食事制限も運動もせず数値が下がった!
私の治療室では、フランスのノジェ博士が提唱した「耳介医学」に沿って、耳針治療をしています。
ノジェ博士は、耳が全身の縮図であり、耳を刺激することで、各部位の症状を改善できると説きました。なかでも、私が特に注目しているのは、耳の中央付近にある「星状神経節」に対応するポイントです。
私は、自分の糖尿病も、耳への刺激治療で治しました。また、血糖値の高い患者さんには、自宅でできる「耳もみ」を勧め、効果を上げているのです。
私が、星状神経節のポイントに着目したきっかけは、武蔵野病院名誉院長の故・若杉文吉医師の治療法でした。
若杉先生は、のどにある星状神経節の近くに麻酔薬を注射し、自律神経を整える治療を行っていました。これを、星状神経節ブロック療法といいます。
自律神経とは、内臓や血管を支配する神経です。自律神経は、活動する際に優位になる交感神経と、休息時に働く副交感神経が、バランスを取り合っています。自律神経がバランスよく働くことで、脳をはじめ、全身の血流がよくなり、免疫機能が正常化します。そうなれば、病気や不調が自然に治っていくというわけです。
星状神経節はのどにありますが、私は耳の星状神経節ポイントを刺激することで、同様の効果が得られると考えました。
そして実際、耳の星状神経節ポイントを刺激する治療法によって、多くの患者さんの症状が改善しています。
そもそも、私がこの治療法を糖尿病に活用しようと思ったのも、若杉先生のひと言でした。
「日本で患者数が急増している糖尿病を、ターゲットにしたらどうですか」といわれたのです。
当時、私自身の血糖値が高く、糖尿病の診断も受けていました。そこで、まず自分で実証したいと考え、耳の星状神経節のポイントに施術をしました。
すると、過去1〜2ヵ月の血糖状態を示すヘモグロビンA1cの数値が、たった4ヵ月で基準値内に収まったのです。
当時の基準値は4.3〜5.8%だったのですが、私は6・1%ありました。それが、4.7%になったのです。
その間、食事制限や運動などは、いっさい行いませんでした。しかも、ビールやお酒も飲んでいたのです。
さらに、私は尿酸値も高く、痛風の発作を起こした経験もありました。それが、耳への治療を開始すると同時に数値が下がり始め、1年後にはすっかり基準値になりました。
高かった血圧も下がりふらつきも解消!
効果を確信した私は、血糖値の高い患者さんに耳への施術を行いました。すると、多くの患者さんのヘモグロビンA1cが改善したのです。
また、血圧、コレステロール値、肝機能値、尿酸値などの数値が下がる人もいました。
患者さんの中には、遠方から見えるかたも多く、頻繁に施術することが難しいのが実情です。そのため、私は患者さんが自宅でできる方法として、「耳もみ」を勧めています。もともとは、針治療の効果を持続するために考案したものですが、これだけで症状がよくなる人はたくさんいます。
やり方は簡単です。
行う前に、耳の皮膚を傷つけないように、爪を短く切っておきましょう。
❶星状神経節のポイントは、耳たぶの上部の突起から、少し上がったところにあります。
❷左右の耳のポイントに、それぞれ人差し指を当て、裏側に親指を当ててはさみましょう。心地よく感じる程度の強さで、リズミカルに30回押します。
耳の血流をよくするために、マッサージをしたり、蒸しタオルを当てたりすると、ポイント刺激の効果がアップします。耳もみは、1日何回行ってもかまいません。入浴中や就寝前など、いつでもやってください。
最後に、耳への刺激で糖尿病が改善した症例を紹介します。
81歳の女性Aさんは、ヘモグロビンA1cが6.3%ありました。耳針治療と耳もみを行った結果、たった3ヵ月で5.8%と正常化しました。高かった血圧も下がり、ふらつきもなくなったと喜んでいます。
63歳の女性Bさんは、ヘモグロビンA1cが11%ありました。眼底出血をくり返し、そのつどレーザー治療を受けていました。それが、耳針治療と耳もみによって、3ヵ月で9.4%まで数値が降下。眼底出血も起こらなくなったのです。
耳もみは、簡単で高い効果が得られます。特に、不眠や冷え症、老眼、耳鳴りなど、胸から上の症状は、すぐに改善を実感できるでしょう。糖尿病以外にも、体調不良を感じているすべての人に、お勧めできる自己療法です。
耳もみのやり方
解説者のプロフィール

塚見史博
塚見鍼灸治療室院長。都内のメディカルクリニックに20年間勤務。その後、自然治癒力を高めて、疾患を根本から治す「塚見式耳針治療」を確立。各所の痛みや生活習慣病を中心とした治療に当たっている。
*耳の血流をよくするために、マッサージをしたり、蒸しタオルを当てたりすると効果的。
*1日何回行ってもよい。
*爪を短く切っておく。