的にいうと、薬品、過労、睡眠不足、食品添加物、大気汚染、光刺激、有害化学物質などなど、枚挙にいとまがありません。
こうした多くのストレスに対し、盛んにコルチゾールが分泌されます。
しかし、働きっぱなしの副腎は、やがて疲れ果ててしまい、コルチゾールを十分に分泌できなくなります。
コルチゾール不足は、現代人の健康を妨げている
コルチゾールが相対的に不足すると、体内の炎症を抑え切れなくなり、不定愁訴を覚えます。
そして、副腎の疲労が慢性化すると、高血圧、糖尿病、動脈硬化、メタボなどの生活習慣病や胃腸障害、不眠症にうつ、アレルギー疾患など、ありとあらゆる病気の発症リスクが高まるのです。
つまり、現代人の健康を妨げ、薬を飲む量が増えている根本原因は、副腎疲労によるコルチゾール不足にあるといえます。
例えば、副腎が疲労すると、「最近やる気がなくて気分が落ち込む」といったうつ症状が起こりがちです。
こうした症状を精神科や心療内科で話すと、決まって抗うつ剤などが処方されてしまいます。
それは、目先の症状に対処しているだけで、体内の火種を消したことにはなりません。
しかし、根本原因である副腎をケアすれば、薬の量を減らす、あるいは薬を服用しないことは、十分可能なのです。
その副腎をケアするためには、先ほど説明した各種のストレスの軽減、疲労回復、そして偏った食生活の改善が、いちばんの近道です。
特に食事は、「食は人なり」といわれるように、食べ物が私たちの健康を決定づけるため、とても重要です。
和食中心の食生活で症状が驚くほど楽になる
まず、避けたい食品として挙げられるのが、グルテンが含まれる小麦製品と、カゼインが含まれる乳製品です。
グルテンとカゼインは、腸の炎症を招きやすい物質のため、極力避けたほうが賢明です。
そこで、パンではなく、なるべくお米にかえる。
乳酸菌は、ヨーグルトからではなく、みそや漬物など、植物性の発酵食品からとる。
さらに、カルシウムは、牛乳からではなく、小魚からとる……。
つまり、和食を食べていれば間違いないのです。
和食なら、小麦製品や乳製品を避けつつ、たんぱく質が豊富な大豆や魚など、副腎ケアに有効な食材を多くとることができます。
また、シソやショウガなど、解毒作用が強い薬味も多彩です。
和食中心の食生活を長く続けるだけで、体は変わり、驚くほど症状が楽になります。
とはいえ、毎食和食にすることは、難しいかもしれません。
そこで私は、5日間のうち3日間和食を心がければいいと、患者さんにお伝えしています。
あまり真面目にがんばり過ぎるのも、かえってストレスになるのでよくありません。
このように、ストレスを減らし、食生活を変えるだけでも、副腎疲労は飛躍的に回復します。
薬を減らしたいとお考えのかたは、まず副腎のケアから始めましょう。
自ずと体が元気になり、処方されていた薬がみるみる減っていくはずです。
解説者のプロフィール

本間 良子
スクエアクリニック院長。日本抗加齢医学会専門医。米国抗加齢医学学会フェロー。日本医学会認定産業医。聖マリアンナ医科大学病院総合診療内科入局後、第一クリニック内科勤務を経て、現職。専門は内科と皮膚科。著書に『老化は「副腎」で止められた』(青春出版社)などがある。
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