お風呂は熱過ぎてもぬる過ぎてもダメ!
私は、25年ほど前に開発した「和温療法」で、数々の病気を改善してきました。
そのなかには、医療の限りを尽くしても治らなかった、難治性疾患の患者さんも数多くいらっしゃいます。
和温療法とは、摂氏60度の均等低温サウナで全身を15分間温めたあと、30分間の安静保温(毛布で体を包む)を行い、最後に、発汗した分の水分補給をする治療法です。
体をじっくり温めて、深部体温を平均1度上昇させることで、さまざまな効果が生まれるのです。
和温療法を行うと、全身の血管機能が改善し、動脈・静脈が拡張して血管抵抗が低下するため、心臓の負担が軽減し、血液を大動脈へ送り出しやすくなります。
その結果、心拍出量(1分間当たりの大動脈への駆出血流)が増加するので、心不全の改善にうってつけの療法です。
また、手足の冷えやしびれ、壊死などを起こす閉塞性動脈硬化症への治療効果も確認しています。
「和温療法」のやり方
和温療法は、医師が治療として行うものですが、一般の家庭でも入浴法を工夫することで、血圧降下などの効果を引き出すことができます。
まず、入浴前に、脱衣所と浴室を温めておきましょう。
寒い場所で裸になると、全身の血管が急激に収縮して、血圧が上がってしまいます。
湯船に張るお湯は、つかったとき、しみじみと「ああ、いい湯だなあ~」と感じる温度が最適です。
個人差があるので、一律に何度と決められませんが、通常は40~41度です。
「いい湯だなあ」と感じたときのお湯の温度を測っておき、目安にしてもいいでしょう。
実際につかってみて、水を加えたり、追い炊きしたりしてもけっこうです。
熱いお湯に我慢してつかるのは逆効果ですし、ぬる過ぎると効果は期待できません。
高血圧には、肥満や動脈硬化だけでなく、緊張やストレスも関係しています。
「嫌だな」「不快だな」と感じただけで交感神経が緊張して、血圧は上がるのです。
交感神経とは、臓器や血管を調整する自律神経のうち、心身を活動的にする神経です。
交感神経が優位になると、血管が縮小して血管抵抗は上昇し、血圧が上がります。
ですから、自分が気持ちいいと感じる温度のお湯に、ゆったりつかることが大切なのです。
「気持ちいい」と感じると、心身を休息モードにする副交感神経が優位になります。
血管が拡張して血流がよくなり、血圧は下がります。

入浴によって体の芯まで温まるには、肩までお湯につかって10分間は過ごしたいものです。
一方で、「10分も湯船につかるのは苦痛」と感じたら、それがストレスになり、血圧は上がってしまいます。
そんなときは、香りのいい入浴剤を入れたり、好きな音楽をかけたり、雑誌を眺めたりして、入浴を楽しむ工夫をしましょう。
ちなみに私の場合、軽く手足の運動をしているうちに、10分経っています。
それでも10分が苦痛なときは、途中で湯船から出てもかまいません。
合計で10分つかり、汗をかきましょう。
心臓や肺に疾患のある人は、水圧を受けると苦しくなることがあるので、浅めのお湯に胸から下をつけるのが安心でしょう。
その場合は、肩にタオルをのせ、ときどきタオルにお湯をかけたりして、肩が冷えないようにしてください。
お風呂から上がったら、パジャマの上に何か着て、湯冷めをしないようにしましょう。
また、入浴後には必ず、200ml程度の水分をとってください。
週4~5回でも効果が期待できる
こうして、適温にゆったりつかる入浴法を続けると、血管機能が改善して全身への血流が促進し、血圧は低下します。
毎日行うのが理想ですが、週に4~5回でも効果は期待できます。
なぜ、この入浴法で血圧が下がるのでしょうか。
入浴によって深部体温が1度上がると、血管の内皮細胞から、NO(一酸化窒素)が分泌されます。
NOには、血管を拡張し、血管内の余分な塩分を排出する働きがあるのです。
さらに、新しい血管を増やすという優れた作用も持っています。
今ある血管が拡張し、新しい血管ができれば、血圧は下がります。
氾濫しそうな川を拡張し、水路を増やすことで、水流が安定するのと同じです。
動脈硬化が進んだ人でも、深部体温を高めれば、NOの分泌量は増え、血管拡張作用や血管新生作用が得られることがわかっています。
体を温めることで、さらに別の有効物質が分泌されます。
HSP(ヒートショックプロテイン)です。
HSPは、熱刺激によって誘発されるたんぱく質で、ストレスから体を守り、細胞の修復を促したり、細胞を元気にしたりします。
適温のお湯にゆったりつかることでHSPが発生し、ダメージを受けた血管が修復されます。
この点からも、高血圧の改善に役立つと考えられるのです。
高血圧や動脈硬化のかたは、ぜひ、この入浴法を実践してはいかがでしょうか。